「コロナ禍のリモートワークで地方にUターンした人たち」はいま幸福なのか?「モノが少ない」「文化体験が薄い」「車は必須」だが

2023.12.23 WORK

コロナ禍を経て私たちの仕事や暮らしは大きく変化しました。それに伴い、首都一極集中型だった人口増加にも歯止めがかかり、「地方」に視線が向けられるように。

その流れに乗って地元・栃木県にUターン移住した私、市川みさきが、移住を決めるまでの過程と1年間居住してみて感じたメリットとデメリットをレポートします。

前編『「このままでは夫が」コロナ禍で突然始まったリモートワーク。「一生東京暮らしだろうな」と思っていた夫婦に起きたこと』に続く後編です。

Uターン移住してよかったこと。どれも普通のことだけれど、「Uターンならでは」の幸福があり

移住案を検討し始めて約2か月後、2022年9月には栃木県宇都宮市にUターン移住をしました。約1年栃木県内に居住してみて、今は以下の4つをメリットに感じています。

 

① 道や店などが広く、空いている

家の周りの歩道やスーパーが桁違いに広く、かつ空いているため、「生活のなかの小さなストレス」が格段に減りました。

 

千葉に住んでいたときの最寄りのスーパーは、カートを持った人同士がすれ違えない狭さで、かつ夕方になるとレジは10分待ちが当たり前という状況…。買い出しは週に1~2度ではあるものの、毎回プチストレスを感じていました。

 

栃木には大きな郊外型スーパーが多く、広々とした店内でのんびりカートを押しながらゆっくり買い物ができています。都内に住む友人を連れて栃木県内の商業施設へ行った際、人が多くてもベビーカーが余裕で通れる通路の広さに感動していました。

 

地味ながら感動したのは、休日でもstarbucksなどのカフェでスムーズに席に座れること。そして席と席の間のスペースが広く取られていることが多い(気がする)!ゆったりとお茶の時間を楽しむことができています。

 

② 家賃が安い

私が以前住んでいた千葉県市川市の2LDKの家賃相場は10.2万円、栃木県宇都宮市は8.9万円と、1.3万円ほど相場に差があります。

 

駅徒歩・築年数などの条件は異なるものの、市川市で1LDKを借りていたときの賃料よりも、3万円ほど賃料を抑えつつ、駐車場付き3LDKの家を借りることができました。部屋数が増えたのでもちろん広さも20米ほどアップしています。

 

また生活に不便がないレベルの街に居住しつつ、自然に気軽にアクセスできる環境になったのも嬉しいポイント。車で5分ほど移動すれば大きな河川を眺めることができますし、30分あれば山林に行くことも可能です。

 

ちょっと嫌なことがあったときは休憩時間に自然に触れに行って、ぼーっとできるのでリフレッシュの幅が広がりました。

 

③東京への通勤も思ったよりはるかにスムーズ

東京近郊の県から見た栃木県は、「旅行先」というイメージを持たれがち。しかし新幹線を利用すれば、宇都宮駅から東京駅まではわずか50分ほどで移動できます。(東京都内に通勤している夫は、会社までドアtoドアで80分ほどだそうです)

 

私も取材の仕事があるときは在来線に乗り、2時間ほど掛けて都内に行きます。しかし始発駅なので必ず座席に座ることができ、大きなストレスは感じていません。

 

むしろこの時間が、オンとオフを切り替えるスイッチになり、長時間移動も悪くないと感じるようになりました。

 

④移住に対する支援が手厚い

私が住む宇都宮市は、「宇都宮市移住支援金」という制度があり、一定の条件に当てはまると最高100万円の移住支援金を受け取ることができます。私の周りのUターン移住組も、こうした制度を利用している人が多くいて、なかにはマイホームの頭金に充てたという人もいました。

 

調べてみたところ、日本各地でこうした制度が設けられているそう。移住を検討されている方がいたら事前に役所に問い合わせて、細かな条件を確認してから物件探しを始めるのがおすすめです。

 

最大のメリットは、地元の実家家族に会いに行く頻度がUPしたこと。何にも代えがたい

最大のメリットはやはり、家族にすぐ会えること。東京や千葉に住んでいた頃は、仕事の都合でお正月・お盆などにしか帰れずお客様扱いをされていました。しかし今では、月に2〜3度実家に帰るため「あぁ、また来たの」と言われる始末(笑)。

 

