
バリ・ヒンドゥー独自の風習「ニュピ」では「●●ができない」って知ってた?24年3月、バリ島には待望の新ミュージアムが誕生
オトナサローネ読者のみなさま、こんにちは。バリ島在住のライター、岡田美和です。
突然ですが、バリ島って他の南の島とちょっと違うと思いませんか?
バリ・ヒンドゥー独自の「祈りの芸術」をいつでも体験できるミュージアム、3月誕生!
他のリゾートと一線を画しつつ、人々を魅了し続けるのは、やっぱりバリ・ヒンドゥー教独特の文化があるからだと私はいつも思っています。きらびやかな民族衣装、色鮮やかなお供物、芸術性の高い奉納の舞にガムランの音色。時代は移り、多忙な現代社会においても、バリの人々は先祖を敬い、神に祈りを捧げることを忘れません。そして、その芸術は、ヒンドゥー教の3大神である破壊の神シヴァのごとく、祈りが終われば壊されるという宿命です。
いつも「もったいないな、でもだからこそ尊いのかな?」と勝手に独自解釈していましたが、とうとう登場しました!バリ・ヒンドゥー教の「ニュピ」をテーマにした美術館「サカ・ミュージアム」が「アヤナリゾート」にオープン!
「アヤナリゾート」は、ジンバラン湾を見下ろす、広大な丘の上に位置するラグジュアリーエステート。敷地内には4つのホテルをはじめとし、世界最大のタラソテラピープールを持つスパ、14のさまざまなプール、27のレストラン・バー、15のウェディング会場、イベント会場など、常にバリのリゾートシーンをリードし続けています。
美術館の設立にあたっては、リゾートという枠を超え、バリ島の文化遺産の保存と促進に取り組むための文化拠点になるよう願いを込めて創られたそうです。たくさんのゲストが訪れるアヤナリゾートは、バリの芸術を世界中の人々に伝えるのに確かに最適な場所ですね。
バリの暦から名をとった「サカ・ミュージアム」、その建築が示すものとは
名前は「サカ・ミュージアム」。サカはバリ独特の暦であるサカ暦から名付けられました。
3階建ての建物は、ガラス張りの近代的で美しい外観。サイドから見ると三角形、正面から見ると屋根の両端が上に向かって沿ったきれいな曲線を描いています。まるで日本の近代美術館みたい。
そして真上から見ると、なんと屋根が東と西を示したコンパスの形をしているんだとか。バリヒンドゥー教徒にとって方角は重要な事項であり、ただ美しい建築デザインというだけでなく、いろいろな意味が込められているんですね。
展示内容は、「サカ」という名前の由来にもなっているように、たくさんあるセレモニーの中でも最もユニークで稀有な「ニュピ」がテーマ!バリ島はもちろん世界でもここだけです!
バリ・ヒンドゥー教の風習「ニュピ」とは?
さて、「ニュピ」って何?って思われる方も多いと思いますが、バリ島の暦であるサカ暦に基づいたバリの新年のことです。「ニュピ」は年に1度、毎年3月頃にあり、サイレントデー(静寂の日)として海外でも紹介されています。
この日は飛行機の発着はなし、外出禁止、火気厳禁、ランプももちろんダメで、夜は真っ暗な闇に包まれます。昔は億劫としか思わなかったニュピもいつの間にか大好きに。昼間は家の中で何もせずに過ごし、夜は天気が良ければ神々しいまでの満天の星空を堪能できます。
ニュピ前夜はオゴオゴの日。ニュピとは真逆で、大きな音と火が苦手な悪霊を退治すべく、わざとけたたましい音を鳴らしながら、オゴオゴを担いで街を練り歩くのです。この日は若者も子供達もお祭り騒ぎ。陽が沈むまで待ちきれない若者たちが自分たちが担ぐオゴオゴに集まって準備に余念がありません。
こちらは実際のオゴオゴの日に撮った映像です。バリ島中がオゴオゴ一色になります。
バリの若者たちはバンジャールごとにお揃いのTシャツを作り、気合いも十分!女性は担ぎませんが竹で作られたオボール(松明)を持ったりして、一緒にパレードに参加します。
いよいよ「サカ・ミュージアム」展示スペースに潜入!
話はそれましたが……。
サカ美術館2階展示スペースは、そのニュピ前夜に催される悪霊払いのパレードで、若者たちが担いで街中を練り歩くための、悪霊を象った巨大な「オゴオゴ」が飾られています。

2階展示場入り口。なんだかドキドキします。
『巨人の間を歩く』。一体どんなオゴオゴが待っているんでしょうか?
サカ美術館に展示されているオゴオゴはバリ人アーティスト率いる9つのバンジャールによって創られました。

