「経済的な自立は譲れない!」と葛藤。自信を失って迷子になりながら、二度の出産で向き合った「ワーママとしての生き方」
人生迷路に突入した初めての出産。あらゆる理想をつなぎ合わせて行動もベクトルもちぐはぐに
夫との良好な関係を構築していたゆうさんでしたが、そこに揺らぎが生まれたのは、結婚から2年後。長男の出産という出来事でした。
「出産した私にとって一番の衝撃は、『自分が経済的な自立を失った』という現実でした。出産前は、いわゆる夫婦別会計。『住居費は夫で、食費は私』というように科目を分担し、残ったお金は各自自由に使っていました。ところが、育児休暇中の私の収入は激減。当初の分担だと、産休中の収入では私の担当科目分が賄えなくなったんです」と、ゆうさんは当時を振り返ります。
「育児休暇は1年半。収入減は一時的なことだと、頭ではわかっていました。『これからは、夫婦別会計ではなく収入を合算した家計管理に変更しよう』と、夫と話し合うこともできました。それでもやっぱり、自分自身が大事にしてきたものが損なわれたような気がして……急に劣等感を抱き始めたんですよね。ものすごく悲しくなって、気持ちが折れそうになったことを覚えています」。
そんなゆうさんですから、育休明けは仕事復帰をしてキャリアを継続することに微塵も迷いはなかったのだそう。それでも、育休の真っ最中は迷子のような感覚に陥ったのだとか。
「出産を経ると、バリキャリコース・ゆるキャリコース・専業主婦コース……と、生き方の岐路に立ちますよね。私自身は迷うことなくキャリアの継続を選んできたし、育休後もその道を歩むと決めていました。ところが、その隣に横たわる選択肢を初めてじっくり眺める機会を得たことで、そちらの良さもわかってしまった。『仕事は絶対に辞めたくないけれど、時間をかけて隅から隅まで手料理が並んだ食卓も捨てがたいよね』――と、それぞれの良さをすべて手に入れたい思いに駆られてしまったんです。
その結果、突然パン教室に通ってパン生地をこねてみたり、勢いに任せて使い道もはっきりしない資格を取ったり……。血迷って、情報や誰かの価値観に中途半端に振り回されていた時期でした」。
夫はまるでサンドバッグ!誰かが勝手に描いた「イクメン像」を押し付け、八つ当たりし続けた2年間
そんな迷子のゆうさんは、夫に対しても自分以外の誰かが描いた理想をぶつけていたといいます。
「当時は『イクメン』という言葉が生まれた時期。それに対して当時の夫は、朝9時から午前3時まで数か月働き続けるような生活だったので、育児どころか家にすらいません。あの頃は、世で語られるイクメンとかけ離れた夫に、私が怒りをぶつけてばかり。出産後の数年は、夫はまるでサンドバッグのようでしたね。
先ほどお話した通り、夫はしなやかに対応できる人ですから、耐え続けてくれましたけれども……。最近『あの時はごめんね』って謝ったら、『きっとホルモンバランスが崩れているから仕方がないんだろうなと思っていた』って当時の心の内を明かしてくれました(笑)」。
相変わらず向き合ってくれる夫であることに変わりはなかったのに、自らの迷いやホルモンの変化で夫婦関係を崩してしまっていた、と振り返るゆうさん。
そんな二人の関係は、次男の出産を機に徐々に改善へと向かいます。初めての出産からおよそ2年後のことでした。
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