両親と離れて住んでいた14年の時を埋めるように、一緒にでかけたり、食卓を囲む時間も増え「お父さんってこんな人だったんだ!」「お母さんってこういうものが好きだったんだ」と、両親の新しい一面を知ることもしばしばです。また高齢になり、免許を返納して買い物難民になってしまった祖母を私の車に乗せて買い物やお出かけに連れ回すことも。おばあちゃん子の私にとって幸せな時間になっています。

 

ただし、地方ならではの「物足りないこと」だってたくさんある。中でもこの3つは

行きつけの飲食店のオーナーに教えてもらったイベント

 

実際に1年居住して感じたデメリットは、以下の3つでした。

 

①モノの量が東京よりも少ない

覚悟をしていたことなのですが、モノ・情報の少なさを感じます。例えばBEAMSやUNITED ARROWSなどの有名セレクトショップは県内のアウトレットなどに出店しているものの、最新のアイテムを取り扱っているお店はありません。

 

友人への手土産にお菓子を買おうと思って百貨店に足を運んでも、沢山の専門店が軒を連ねる東京と比較すると、選択肢が非常に少なく感じます。「東京では10の選択肢から選べるのに対して、こちらでは5の選択肢からしか選べない」という状況はあるあるです。

 

また仮にお店があったとしても、「東京の大きなお店には入荷されるものが栃木県の店舗には入荷されない」ということも。例えば、UNIQLOが他ブランドとコラボした時のアイテムは、サイズやカラーの限られた見本の数着しか置かれておらず、購入したいカラーとサイズのアイテムを実際に手にとって検討することができませんでした。

 

ネットで物を購入できる今となっては気にならない人も多いかもしれませんが、「買い物はリアル派」にとっては少しストレスを感じることもあるかもしれません。

 

一方、夫はモノの量が少ないことに対して快適さを感じている様子。選択肢の幅が広くないこちらに来てからは、「選択」をすることへのストレスを感じることは少なくなったそうです。物や選択肢が少ないことは、人によってはメリットにもなりうるのかもしれません。

 

②文化的なものに触れられる機会や施設が東京よりも少ない

東京と比較すると美術館や映画館・舞台やコンサートの上演などが少なく感じます。私はよくお笑いの舞台や美術館に足を運んでいましたが、なかなか機会に恵まれていません。

 

また書籍の入荷のスピードも東京から一歩遅れており、置かれているものもベストセラー一辺倒になっていることもしばしば…。職業柄本をたくさん読むため、ネットで本を買えるありがたみを感じています。

 

また東京だと、歩いているだけで様々な催し物に遭遇しますが、こちらでは街中で新しいものやイベントに自然と遭遇する回数は少ない印象です。(母数が少ないので当たり前といえば当たり前なのですが…)

 

「楽しみが向こうからやってこないのなら、自分から能動的に探しに行けばいいじゃないか!」ということで、地元のイベント情報を発信しているSNSアカウントをフォローして情報収集したり、いつも行く飲食店の店主と情報交換をして、自分から貪欲に楽しみを探すように。

 

そのおかげでクラフトビールフェスやマルシェなど、今まで参加したことのないイベントの開催予定を知りました。アグレッシブに動けば、イベントもたくさん見つけられるように感じます。

 

③自家用車ありきの生活

私たちは利便性を考慮し、大きな商業施設の近くに家を借りることにしたため、買い物は徒歩でもできなくはない、という状況です。

 

しかし東京のように短い距離に駅やバス停がたくさんあるわけではないので、通勤で駅まで向かう際や休日に出かける場合、車は必須なように感じます。住む場所によっては車を購入・維持する必要もあるので、そうした点も考慮に入れたほうが良いかと思います。

 

自分たちの快適な時間のために「住む場所を変えていい」という発想が獲得できた

実際に居住して感じるデメリットもありますが、私たちにとってはUターン移住は正解の選択だったと感じています。何よりも「快適に暮らすために、住む場所や暮らし方を気軽に変えても良い」ということに気づけたのは、大きな収穫でした。

 

今のところは栃木県に住み続ける予定ですが、家族が増えたり仕事の内容が変わったりして、この場所が生活にフィットしなくなったときには、気軽に引っ越しをしようと思っています。住む場所を軽やかに選択できることに気づいた経験は、これからも私たちの生活を豊かにしてくれると思います。

▶つづき>>>「このままでは夫が」コロナ禍で突然始まったリモートワーク。「一生東京暮らしだろうな」と思っていた若い夫婦に起きたこと

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