「心の恥部が思わず暴露されてしまうよう」元TBSアナが衝撃を受けた!リアルすぎる更年期描写が意味するものとは?

2025.03.28 LOVE

元TBSアナウンサーのアンヌ遙香がニッチな眼差しで映画と女の生き様をああだこうだ考え、“今思うこと”を綴る連載です。ほんのりマニアックな視点と語りをどうぞお楽しみに!

【アンヌ遙香、「映画と女」を語る #8】

今必ず観るべき「心の踏み絵」ともいうべき官能サスペンス

論じることと、自らの経験を文章に紐付けることは全く異質の存在です。

「映画と女」にまつわる連載を持たせていただいていますが、なるべく個人的な経験を絡めた文章をいただきたいと、担当編集者からはいつもリクエストをいただいています。

本日ご紹介する映画は、論じることならいくらでもできます。ただ…個人的な経験や感情と紐付けた文章を書こうとすると、とんでもない心の踏み絵となる、そんな恐ろしい映画に出会ってしまいました。

それが、本日公開されたばかりのニコール・キッドマン主演『ベイビーガール』です。

 

完璧に美しいCEOが年下男子にコントロールされていく

『ベイビーガール』 3月28日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国公開 © 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ハピネットファントム・スタジオ

NYでCEOとして、大成功を収める美しく完璧なロミー(ニコールキッドマン)。

舞台演出家の優しい夫ジェイコブ(アントニオバンデラス)と子供たちと、誰もが憧れる暮らしを送っていました。

ある時、ロミーは一人のインターンから目が離せなくなります。彼の名はサミュエル(ハリスディキンソン)。すらっとしたイケメンで、しっかり者に見えつつも、まだどこか子供っぽさを残す危うい魅力にあふれたサミュエルが彼女の日常に頻繁に入りこんでくるようになります。

『ベイビーガール』 3月28日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国公開 © 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ハピネットファントム・スタジオ


サミュエルはその若さゆえ真正面から好意を示して来るように見えながらも、実はロミーの中に眠っていたある欲望を即座に見抜いており、そのうちきわどい挑発を仕掛けてくるようになります。

とまどいとドキドキと、様々な感情がないまぜになるロミー。「年長者、指導者」として、行き過ぎた駆け引きをやめさせるべくサミュエルに会いに行くものの、逆に彼に主導権を握られてしまい…という、挑発的かつ背徳感にあふれた一本。

サスペンスでもあり、官能的なラブストーリーでもあり、少しコメディ?的な要素も感じさせる、とにかく時間が経つのがあっという間の、非常に危険な映画です。

心の恥部が思わず暴露されてしまうような、恐ろしい映画

冒頭でも書きましたが、論じることなら、あらゆる角度からできますが、「個人的に私がどう感じるか、感じたか」をここで曝け出すのは、とんでもないハードルの高さを感じざるを得ないのです。

主演のニコールが、「役者として、人として、すべてをさらけ出した」と告白する圧巻の演技を披露しており、ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞を獲得したほど。


この映画に関して「個人的に」、「どこが良くて」「どこが許せないのか」を語るだけで、その人がこれまでどんな恋愛観の元で生きてきたか、どんな願望や情念が内面に渦巻いているのか、がポロッと無意識のうちに暴露されてしまうのではという恐ろしさがあるのです。

誰もが身体の奥底にしまいこんでいるであろう苦悩、秘めた欲望、願望……それを表にだすのは「一生ない」という人がほとんどかもしれませんが、そんな自分の隠しておきたい「恥部」の存在を思い出させる魔力がこの作品にはあります。

1人で観に行く、もしくは本当に気のおけない仲良しと観に行き、上映後はギャァギャァ騒ぎながらお酒を呑むのがおすすめ。


女性の生理や更年期は映画で描かれてきたか?

『ベイビーガール』 3月28日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国公開 © 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ハピネットファントム・スタジオ

主人公ロミーが有していた倒錯的な願望が何なのかはぜひ本編をご覧いただくとして、まず論じたいのが、40代以降の女性の体の変化や性的な部分を含めての内面へのアプローチに真正面から取り組む映画が、昨今少しずつ目立つようになってきた印象があるということ。これは女性脚本家や女性監督が増えてきたからだと言えるでしょう。

例えば、女性の生理や更年期のこと、それは社会課題として、政治の問題として考えていくべきではないのかという「国際女性デー」のイベントに登壇する機会が個人的にあり、私自身も最近色々と考えていたのですが、私の研究分野である映画業界で(2025年4月より北大博士後期課程で、日本美術と映画においての女性表現について研究中)本作品内のニコール・キッドマンぐらいの年齢の女性の体の現実を正面から取り上げる映画と言うのは、あまりにも少ないという現状がこれまでありました。

映画における女性たちの立場を考えるとき、主役は20代及び30代が目立ちます。女優がある程度歳を重ねると、母親役、場合によっては気の良いおばあちゃん役ぐらいしか描く脚本がない、という点については各所で指摘されている通りです。

そうではなく、女性の体の変化のリアルに敏感に、かつ何歳であっても主人公として女性も描かれるべきと叫ばれるようになったのは、ここ数年の世の中の変化による快挙ともいえます。

 

▶つづきの【後編】では、映画「ベイビーガール」で描かれる「更年期のリアルすぎる描写」についてお伝えします▶▶▶▶▶

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