【医師が解説】ぎゃ~っ!いつの間にか、シミ・シワ・たるみ……。皮膚がんの原因にもなる日焼け。紫外線対策の正解とは?
シミだけじゃない、シワやたるみ、皮膚がんの原因にもなる日焼け
こんがり陽に焼けた肌は一見健康的に見えますが、一時に大量の紫外線を浴びると肌が日焼けし、火傷になることもあります。また、少量の紫外線でも長年にわたって浴び続ければ光老化が起こります。
光老化は慢性的な紫外線傷害で、単なる老化とは違います。加齢による老化の場合、皮膚の厚さや色が薄くなりますが、紫外線を浴びて光老化が起こると、皮膚は厚くゴワゴワになり、色も濃くなり、やがてシミ、シワとなって表面に現れるのです。
最も顕著なものとして、皮膚の張りを保つ真皮の弾性線維が破壊され、お団子状態になる光線性弾性線維症という変化が起こります。年齢を重ねるにつれ、肌の露出部は加齢による変化だけでなく、光老化による変化も加わるのです。シミやシワだけでなく、若い時に日焼けしていいた人が歳を取ると、顔や手の甲など紫外線にさらされやすい場所に皮膚がんができ、手術が必要になることもあります。
日焼けや光老化から肌を守るためには紫外線をブロックしなければなりませんが、紫外線にはUVAとUVBがあります。UVAはUVBに比べ波長が長いため、皮膚の深いところ、真皮まで届いて光老化の原因となります。一方、UVBはUVAに比べて波長が短いのですが、日焼けを起こす力はUVAの600倍から1000倍と考えられていて、皮膚表面が赤くなりメラニン色素が生成され、シミやそばかすなどの原因になります。
日焼け止めの選び方
紫外線から肌を守るために日焼け止めを塗りますが、なんとなく日焼け止めを選んでいないでしょうか。日焼け止めの主成分は紫外線吸収剤と散乱剤で、単独あるいは組み合わせて作られています。吸収剤はUVBをよく吸収しますが、UVAをあまり吸収しません。
一方、散乱剤はUVA、UVB共に遮断します。吸収剤はまれにかぶれを起こすことがあるので、赤みやかゆみを感じたらノンケミカルもしくは吸収剤不使用の日焼け止めを選ぶといいでしょう。
日焼け止めクリームには性能を表すSPFとPAという数値が表示されています
SPFはUVB照射により翌日生じる赤みを指標にして検定したものです。夏の海岸で20分間日光に当たると翌日赤みが出ますが、例えばSPF30の製品を規定量つけた場合、20×30=600分、10時間日光に当たると翌日赤みが出るということになります。SPFは2〜50の製品があり、50以上のものは50+と表示されています。50以上のものはあまり性能に差がなくなるので、50+と表示されています。
UVAを防ぐ指標のPAは、紫外線照射直後からメラニンの酸化で起こる即時型黒化という反応を指標として検定されており、+から+++の3段階があります。PA+はUVA防止効果がある、PA++はUVA防止効果がかなりある、PA+++はUVA防止効果が非常にあると考えてください。
オフィスにこもっている場合はそれほど強力な日焼け止めを選ぶ必要はありませんが、海や山に出かける場合は紫外線が強くなるので、SPFやPA が高いものを選びます。出かける場所や普段使いにするかどうかで日焼け止めを変えるといいでしょう。
日本皮膚科学会では、日焼け止めを選ぶ目安として、日常生活における光老化予防としてはSPF5、PA+、軽い屋外活動やドライブの場合SPF10、PA++、晴天下のスポーツや海水浴ではSPF20、PA+++、ウォータープルーフ、熱帯地方での屋外活動の場合はSPF30以上、PA+++、ウォータープルーフを推奨しています。
日焼け止め、塗る量に注意して
日焼け止めを使っても、塗る量が少ないと表示してある通りの効果を発揮することができません。SPFやPAという値は日焼け止めを1cm2あたり2mg、液体の場合2µlを塗るという前提にした値です。多くの人が必要量の2/3くらいしか塗っていないことが分かっているのですが、そうすると効果は半分程度になってしまいます。
日焼け止めは規定量を塗ることが大事です。顔の場合、パール2個分位を全体に均一に伸ばし、さらにもう一度重ね塗りします。また、直射日光に当たり続ける場合は、2〜3時間に1回くらい塗り直してください。なお、ウォータープルーフの製品は落ちにくいので、クレンジングで落とします。
日焼け止めを塗る場所ですが、顔はもちろんうなじや、耳たぶ、胸、首、手の甲にも忘れずに塗りましょう。また、その際は均一に塗ることを意識します。
【前編】では、日焼け止めの選び方や塗り方の基礎についてお聞きしました。
▶つづきの【後編】では、皮膚がんになりやすい人とは? できてしまったシミやシワは美容皮膚科でどこまで治せる?などについてお伺いします。__▶▶▶▶▶
【お話】
大塚篤司先生
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授
信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て、2021年4月、近畿大学医学部皮膚科学主任教授。診療・研究・教育に取り組んでいる。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー皮膚疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとしてネットニュースやSNSでの医療情報発信につとめている。X(旧Twitter)アカウントは、@otsukaman 著書に『 世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)など。
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