更年期の心の不調はどこからくる?「頭じゃわかっていてもポジティブになれない!」3つの原因とは?【精神科医が解説】

更年期の女性に生じる心の不調。3つの原因とは

更年期の女性には、心の不調が現れることがあります。個人差はありますが、さまざまな種類の不調が起こり得ます。

広岡先生は、更年期女性の心の不調について、次のように解説します。「私は、45歳頃から55歳頃までの更年期の心の不調を、原因によって3つの種類に分けています」

3つの種類はこちらです。

 

1.女性ホルモンの低下によるもの

「更年期の女性ホルモンが揺らぎながら低下していくことが更年期の心の不調の直接の原因となります。イライラ、不眠、不安、恐怖、情緒不安定、易疲労感、記憶力の低下、抑うつ感等があります」

 

2.更年期の身体症状がストレス源となるもの

「更年期に生じる多彩な身体症状がストレス源となり、うつ状態などの心の不調を生じます。日本産婦人科学会では、身体症状を二つに分けています」

(1)ホットフラッシュ(突発的にくる頭部を中心としたほてり)、のぼせ、発汗などの血管の拡張と放熱に関する症状

(2)疲れやすさ、肩こり、頭痛、背中の痛み、腰痛、関節痛、めまい、かゆみを伴う皮膚の乾燥、頻尿、性交痛等のさまざまな身体症状など

「また更年期の女性は、身体症状に悩むことで美貌の低下と老いを感じます」

 

3.ストレス反応によるもの

「更年期に訪れる生活の変化や生活習慣病がストレス源となり、ストレス反応などの心の不調を生じます。親の介護や性格の異なる夫が定年退職した後の同居生活は、大変なストレスになります。離婚となると経済不安が生じます。子どもの不登校、受験の失敗、離職、独立などの家族のさまざまな変化がストレスとなります。勤め先の人間関係のストレスも深刻になります。独身女性には孤立感と経済不安があります」

 

更年期の心の不調は、さまざまな原因があるのですね。

 

「更年期では、これらの3つが複合して心が不調になります。心の不調をこじらすと、心の病を発症します。心の変化、感情の変化、自律神経の変化、身体の変化、生活環境の変化、経済不安等がネガティブに連動し合っていて、それぞれが悪化します。

精神科では、更年期の環境変化に順応できなくなる心の病を適応障害と診断します。更年期にはストレスが多くなるので、更年期うつ病や既存うつ病の再燃・再発を好発します。既存の月経前不快気分障害(PMDD)がある更年期女性は、その症状を悪化させます」

 

 

更年期の心の不調への対処法

更年期特有の心の症状が出たときに、どのように対処したら良いのでしょうか。広岡先生に、心の持ち方と行動を教えていただきました。

 

●ポジティブに受け止める

「更年期の女性の加齢に伴う心と体の症状や生活の変化を、ポジティブに受けとめられるような平常心でいる心構えを持つことが重要と考えています。それだけで、ストレス源に過度にネガティブにとらわれ、こじらすことを防ぐことができます」

 

●自分の存在と行動に絶対的価値があると信じる

「そこから歩み続ける人生のプロセスは、どのような結果になろうと絶対的な意味と価値があると信じることです。自分の存在と行動に絶対的価値があると信じることが原点であり、常にそこから生き続けるように意識します。

自己の中心をそのような平常心にあるようにして、その心の状態で考えて行動できるようになること。このようにコントロールできればストレスに強くなり、大胆に生きる勇気が生まれます」

 

ここまでの前編では、更年期女性の心の不調の原因と対処法の基本を教えていただきました。後編では、対処法についてさらに詳しく、また具体的な実践方法を伺います。

つづき>>「評価されるような結果が出せない。やっぱり自分はダメだ…」更年期の心の不調は“丸ごと肯定”が対策のカギになる!【精神科医が教える対処法】

 

 

【取材協力】

広岡 清伸先生

広岡 清伸(ひろおか・きよのぶ)先生
精神科専門医、指導医、精神保健指定医。広岡クリニック理事長。
富山県高岡市出身、早稲田大学中退、日本大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院研修医、堀ノ内病院、関東労災病院などを経て1992年に横浜市港北区に広岡クリニックを開設。患者の目線に立って治療する独自の「肯定的体験療法」が評判を呼ぶ。今まで診察してきた患者は1万人を超える。著書に『心の病になった人とその家族が最初に読む本』(アスコム社)、『日本の臨床現場で専門医が創る図解精神療法』(鳥影社)、『広岡式こころの病の治し方』(日経BP社)などがある。

『心の病になった人とその家族が最初に読む本』

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