若手アーティストによるオゴオゴのラフスケッチ。ここからオゴオゴ作りが始まります。
ではさっそく観て行きましょう。
オゴオゴは悪霊なのに、こんなキレイなオゴオゴもあるの?と思ったら、こちらは学問と芸術の女神サラスワティでした。
タイトル「ングワチャック・ラレ」。バリ島タンパクシリン出身のグスマン・スリヤ氏を筆頭とするグループによる作品。バリの新生児は目に見えない4人の兄弟と一緒に生まれてくると信じられていますが、赤ちゃんがすくすくと育つために、これらの霊的な兄弟たちに捧げ物が不可欠と信じられていて、赤ちゃんが泣き止まない時などバリ人はこの見えない兄弟たちにお供えものが足らないのでは?と考えます。
それにしてもすごい迫力。こんなのに睨まれたら赤ちゃんも泣き止まないですよね。笑
これは私にもちょっとわかります。インドの2大叙事詩のひとつ、ラマヤナ物語からの悪の魔王ラワナとシータ姫です。
こちらもラマヤナ物語より。魔王ラワナの弟で、巨大で忠実なクンバカルナと猿の戦士たちとの戦い。
近年ではハイテクなオゴオゴも数多く登場しています。機械を操作することで手足が動いたり、目が光ったりします。

ハイテク・オゴオゴの縮小版。スイッチを押すとコブラの口や首が動いたりします。

手前のボタンを置くと台座が左右に振ったり、ライトアップされたりします。
タイトル「ザ・フューリー オブ ラワナ アンド ウィルマナ」。こちらは展示の中で一番大きいオゴオゴです。高さはなんと12メートル!ラマヤナ物語をテーマに、魔王ラワナと彼の乗り物であるウィルマナがモチーフ。2人の巨匠アーティストのコラボから生まれたオゴオゴは完成度も高く、今にも飛び立ちそう!圧巻のスケールです!
タイトル「ボマ・ナラカスラ」。スカワティ出身のマデ・スギアンタラ率いるチームの作品。ヒンドゥー教の3大神ヴィシュヌの子供で激しい気性の巨人サンボマをモチーフにしています。

巨人と謳うからにはやはり大きい!サンボマの頭と身長が同じくらい!
バリ島は本当にオゴオゴ熱がすごいです!バリ人の男性たちがバンジャール(地域コミュニティ)ごとにニュピ前夜までの何ヶ月間、全身全霊で臨む「オゴオゴ」製作。オゴオゴの出来栄えを競うコンテストもあり、完成度の高いものはまるで生きているかのような迫力ある姿で人々の目を釘付けにします。
1階の施設もまた素晴らしい
まずは受付カウンター。今はソフトオープンで、宿泊ゲストのみ入館が可能ですが、2024年の3月には有料にて一般公開予定です!
サカ・ミュージアムの素晴らしい点のひとつ、なんといろいろな言語を話せる案内役のスタッフがスタンバイしてくれています。こちらは日本語スタッフのスアルタさん。
ロッカーも完備なので、重い荷物は預けて、身軽に鑑賞できます。

石像は一番古いもので17~19世紀のものなんだそう。

バリで一番古い手法と言われるカマサンスタイルの絵画。絵というか、生年月日からその人の性格がわかるというバリ占い?とのこと。
サカ美術館にはバリの芸術や文化に特化した文献を揃えた図書館があります。普通の本屋さんでは手に入らない書物がほとんどだそうです。
広々として落ち着きがあり、長居したくなる雰囲気。
英語なので読むのは厳しいですが、昔のバリの写真があって興味深いです。
美術館らしい品揃えのショップもあります。

一番大きいオゴオゴのミニチュア版がありました!もちろんサカ美術館オリジナル。

お手頃価格の、額に入れて飾ってもステキなポストカードは人気だそう。

プルメリアのピンバッジもよく売れているそうです。

バリ語で「サカ美術館」と入ったタンブラーはさりげなく目立つこと間違いなし!
オゴオゴをテーマにしたドキュメンタリー映画も上映されています。時間は約11分ほど。素晴らしい映像で見応えがありました!バリの人々のオゴオゴに対する真摯さがひしひしと伝わってきます。
映画はヘッドホンで日本語訳を聞きながら観ることができます。
美術館1階にあるカフェはドリンクのみの販売。
実は気になっていた天井。小さいランプがランダムに埋め込まれているんです。これはニュピの夜の星空をイメージしているそうです!なるほど〜!すごく納得です!
2024年のニュピは3月11日。前夜の10日はオゴオゴパレードです。バリの人々のエネルギーが爆発するパレードを機会があればぜひご覧いただきたいですね。
SAKA Museum
Open : 10:00~18:00
現在、宿泊ゲストのみ利用可能。一般のゲストは、rsvp@sakamuseum.orgまでお問い合わせください。
著者名:岡田美和
プロフィール:バリ島に住んで26年。バリ島発行のHISフリーペーパー「バリフリーク」編集部員を11年勤めた後、2011年に独立しデザイン会社「MIMO Creation」を立ち上げる。バリ島旅行関係の記事、情報など発信し、旅行社のガイドブック作成なども手がけている。
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