「経済的な自立は譲れない!」と葛藤。自信を失って迷子になりながら、二度の出産で向き合った「ワーママとしての生き方」
「結婚してもキャリアは譲れない」経済的自立へのこだわりは苦労した母の教えがあったから
「絶対に経済的に自立していたい!」――そんな価値観を強く抱いて生きてきたと話すゆうさん。背景には、母の影響があるといいます。
「母は終戦の年に生まれ、父親を戦争で亡くしています。戦後の過酷な状況の中、母の母、つまり私の祖母が女手一つで苦労して3人の子どもを育て上げた、と聞かされてきました。だからこそ『経済的に自立していることは、自分と自分の家族はもちろん、その周囲の人までも助ける力を持つことでもある』という母の考え方が、私の根っこに自然に根を張ったのでしょうね」。
さらに、ゆうさんが社会に飛び出したおよそ20年前は、いわゆる就職氷河期。
「当時は『このチャンスを逃したら試合終了』といっても過言ではない心境でした。その危機感は今も変わらず強く私の心にあります。経済的自立へのこだわりに加えて、この危機感ですから……私にとってキャリアは、未婚であろうと既婚であろうと手放せないものでした」。
負の感情を貯めこむ前に、その都度リセットしてくれる――夫との出会いで初めて満たされた心
そんなゆうさんですから、30歳の時に迎えた結婚は、自立した2人の大人が共に生きる約束でこそあれ、生活を大きく変えるものではなかったといいます。
「夫は自らにストイックな一方で、他人に対してはとても柔軟。トライアスロンを趣味にするような精神的なタフさと、レジリエンス(困難やストレスに対してしなやかに立ち直り、精神的健康を維持する能力)を持つ人です。そんな彼の臨機応変さや人間性もあって、家のことはお互いに必要な役割をやればいい、という夫婦の形が自然に出来上がりましたね」。
さらにこの結婚はキャリアをダウンさせるどころか、ゆうさんの内面にいい変化を生んだようで――。
「20代の頃は、自信がなかったゆえの恋愛体質とでも言いますか……常に相手はいるものの、深い信頼関係をじっくり育むようなことがうまくできませんでした。仕事もプライベートも一生懸命なのに、やればやるほど空回り。焦燥感をずっと抱えていたような気がします。ところが夫との出会いで、初めて心が満たされるような感覚を得ることができました。
それまでの自分は、“怒りのスタンプカード”にモヤモヤやイライラのポイントを一つずつ貯め込んで、最後に大爆発!ということが多かったんです。でも夫は、私がカードにスタンプを押そうとするとその都度向き合い、ネガティブな気持ちを丁寧にリセットしてくれました。そんな彼の努力が私の心を落ち着かせてくれたのだと思います」。
感情の絡まりをその都度ほぐし、信頼関係を編み直す――それを土台に、結婚後も「経済的自立」を譲ることなくバリバリ働くことができたゆうさん。新たに生まれた小さな家族は、そんなカタチで始まりました。
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