白昼堂々ホテルへ…。小さなコミュニティで不倫バレし、居場所をなくした38歳女性の末路は(後編)
関係のあまりの軽さに
その夜の一件を報告されたとき、
「あの人もさ、いきなり文句を言ってくる女の人にゴマをするなんて、ひどくない?」
と憤慨した口調で話す奈々に、
「マスターの立場なら、感情が立っている客を抑えるのが最初だと思うよ、仕方ないよ。ほかのお客さんもいたんでしょ? だったら騒ぎを大きくしないのが最優先じゃない?」
と、立場の違いを冷静に説いたが、奈々は
「次の日に私に来るのを控えろって言うのはどうなのよ」
と怒りが収まらない様子だった。
だから、あなたが思っているのとマスターの気持ちはまったく別なんだよ。
そう言いたいのを堪えながら、「あなたのほうが近い存在だから、お願いしやすかったのだろうね」と答えた。実際に奈々がお店でどんな振る舞いをしていたのかはわからないが、常連客から指摘が来る程度には目立つものだったとしたら、まずそこを解決するのが経営者としての考えだろう。
つまり、奈々の言動が自分と不倫をしているせいなら、「近い存在」として馴れ馴れしさが出ているのであれば、店としてマイナスの客になるわけで、排除を考えるのは当然なのだ。奈々より古い常連客を大切にするのは理由があるはずで、それが店の経営を支える存在なのだとしたら、「店の経営が生きがい」と話す男性の決断として違和感はない。
奈々はそれに気が付かない。ふたりの関係は不倫だからこそ軽いもので、「問題」が起こればつながりごと切れる。相手に絶対的に優先するものがあれば、それを上回る存在にならない限りは簡単に捨てられるのだ。
「店に来るのはしばらく控えてほしい」と言われた時点で、不倫をやめることにしたのは奈々の英断だと心底思うが、それは相手の立場を考えて身を引いたのではなく「自分を大事にしなかったから」が理由で、その終わりも、この男性が自分について周囲に何か話すかもしれないという奈々の不安を生んでいた。
◯◯を捨てる覚悟をしないと… 次ページ