敬語の3大間違い。「させていただく」「よろしかったでしょうか」「おっしゃられる」
敬語はとにかく丁寧であればいい、だからたくさん丁寧な要素を入れればいい。
そう考えているなら、おそらくあなたの敬語はだいたいが間違っています。
中でも代表的な間違いは「させていただく」「よろしかったでしょうか」「お帰りになられる(二重敬語)」でしょう。
間違いがちな3つの敬語は、どう言い換えればいいのでしょうか?
「させていただく」→実は「する」だけでいい
先日、とある会議に出席すると、司会の方が、冒頭たった3分のあいだに、「させていただく」を10回も言いました。
- 本日司会を務めさせていただきます、〇〇と申します。
- お手元の資料について、ご説明させていただきます。
- 添付の書類について、ご紹介させていただきます。
- 追加させていただく資料などが発生いたしましたら、座席後方にて配布させていただきますので、ぜひ、お声かけいただけますよう、ご案内申し上げさせていただきます。
聞いている私がハラハラしましたが、本人は全く気にしていない様子。おそらく、「させていただく」と言っておくだけで、彼女なりに何かをクリアしている心境なのでしょう。
この「させていただく」について、文化庁の見解があります。
-
相手側、または第三者の許可を受けて行う場合
-
そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
この2つの条件がある場合だけ「させていただく」が適切だとしています。
文化庁 文化審議会答申より
「させていただく」が適切だとする例として、例えば、相手が持っている資料のコピーを取らせてほしいと、許可を求める場合です。
- その資料、コピーを取らせていただけますか?
これはOKです。これはしっかりと納得できますよね。
では冒頭に書いた、そしてみなさんが本当によく使うこの言い回しはどうでしょう?
- 本日司会を務めさせていただきます、〇〇と申します。
あまりによく耳にするフレーズなので、聞き流してしまうほど。
しかし、この言い方、実はやや冗長な言い方なのです。
この言い方の場合
1 相手側、または第三者の許可を受けて行う場合
2 そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
の条件で考えると、1については、「あなたが司会を務めてよろしい」と誰かが許可を下したことを臭わせています。
確かに、立候補したのでなければ、当然、誰かが許可か推薦をしたのでしょう。しかし、この司会業がどんなに大役でも、許可か申請をしたのは、所詮「身内」です。
そして2については、大役であればあるほど、それこそ「恩恵を受ける」のは司会をするあなたであり、そんなことは聞き手が知らなくても良い情報です。
ですから、このような場合は、シンプルに
本日司会を務めます、〇〇と申します。
で十分なのです。
逆に、1と2の条件が分かるように、思い切り言葉で臭わせて、会場の同情を得るような、例えば、大物芸能人同士の結婚式の司会をする場合などは、この言い方でも良いかも知れませんね。
他にも「本日休業させていただきます」や「私は〇〇会社に勤めさせていただいております」もこのルールで「言い過ぎた敬語」であることが分かると思います。「誰かが許可をした」ということを強調したい場合にだけ、適していると考えれば良いのですね。
「よろしかったでしょうか」→よろしいでしょうか?だけでOK
こちらも、ビジネスシーンのみならず、一般的にも聞かれるフレーズです。
- この方向でまとめて、よろしかったでしょうか。
- 私どもの方でご用意する形でよろしかったでしょうか。
- ご注文は、〇〇でよろしかったでしょうか。
この「よろしかったでしょうか」は、相手に配慮をし、自分の行動が正しいかどうか再確認する意味があります。そして、適切に使えば「誤用」とは言えません。
ただし、いわゆる「バイト敬語」とされているきらいがあり、日常で敬語を使う機会もなく社会人になり、便利なので、そのままこのフレーズだけを型にはめて使っている人が多いようです。
「よろしかった」かどうか伺うということは、再確認の意味がありますので、あまりに多用すると
「聞いていなかったの?」
と思われても仕方がないのです。
このような場合は、思い切って言いきるのが良いでしょう。
- この方向でまとめて、よろしいでしょうか。
- 私どもの方でご用意する形でよろしいでしょうか。
- ご注文は、〇〇でよろしいでしょうか。
ね。ちっとも、違和感がありませんよね。むしろ、聞いている方の不安感が綺麗に消えます。つまり、「よろしかった」という過去形の言い方を「よろしい」に直せば良いのです。
敬語表現をしたつもりが、不安になっては元も子もありませんよね。ここでもシンプルが一番です。
ついついたくさん使いがちな「二重敬語」は整理して
次に、不安で不安で敬語を重ねてしまい、結果的におかしな言い方になっている例です。
- 〇〇様は、お帰りになられました。
- 〇〇様が、このようにおっしゃられています。
- 〇時に、伺わせていただきます。
これらのフレーズも、日常でよく耳にします。
「お~になる」+「~になられる」
「おっしゃる(言うの敬語)」+「られる」
「伺う(行くの敬語)」+「~いただく」
と、敬語表現が二重になっている為、文法的にも誤りとされている言い方です。
しかし、こちらの二重敬語では、あまりに使われすぎて、文法的には間違っているけれど、認められつつある言い方もあります。
- お召し上がりになる
もその一つです。
本来は「召し上がる」+「お~になる」という二重敬語なのです。
そうなると、どれが良くてどれが悪いのか、不安になると思いますが、ここでもシンプルイズベストのルールが適用されます。
- 〇〇様は、お帰りになりました。
- 〇〇様が、このようにおっしゃっています。
- 〇時に、伺います。
ね。しっかりした日本語ですし、聞いていて潔い、自信にあふれた感じがしますよね。
心もとない言葉を何で補う?
それでも、私の敬語は足りないのではないか?と不安に思う人もいるでしょう。
その場合は、敬語表現を付け足して「盛る」のではなく、尊敬の念を持った態度で話すと良いでしょう。
例に挙げた
- 本日司会を務めます、〇〇と申します。
の例。これで「敬意が足りているかどうか不安」なのであれば、言葉を付け足して盛るのではなく、しっかりした相手を尊敬する態度を付け足せば良いのです。
皆さんのために、自分の役目を堂々と果たすつもりだと背筋を伸ばして、しっかり頭を下げて、堂々と挨拶をすれば、もう言葉は不要ですよね。
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