元NHKアナウンサーが教える、プレゼンが劇的に上手になる「3つの話し方」
OTONA SALONE編集長の浅見が今、気になる人物をお招きしてトークを繰り広げる対談企画。ちまたでは“エツコの部屋”(注:浅見の下の名前は悦子)といわれているとかいないとか(笑)。
岩井志麻子先生に続き、今回のゲストは『心に届く話し方 65のルール』を出版された元NHKアナウンサーの松本和也さん。働く女性なら誰もが知りたいビジネスシーンでの、相手の“心に届く話し方”のノウハウをたっぷりお聞きします!
“覚える”を最小限にしてリスクを軽減!
浅見「松本さんの著書『心に届く話し方65のルール』を読んで衝撃的だったのは、生放送で暗記していた情報が全て飛んだというお話!」松本「え、そうですか!? アナウンサーなら誰しも一度はやっていると思います。でも、あの体験があったから、“話す”ということを一度しっかりと見直すきっかけができました。覚えることは最小限にして、あとは現場でどうにかする。その力を磨くほうが有益だと思います」
浅見「現場で臨機応変に、ですか」
松本「一見、非常にリスキーに思えますが、逆にリスクを軽減できるんです。後づけではありますが、そのハプニングが意外とウケがよくて。『松本らしさが垣間見られた!』なんて、先輩アナウンサーに言っていただきました(笑)」
浅見「なるほど、逆転の発想ですね。つい覚えることに必死になっちゃいますが」
松本「自慢じゃないですが、私は5分や10分のセリフ、平気で暗記できちゃうんです。だから、その出来事が起きるまでは、とにかく暗記しておくタイプで。しかも、暗記したことは、すぐに口に出せる。これは自分のウリだと思っていました。でも、人間には思わぬハプニングというものがある(笑)」
浅見「10分ものセリフが暗記できるなんて!」
松本「入社して3年ほど経ったとき、先輩アナウンサーから、『松本はおもしろくない!』と言われたことがあって。そのときはなぜ、自分の話がおもしろくないのか、全然わからなかったんです。『こっちは一語一句間違えずにちゃんと覚えて話しているんだ!』という変な自信がありました。本音をいうと、『文句言うなら、やってみろ』と思っていたくらいです(笑)。でも、今ならわかります。暗記していた私のことばはペラペラで、人の心を動かすものではなかったな、と。」
話し方の癖や欠点に“気づく”ことが上達の一歩
浅見「自分の話し方の特徴や癖って、案外わからないものですもんね。なのに、他人の話し方は色々気づいちゃう……」松本「自分の癖や欠点に気づくこと、これは至難の技です。自分では気づきにくいものですから。他人から指摘されるか、私みたいによほどの失態を犯さないと(苦笑)。でも、“気づく”行為こそ、話し方を上達させる第一歩だと思います」
浅見「私は職業柄、自分が取材したICレコーダーを聞き返す作業があるため、否応でも自分の話し方を聞く機会が。『私って、こんな声しているんだ』とか、『なんで、こんなに早口になっちゃったんだろう』とか、毎回聞くたびに反省……。なので、聞く作業は苦行といってもでもいいほど、苦痛なときも(笑)。でも、客観的に自分の話し方を知ることができる貴重なチャンスなんですね」
松本「最近はスマホのボイスメモ機能で簡単に録音できますから、自分の普段の話し方を客観的に聞いてみるのもいいかもしれません」
プレゼンを成功させる話し方テクとは?
浅見「働く女性がプレゼンなどの場で、最低これだけは守っておくといい!ということはありますか?」
松本「3つ挙げるとするなら、
1.欲をかくな
2.ざっくり→しっかり
3.間を恐れない
この3つですね」
心に届く話し方1.欲をかくな
松本「『欲をかくな』というのは、いいたいことがたくさんあっても、7割、8割程度にとどめておけ!ということ。本当は4項目話せる時間があるけれど、あえて2個までにしておくとか、肝心なこと1個だけをいうとか。すると余裕が生まれて早口になるのを防げます。また、わざと時間を余らせて、『何か質問はありますか?』と聞く。そこで出た質問こそ、ニーズなわけです」
浅見「何事も“腹八分”がポイントということですね。私も新人編集者時代、自分が書いた原稿を編集長にチェックしてもらうと、いろいろ書きすぎていたせいで“ここは論点がズレるからいらない”と指摘され、かなり削除されました(苦笑)。相手に届かせるためには削ぎ落とすことが必要なんですね」
松本「自分がいいたいことと相手が知りたいことには、意外と相違や差があるもの。自分の知識を全て出し切ろうとする、張り切りすぎちゃう……、その姿勢では相手に届かないんです」
浅見「確かに。こちらが言いたいことと、相手が聞きたいことは別だったりしますよね」
心に届く話し方2.ざっくり→しっかり
松本「続いて、2つ目。『ざっくり、しっかり』は、話すときはまず結論や大枠をざっくり伝えて、そこから細かいディテール説明をしっかり話していくということ。いきなり、細かな説明を話し始めてしまうと、聞いている人の頭には入りにくく、またストレスを感じさてしまうこともありますから」
浅見「そうなんですね。たとえば、『今日お話したいことは3つあります! まず1つ目は……』と最初にざっと説明するのはどうですか?」
松本「いいと思います! ただ、まず1つ目は……のあとが重要。多くの人がここでいきなり、細かな説明に入りがち。でも、ここにもう1回くらい“ややざっくり”な説明を入れるのがベターです」
浅見「なるほど。たとえば、編集長の私なら、こんな感じでしょうか!?
