子なしの介護者は誰に?介護保険でカバーできるのか問題を考える【おこなしさまという生き方 Vol.13 】

40歳になり介護保険料が徴収開始されたときの、あの衝撃。自分にとって介護なんてまだ遠い話だと思っていたのに、「もう若くないですよ」と背中をポンと叩かれたような気がしました。いまの40代は見ためも気持ちも若々しいけど、いつまでも若者気分ではいられない。そろそろ老後に向けての準備を始める時期に入った合図かもしれません。

ましてや “おこなしさま”は子どもがいないので、老後に起こり得る心配事項が山積み。特に介護問題は、まだ先のことと思いながらも今から悩みの種。独身もしくはパートナーに先立たれた後、高齢で要介護状態になったときの不安は計り知れない。そこで、子どもがいない人生の「介護保険」の必要性について検討していきます。

自分が「介護される」場合、生涯で必要な費用は?

まず、介護にはどの程度の介護費用が必要なのかデータを参照してみます。公益財団法人・生命保険文化センターの「全国実態調査」(平成27年)によると、要介護状態となった場合、公的介護保険の範囲外で必要と考える月々の費用の平均は16.8万円。必要資金の分布をみると、「10~15万円未満」が29.1%と最も多い割合になっています。また、介護期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均59.1カ月(約4.9年)です。

あくまで目安ですが、必要と考える月々の平均費用16.8万円×介護期間59.1カ月で、合計約993万円。さらにここに、車いす・特殊ベッド・ポータブルトイレ・住宅の改修など、公的介護保険の範囲外の費用に対して必要と考える初期費用の平均252万円を加えると、1,245万円です。この金額を見て軽く眩暈がしてきましたが、介護期間が延びれば介護費用はさらに膨らみます。

 

私たちの老後像とは?

 

内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によると、主な介護者の続柄は、配偶者が26.2%、子が21.8%、子の配偶者が11.2%となっています。このデータを見る限り、親の介護に子どもが関与していることが少なくありません。

私たち“おこなしさま”は、自分の介護者リストから「子と子の配偶者」は外れます。また要介護の状態のときにパートナーがいない場合は「配偶者」にも頼れないため、全体で59.2%の可能性がなくなり、残りの「他の親族」や「事業者」などに頼ることになります。事業者などの専門家に依頼せざるを得ないとなると、費用負担が増加します。

自立した生活が送れるなら一人でも何とかなるものの、介護は生活に直結する重要な問題。“おこなしさま”にとって介護費用と介護者のことは、拭い去れない不安要素といえそうです。

 

民間の介護保険の仕組み

公的介護保険制度では、原則65歳以上で要介護の度合いに応じて定められた、介護サービスの限度額の1割が自己負担になります。ただし、2015年8月から一定以上の所得のある方は従来の1割負担から2割負担へと改正されました。また、限度額以上にかかった費用は全額自己負担です。

介護の度合いにもよりますが、利用できる限度額があるため、公的介護保険ですべてを賄うことは難しいのが現状のようです。そこで、公的介護サービスの限度を超えた部分等を補てんするために加入するのが民間の介護保険です。少子高齢化が進むなか、要介護状態と認定される人が年々増加。近年は、民間の介護保険の必要性も高まってきています。

 

民間の介護保険は2タイプ

民間の介護保険の支払い基準は、大きく分けて「公的介護保険の認定基準に準ずるもの」と「保険会社の独自基準」の2タイプがあります。給付方法は、介護認定された際に「一時金」として受け取るもの、「年金」として毎年一定の額を受け取るもの、一時金と年金の「両者混合型」の3パターンがあります。

給付条件は保険の種類によって異なり、要介護2以上、要介護3以上、要介護4以上などと条件付けされています。このように介護保険といっても内容はさまざま。自分がどんな介護状態になった時に、どのような形で給付を受けたいのかを考えておくことが大切です。

 

介護費用が重すぎる場合に、知っておきたい制度

家計に重くのしかかりそうな介護費用ですが、一か月間の実質負担額が一定の基準を超えたときに超過分が払い戻される「高額介護サービス費」制度があります。Vol.11で取り上げた医療保険「高額療養費制度」の介護版のようなものです。自己負担の上限額は、利用者の所得状況により4つの段階に分かれていて、一般的な所得の方の負担上限は37,200円です。ただし、食費、特定福祉用具購入費、住宅改修費など、制度の対象とならない費用もあるので注意が必要です。

加えて、介護と医療の両方合わせて高額になった場合、「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用することができます。この制度は、1年間(8月1日から翌年7月31日まで)に自己負担した健康保険と介護保険の合計が基準額を超えたときに、その超過分が支給されるもの。例えば、75歳以上の一般所得世帯は限度額が56万円です。年間80万円かかったとして、そこから56万円を引いた24万円が払い戻されることになります。

このように介護にも費用を抑える制度があるので、事前に把握しておけば慌てずにすみます。そして、民間の介護保険は自己負担額の一部をカバーするつもりで考えてみましょう。また、平成22年度の税制改正で「介護医療保険料控除」が新設されたので、加入する際は介護医療保険料控除の対象になるか確認してください。

5人に1人が要支援認定

ちなみに、厚生労働省「介護保険事業状況報告」(平成26年度)によると、介護保険の第1号被保険者数は3302万人。そのうち要介護または要支援の認定を受けている人は606万人。データ上では65歳以上の約5人に1人が要介護または要支援ということになり、決して他人事とは思えません。

さらに、内閣府「平成28年版高齢社会白書」によると、介護保険サービスの利用状況の受給者総数のうち、男性 29.2%、女性 70.8%と、圧倒的に女性の受給者が上回っています。平均寿命も女性の方が長いことから、同じ支給要件も男性よりも女性の保険料が高く設定されています。

 

費用の準備だけでなく、生活改善も

働き盛りの年代だと、まだ自分の介護についてじっくり考える機会は少ないと思います。実際に介護が必要になるまではまだ時間がありますし、その前に親の介護問題が先に直面することになるでしょう。

とはいえ、手助けしてくれる子どもがいない“おこなしさま”は、自分の介護問題を軽視できません。この先、世界に類をみないスピードで少子高齢化が進む日本では、介護費用の自己負担は増加傾向にあると予想されています。将来の介護問題については、自分で考え、自分で備えておかなければならないのが現実です。そのためには今から生活改善などの介護予防に取り組んで、できれば介護いらずの元気でキュートなおばあちゃんを目指したいですね!

 

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