不倫相手を忘れられない…。既婚男性にすがる35歳女性の孤独は(後編)
「戻らない」決意
「でもさ」
「なあに?」
ふてくされたように黙ってしまった咲希に、静かに声をかけた。
「その新しい相手もさ。もし、いたらだけど、かわいそうだよね。不倫なんて先のない関係で幸せになれるはずがないじゃん。あんたはもう、そこから抜けたんだからさ」
そう言うと、咲希が息を詰める気配がした。
「そうだね」
「そうだよ」
今できるのは、不毛な関係から脱出してひとりになった現実を正解だと認めることで、「不倫で幸せになれるはずがない」という言葉を受け止めてほしかった。もし今もその既婚男性と関係が続いていたところで、実感のこもらない愛の言葉と実際は肉体だけ求められることの虚しさにはいつか気がつく。
それよりも、ひとりになったからこその自由を、きちんと味わう器が今の咲希には必要だった。戻らない決意は、次の恋愛で正しく相手を見る力になる。不倫でつらい気持ちを経験したのなら、「繰り返さない自分」を受け取ることが新しい自信になる。
「こんな偶然はまあ、これからもあるかもしれないけどさ」
そう言うと、
「本当は、そこにいても気が付かないくらいがいいのよね」
咲希はぽつんと答えた。「そうだよ」とうなずきながら、次はそこに一緒に買い物に行こうと約束した。
「新しい服がほしいな」と言うと、
「そうね、友達と買い物に行くためにおしゃれするのって久しぶり」
と、咲希の落ち着いた声が返ってきた。
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