ついつい使いがちな「ら抜き言葉」3大NGは来れる・見れる、もう1つは

 「ら抜き言葉」とは、とても有名な言葉の誤用です。
有名なのですが、どうして誤用とされるのか説明できる人は多くありません。そこで国語教師の出番なのです。
でも、私もこのしくみを説明するのは嫌いです。煙たがられる、うるさがられるからです。そもそも、みなさん(そして私も)苦手な文法の話になってしまいますし、「言葉は時代と共に変化するもの。だったら「ら」のひとつやふたつ、付いていようがなかろうが、いいのでは?」という、楽チン思考の方が優勢ですよね。
はい。では、今日はこのへんで^^
……という訳には参りません。おそらく、このコラムをクリックした方は、「よく分からないけど、3つぐらいなら直せそう。この機会に直そうかしら」と思ってくださった方が大半ではないかと察します。
たしかに、言葉は時代と共に変化するものであり、それは自然で、そして必要なことです。
しかし、ビジネスシーンで使う場面を想像してみてください。相手が年上である場合には、できるなら誤用は避けたいもの。敬語の誤りに厳しい世代、言葉の変化が認められにくい世代の人達に対して使う時には特に気をつけたいものです。
だとしたら、正しい使い方をマスターした方が良いですよね。今回は3つだけなので、まるっと覚えてしまいましょう。

その1「来れる」

正しくは「来られる」です。
誤用の例
× 今日、こっちまで来れる?
× 荷物多いけど、車で来れる?
× 歩いて来れる距離じゃない。
「来る」はカ行変格活用の動詞です。カ行変格活用の動詞は「来る」しかありません。この「来る」に可能の意味、つまり「~~できる」の意味を持たせる場合は、助動詞の「られる」を付けるという決まりがあります。「来る」の語幹は「来」なので、これに「られる」を付けて「来られる」が正解。
× 今日、こっちまで来れる? → 〇 今日、こっちまで来られる?
× 荷物多いけど、車で来れる? → 〇 荷物多いけど、車で来られる?
× 歩いて来れる距離じゃない。 → 〇 歩いて来られる距離じゃない。
「来られる」「来られる」「来られる」と呪文のように声に出してみましょう。この言葉はそれほど違和感はないと思います。
なお、相手が目上、年上の人の場合は、「来られる?」は敬語表現とも取られます。しかし、敬語の場合は「来る」は特別な言い方に変身します。そうですね「いらっしゃる」です。ですから「来られますか?」ではなく「いらっしゃいますか?」という可能表現を除いた敬語でOKです。もしも「いらっしゃる」を可能表現にしようとして「られる」をつけ「いらっしゃられますか?」となると、「られる」は尊敬の意味もあるので二重敬語のようになってしまう為です。また「お見えになる」「お越しになる」も便利です。「お見えになられる」「お越しになられる」と言えるのですが、こちらも二重敬語と判断されますし、そもそも言いにくいですよね?(笑)「られる」を抜いた場合、正確に言うと「可能」の意味は落ちてしまいますが、意味は十分通じますので、これでOKです。
× 今日、こっちまで来れらる? → 〇 今日、こちらまでいらっしゃいますか?
× 荷物多いけど、車で来られる? → 〇 荷物が多いようですが、お車でいらっしゃいますか?
× 歩いて来られる距離じゃない。 → 〇 歩いていらっしゃる距離ではございません。
なお「おいでになる」という言葉もありますが、こちらは実は混乱のもと。この「おいでになる」は「来る」「行く」両方に使えるからです。上級者向けの言葉と覚えておきましょう。

その2「見れる」

正しくは「見られる」です。
誤用の例
× 文字が小さくなってしまったけど、見れる?
× この番組、リアルタイムで見れる?
× ここからでも、その動きは見れますよ。
「見る」は上一段活用の動詞です。この場合も、可能の意味、つまり「~~できる」の意味を持たせる場合は、助動詞の「られる」を付けるという決まりがあります。「見る」の語幹は「見」なので、これに「られる」を付けて「見られる」が正解。
さあ、これは違和感を感じる人が多いはずです。声に出してみましょうか。
「見られる」「見られる」「見られる」
はい。まるで誰かに見られているような感じがしませんか? それは、「られる」には受け身の意味もあるからなのです。しかし、誤りは誤りです。友人相手ならOKとしてもいいのですが、TPOに合わせて使い分けられる自信がないのであれば、むしろ正しい方を普段から使った方がいいですよね。
× 文字が小さくなってしまったけど、見れる? → 〇文字が小さくなってしまったけど、見られる?
× この番組、リアルタイムで見れる? → 〇 この番組、リアルタイムで見られる?
× ここからでも、その動きは見れますよ。 → 〇ここからでも、その動きは見られますよ。

その3「食べれる」

正しくは「食べられる」です。
誤用の例
× こんなにたくさん、食べれる?
× あなたは、納豆を食べれますか?
× 朝起きてすぐには食べれないよね。
「食べる」は下一段活用の動詞です。この場合も、可能の意味、つまり「~~できる」の意味を持たせる場合は、助動詞の「られる」を付けるという決まりがあります。「食べる」の語幹は「食べ」なので、これに「られる」を付けて「食べられる」が正解。
これも「見られる」と同様の違和感を感じる人が多いはずです。声に出してみましょうか。
「食べられる」「食べられる」「食べられる」
……きゃー!気をつけて!という感じ、しませんか?
「られる」には受け身の意味があるので、「食べられる」は「草食動物が肉食動物に『食べられる』」と同じ意味に感じ、用心して「私は食べられるよ」というべきところを「私は『食べれる』よ」と言ってしまう人が多いようです。その心理は分かりますが、誤用は誤用です。そして大人の女性のたしなみとして、特に30代以上であれば、正しい方を身につけることに損はありません。
× こんなにたくさん、食べれる? → 〇 こんなにたくさん、食べられる?
× あなたは、納豆を食べれますか? → 〇 あなたは、納豆を食べられますか?
× 朝起きてすぐには食べれないよね。 → 〇 朝起きてすぐには食べられないよね。
こちらの「食べる」も敬語表現では全く違う言葉になります。そうですね「召し上がる」です。
相手が目上の方の場合は、特に「食べられる」よりも「召し上がる」の方が無難です。「来られる」の時の「いらっしゃる」と同様、「~~できる」という可能の意味が落ちてしまっても、こちらの表現の方がトラブルが少ないでしょう。
× こんなにたくさん、食べれる? → 〇 こんなにたくさん、召し上がりますか?
× あなたは、納豆を食べれますか? → 〇 あなたは、納豆を召し上がりますか?
× 朝起きてすぐには食べれないよね。 → 〇 朝起きてすぐには召し上がりませんよね。
なお、「食べる」の敬語を自分の行為に使う場合は「召し上がる」ではなく「いただく」になりますので、ご注意を。

さあ、可能を表す動詞の誤用で有名なものは三つ。「来れる」「見れる」「食べれる」です。使う機会の多いものですので、逆に言えば、この3つさえ押さえれば、それほど「この人はよく『ら抜き言葉』を使う人だ」という悪い印象をつけなくて済みそうです。

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