今日はお話したいことが3つあります。
1つ目は先週のイベントのこと。
2つ目は今週の撮影のこと。
3つ目は来月の企画会議のこと。
まず、1つ目はイベントの来場数と反響について、お話したいと思います……(以下、細かい説明)」
松本「いいですね! 1つ目は……のあとに“ややざっくり”なワードがちゃんと入っています。聞く人は『イベントには200名の読者さんが来場して、なんちゃらかんちゃら』といきなり話されるより、ややざっくりワードがあるおかげで、『これから来場数と反響についての話があるんだな』と心の準備ができます」
心に届く話し方3.間を恐れない
松本「3つ目は『間を恐れない』。話し手が黙ると、聞き手は『えっ、何? どうしたの?』と注目するもの。そのときに話すと、思いは相手に伝わりやすいんです。間髪入れずに話し続けてしまうと、相手が入る隙がないんですね。どんどん気持ちが離れていっちゃいます」
浅見「隙がない……!」
松本「私自身、アナウンサーとして生放送を担当していたとき、間が空かないように話さなきゃと必死でした。でも、実は視聴者の方や先輩アナウンサーに聞くと、間があったほうがよかったりする。変に焦る必要はないって、そのとき気づきました。間を空けることで、聞き手の注目を引くことができるのはもちろん、聞き手は自分で考える時間を持てる。実はいいことがたくさんなんです」
浅見「沈黙恐怖症になることはないんですね! ただ、プレゼンのときなんかは、『ヤバっ! 話す内容を忘れちゃった、どうしよう〜(焦)』という状況のときが。こういった場合はどう乗り切ったら良いでしょうか?」
松本「そんなときはとにかく、あえて余裕を見せつつ時間稼ぎをすることです。『ここまでお伝えしたことは〜です。では、ここからは……』と話の要約をしたり。最後の手段は相手が思っているであろうことを、あえて口にしてしまうこと! たとえば、『みなさん、私が次に何を言うのかな〜と思っていますよね!?』と言ってしまえば、聞き手はたいていの場合、笑ってくれます。そういう乗り切り方もあります(笑)」
相手が気持ちよくなれる話し方を目指して
浅見「他にプレゼンで気をつけたほうがいいことは?」
松本「『えーっと』『あのー』などの言葉を極力いわないこと。一度いったら、絶対にもういわないぞ!とブレーキをかける意識が大切です。余計な言葉をたくさん入れてしまうと、肝心な本題が相手に伝わりにくくなりますから」
浅見「わかります! 学生のとき、『えーっと』が口癖の先生がいて、授業中に『えーっと』を何回いったか、数えたことが(笑)。確かにその先生の授業はいまいち、内容が入ってこなかったですね」
松本「私がみなさんにいいたいのは、『自分が気持ちいい話し方ではなく、聞いている人が気持ちいい話し方を目指しましょう』ということ。つかえることなく、ペラペラと流暢に話せたから、相手に思いが伝わった!と自信満々でも、気持ちいいのは自分だけ。自己満足に終わっているケースが多いものです。だからこそ、先ほどお話したことを実践してもらえたら、“思いが伝わるうえに、聞き手が気持ちよくなれる”の両方を叶えられると思います」
浅見「本当にそうですね。相手が気持ちいい話し方……、これって男女間でも重要な気が。実は私、婚活中なんですが、相手が気持ちいい話し方の重要性、最近ものすごく感じています」
松本「おぉー! それは興味深い‼」
浅見「では、後編はお酒を飲みながら……くらいの気持ちで、ぶっちゃっけトークをしたいと思います(笑)」
松本和也●まつもと かずや
スピーチコンサルタント・ナレーター。1967年、兵庫県生まれ。京都大学卒業後、1991年にNHKにアナウンサーとして入局。福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室に勤務。2016年に退職し、株式会社マツモトメソッド代表取締役に。現在は主に企業のエグゼクティブをクライアントにしたスピーチ・トレーニングや話し方の講演を行なっている。
『心に届く話し方 65のルール』(ダイヤモンド社)1,400円+税
NHK「英語でしゃべらナイト」や「のど自慢」など、数々の番組を担当してきた“話す”プロ・松本和也氏。彼自身が実体験から得たプレゼンや結婚式スピーチ、初対面の際に使える話し方ルールをなんと65個も紹介! 話し方スキルを高めたい人、必読の1冊です。
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【松本和也氏×編集長対談・後編はコチラ】
元 NHKアナウンサーが教える、相手の心をひらく「魔法の言葉」
撮影/松木潤(主婦の友社写真課) 取材・文/濱田恵理
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