私を支えてくれたはずの男性も、蓋を開ければモラハラだった
父の死後の混乱のなか、R子さんの心に寄り添ってくれたのは、会社の先輩でした。父のことで悩んでいると打ち明けたとき、彼は否定もせず、じっくり話を聞いてくれました。
「それは、R子さんが悪いわけじゃないよ」
その一言が、R子さんの心のモヤモヤをすっと取り除き、気持ちが一気に軽くなったのです。
彼は穏やかで思いやりがあり、何があっても怒らず、話を最後まで聞いてくれる。そして、いつもR子さんの気持ちを肯定してくれる人でした。
「ようやく信じられる人に出会えた」
そう思ったR子さんは、彼と結婚しました。
ところが、結婚後しばらくして彼の態度は徐々に変わっていきました。不機嫌になると黙り込み、気を遣って話しかけると「黙ってろ」「いちいちうるさい」と冷たい言葉が返ってくるように。家事や育児へのダメ出しが増え、「俺の言う通りにしていればいい」と言うようになりました。
それでも、しばらくすると優しかった頃の彼に戻る。その繰り返しに、R子さんの心は揺さぶられ続けました。
「私のせいで機嫌を損ねたのかもしれない」
「もっと頑張らなきゃ。彼は本当は優しい人なんだから」
そう思って、必死に努力する日々が続きました。
これはモラハラの関係でよく見られる典型的なパターンです。
ひどい言葉で傷つけられたあとに、急に優しい言葉をかけられる。その落差によって、心はさらに強く揺さぶられます。「自分が悪いからこうなった」と思い込むことで、冷静に状況を見つめる力を奪われていくのです。
子どもが生まれたあとも、夫の態度は改善されませんでした。
夜泣きがひどければ「育て方が悪い」、子どもが病気になれば「お前のせいだ」と責める。子どもが泣くと「うるさい、どっか行け」と怒鳴る夫に、子どもがびっくりして怯えることも。
そんな家から逃れて、R子さんは子どもと2人、真冬の公園で時間を潰すこともたびたびありました。
離婚を切り出したとき、夫は 次ページ