
紫式部と道長、実際のところ二人が「恋仲になるチャンス」はどの程度あり得たのか?
*TOP画像/まひろ(吉高由里子) 大河ドラマ「光る君へ」8回(2月25日放送)より(C)NHK
『光る君へ』ではまひろの一家と道長の一家のしがらみが、道兼がちやはに手を掛けたエピソードをとおして第1話から描かれています。また、為時は兼家から仕事をあっせんしてもらうなど、両家には切っても切り離せないさまざまなつながりがあります。
とはいえ、道兼、あるいは藤原家の誰かが紫式部の母に手をかけたという言い伝えはありません。また、紫式部の一家が道長の一家にうらみを抱いていたという記録や、為時が藤原家の顔色を常にうかがっていたという記録も残っていません。
実際のところ、紫式部と道長にはどのようなつながりがあったのでしょうか。前編記事『』に続く後編です。
紫式部は宮中で『源氏物語』の執筆ばかりしていたわけではなかった。〇〇として道長のもとで働いていた
紫式部の母は彼女が4歳のときに亡くなったと言われていますが、その理由は体調不良であると憶測されています。当時は出産に高いリスクがあった他、現代のような病気の治療法もなかったため、体調不良から回復するのは容易ではありませんでした。
紫式部と道長が出会ったのは、彼女が執筆した『源氏物語』が評判になった後と一般的に考えられています。『源氏物語』は女性や子ども向けの読み物である作り物語のジャンルに分類される作品です。しかし、本書は文章の所々に学識を感じられる内容となっており、宮中の男性からも人気がありました。そうした中で、道長も『源氏物語』を評価し、漢文学者の娘であり才女とうわさの紫式部を娘・彰子の女房として招き入れたいと考えます。
紫式部は経済的にゆたかではないとはいえ、身分は貴族。宮仕えはおちぶれた家柄の女が行うことだと、当初は乗り気ではなかったようです。しかし、自分に声がかかったのは、道長が『源氏物語』を高く評価し、宮中で本書が評判になっているからだと知ると、誘いに前向きになったと言われています。また、このような理由以外にも、実家が裕福ではなく、寡婦という身分にある彼女には経済的事情もあったはずです。
紫式部は『源氏物語』の執筆に宮中で専念していたわけではありません。道長の娘・彰子の教育に携わっていた他、同僚たちとともにさまざまな仕事に従事しています。平安時代の貴族女性というと、優雅に暮らし、物語の創作に専念できるというイメージを抱かれがちです。しかし、現実は、紫式部は彰子に漢文の講義を行ったり、同僚との人間関係にも気をまわしながらさまざまな業務に従事したりと、執筆だけすればよいという立場ではありませんでした。また、紫式部と名前を並べる清少納言も藤原兼家の孫・定子の女房を務めており、紫式部と同じように宮中で数々の仕事をこなしていました。
道長にとって紫式部は愛する女性だったのか。それとも政治的駒にすぎなかったのか?
道長は『源氏物語』のスポンサーであったと言われています。当時、紙は高級品であり、紙の使用量を減らすため、手紙の裏に手紙を書くことも珍しくないほど貴重なものでした。道長は『源氏物語』を書くための紙や筆、硯、墨などを紫式部に与えただけでなく、『紫式部日記』の執筆にも物質的な面から支援していたことが分かっています。
なぜ、道長は紫式部を宮中に招き、支援したのでしょうか。その理由は憶測でしか語ることはできません。道長も『源氏物語』のファンであり、紫式部に恋心を抱いていたという可能性もあるでしょう。あるいは、彼の政治的な思惑が関係していたという見方もできます。『源氏物語』の豪華版を一条天皇に土産として用意していたことが記録に残っています。さらに、文学に興味をもつ当時の天皇に自分の娘に目を向けてもらうため、紫式部を女房として招いたという説もあります。
二人がお互いに対してどのような思いを寄せていたのか、私たちの想像の範疇にとどまります。とはいえ、『光る君へ』で描かれているように、紫式部の一家と道長の一家との間にうらみを抱くような出来事があったという記録は見当たりません。
参考資料
・昭文社出版編集部『図解でスッと頭に入る 紫式部と源氏物語’23』 昭文社 2023年
・関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝 』朝日新聞出版 2023年
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