更年期の尿もれ、子宮が腟から飛び出す子宮脱。出産経験や体型も関係している⁉
骨盤底筋の衰えが先々の〝骨盤底筋トラブル〞を招きます
骨盤底筋の伸縮力が衰えると尿漏れを招き、さらに症状が進むと、子宮、膀胱、直腸の
位置が下がったり、腟の緩みを招いてしまったりするケースがあります。
また、骨盤底筋の緩みがひどくなると、大きく広がった腟内にこれらの内臓が下垂(かすい)したり、子宮が腟口から飛び出してしまう子宮脱(しきゅうだつ)になったりするなど、「骨盤臓器脱」を併発するケースもみられます。
私のクリニックには思春期から80代まで、さまざまな年齢の人たちがやってきますが、
尿漏れの相談にくるのは主に更年期から閉経以降の人たちです。そして60〜70 代以降の人たちの約2割が子宮脱を併発しています。
ある女性は、加齢で緩んだ腟から子宮が出てきた状態でした。家族の介護で日常的に腹
圧をかける動作をしていたことが一因だったのですが、彼女から「受診先がわからず、一人で悩んでいた」「女性として落ち込んだ」と打ち明けられたとき、命に関わることはないけれど、これは女性の尊厳に関わるトラブルだと胸が痛みました。
女性としてのQOLを生涯にわたって守っていくためにも、骨盤底筋の若さをキープしていくことが大切です。
『50歳からの婦人科 ~こころとからだのセルフケア~』
松峯寿美・著
高橋書店 1,485円
デリケートゾーンのトラブルとケア、尿漏れにも関係する骨盤底筋の変化やトレーニング法、骨のエイジング対策、全身のビューティーケア、こころの持ち方など……50歳からの自分自身をいたわりケアする方法を、読み物とイラストでやさしく紹介した一冊。
大切なのは、正しく知る、前向きにつき合うこと。50歳からはもちろん40代の方も知って欲しいことばかり。
【お話】
松峯寿美 (まつみねひさみ) 先生
1946年生まれ。産婦人科医。70年、東京女子医科大学院卒業。医学博士。(婦人科)とくに不妊治療、思春期・更年期医療に力を注ぐ。
卒業後は女子医大に10年間勤務、〝不妊外来〟を創設。80年東峯婦人クリニック(東京・木場)院長に就任。女性専門外来の先駆けとなる。著書やマスメディアへの登場、からだの不調で悩む女性へ向けた講演なども多数。
妊娠・出産・更年期・老年期まで、婦人科系QOL(生活の質)を保つ医療を実践。骨盤底筋トラブルの治療や子宮脱を改善する経腟手術も行い、高齢女性の健康管理を見守り支える一方、2018年3月第一回「日本産前産後ケア・子育て支援学会」では、大会長をつとめた。 女性の一生を支える存在でありたい、こころもからだも美しくいきいきと過ごせる人生であるように、との思いで日々診療に向き合っている。
※記事の内容は書籍刊行当初の情報です。
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