働けなくなったときの保障は?職業と子どもの有無が分かれ道 【おこなしさまという生き方 Vol.12】

「自分が働けなくなったら・・・」「パートナーが仕事をすることができない状態になったら……」

 予期せぬ病気やケガで長期間仕事ができなくなると、医療費に加えて生活費の心配もでてきます。治療費は「医療保険」で大部分がカバーできたとしても、働けなくなることで収入が途絶えるのは大きな痛手。家賃、ローン、光熱費などの固定費の支払いを滞納するわけにはいきません。そこで今回は、「所得保障」について考えていきます。

どうする? 病気やケガなどで収入が減ったとき

治療が長引くと医療費の自己負担が増えると同時に、長期休業により収入が減るというダメージを受けることになります。そんな事態に備えるために、自分自身および家族の経済的困難をサポートするための保険として、注目されているのが「所得補償保険」。最近は各社から続々と登場しており、病気やケガなどで入院または在宅療養の状態になったときに、毎月一定額が受け取れるタイプの保険です。

同じような内容で、「就業不能保険」と呼ばれるものがあります。「所得補償保険」は損害保険会社が販売するのに対し、「就業不能保険」は生命保険会社が取り扱っています。基本的には、「所得補償保険」は一定期間の短期補償タイプ。「就業不能保険」は、65歳満了などの長期補償タイプですが、「所得補償保険」でも長期にできるものもあります。

 

本当に必要? 「所得保障保険」

長期間の収入減は、場合によっては死活問題。独身だと生活費を自分一人で稼がなければならないため、毎月の収入が減ることで生活苦に陥るかもしれない。既婚者でもパートナーが長期入院などで世帯収入が減れば、生活に支障がでてくることもあります。そんなときに給与のように毎月保険金を受け取れたら、焦らずゆっくり治療に専念できそうです。

「でも、働けなくなったときの補償は本当に必要?」

Vol.11の医療保障のなかでも触れていますが、保険はまず公的な社会保障制度の内容をチェックしてから検討することが基本です。会社員が加入している健康保険や、公務員が加入している共済組合には、病気やケガで仕事を休んだ際に生活費を保障する「傷病手当金」があります。

 

会社員や公務員には公的な「傷病手当金」がある

連続3日間欠勤すれば、4日目から傷病手当金が支払われ、期間は最長1年6カ月。標準報酬月額の3分の2が支給される心強い制度です。例えば、標準報酬月額が30万円だと、1日あたりの傷病手当金額は6,667円。30日分で月20万10円となりますが、初月は待機期間3日分が差し引かれるため、18万9円となります。

さらに健康保険組合によっては、追加で独自の制度を設けていることがあります。なかには、法定給付満了後に期間を延長して補償してくれるところもあります。自分が加入している健康保険に付加給付がないか、調べておきましょう。また、有給休暇が残っているようなら消化利用で給与は減りません。他にも、業務上や通勤による負傷および疾病が原因で仕事を休む際には、労災保険から賃金の約8割が給付される「休業給付」があります。このように会社員は、病気などで長期休業することがあっても、ある程度の賃金は保障されます。

 

自営業やフリーランスこそ必要

しかしながら、自営業などの個人事業主が加入する国民健康保険には、傷病手当金制度がありません。労災も特別加入できるケースを除けば、入っていないことが多いと思います。そのため、働けなくなったときの経済的なリスクが高くなり、「所得補償保険」や「就業不能保険」は、会社員よりも自営業やフリーランスの方が必要性のある保険といえます。

すでに多くの方が加入している「医療保険」は、病気やケガによる入院を保障する保険です。それゆえ、退院すると補償外で給付金は支払われなくなります。一部、通院特約を付けることもできますが、給付金があっても少額で給与の補てんには及びません。

そんな医療保険ではカバーしきれない、収入減に備えるのが「所得補償保険」と「就業不能保険」です。基本的には自宅療養も補償対象となっています。ただし、加入をする際に必ず確認すべきことは支給要件です。保険の種類によって設定された免責期間の60日や180日間以降に、就業不能と医師から診断された場合のみ給付対象なります。また、うつなどの精神性疾患、交通事故によるむち打ちなどが対象外になっているなど、思っているよりも重い病や重度の障害でなければ受け取れないことがありえます。

 

重い病気や障害には「障害年金」がおりることも

それでも万が一、重い病や重度の障害になれば治療が長期化、生活にも支障がでてしまいます。会社員が受けられる「傷病手当金」の1年半の期間では補えないこともあるかもしれません。そんな時には「障害年金」があります。病気やけがなどで障害が生じたときに支給されるもので、がんや糖尿病などで生活や仕事が制限されるようになった場合にも支給対象となります。

障害年金を受けられるのは公的年金に加入し、一定の保険料納付要件を満たし、かつ、障害の状態などの障害年金の支給要件を満たしていること。自営業者などが加入している国民年金でも受給できます。支給される障害年金の額は、加入していた年金や障害の程度、また、配偶者の有無や子どもの数などによって異なります。Vol.10で取り上げた「遺族年金」でもそうでしたが、年金の種類によって「子どもがいる」と加算されますが、当然ながら“おこなしさま”は子の加算額はありません。

 

自分が働けなくなったとき、職業によって保障は違う

まとめると、「所得補償保険」「就業不能保険」は公的補助の不足分を補い、長期間働けない状態のリスクをカバーするためのもの。会社員であれば社会保障制度や会社からの保障で、ある程度の所得を確保することができます。まずは自分が働けなくなったときに、どんな保障がどれくらい受けられるのか確認してから、所得補償の保険が必要か判断しましょう。

会社員に比べて、自営業やフリーランスは保障が少ないのが現状です。病気やケガなどで働けなくなると、収入が途絶えてしまいます。それでも短期で復帰できればダメージは少なくてすみますが、長期に渡って仕事ができなくなるリスクに備えておけば安心材料にはなります。「所得補償保険」「就業不能保険」は、今後の発展が期待される分野の保険です。最近では精神性疾患も保障の対象にするなど、徐々に給付範囲を広げたものが登場し始めているので、自分にあった保障内容や保険料などをよく検討してみてください。

最後に、似たような名前のため勘違いしがちな「収入保障保険」についてお伝えします。「所得補償保険」が働けなくなったときの収入減を補う保険なのに対して、「収入保障保険」は死亡または高度障害になった際に年金で保険金が遺族に支払われる死亡保障です。名前は似ていますが、性質が異なるので間違えないように注意しましょう。

 

職業、家族構成によって保障の選択を

生きている間には、さまざまなリスクがあります。そのリスクは、性別、年齢、職業、身体、結婚の有無、子どもの有無などの要因によって、個々に違ってきます。保険はリスクによって、経済的なダメージを受けないように生活を守るためのもの。

私たち“おこなしさま”は、月々子どもにかかる教育費や学費の負担がありません。そのため、所得補償に関しては子どものいる方よりリスクは低めです。 反対にリスクが高いのは、自営業などの個人事業主で子どもがいる世帯になります。それぞれが自分のリスクを洗い出すことで、ライフプランの実現に欠かせない保障を選択できるようになるのです。

これを書いている個人事業主の私は、会社員の方がとっても羨ましく感じてしまいました。会社に縛られず、子どもがいなくて自由な身分だけど、その代わりに何かあったときの人生の保障は低い。ああ、何事も一長一短なのですね。

 

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