略奪するより「だらだら不倫」を選んだ40代独女【#婚外恋愛4】
諦めた幸せ
D子の彼は3歳下の公務員で、数年前に付き合っていたが一度別れて「友人」に戻っていた。
交際が終わった理由は、彼の浮気。当時今の部署に配属されたばかりで多忙を極めていたD子にとって、応援してくれているとばかり思っていた彼の心変わりは、まさに「青天の霹靂」だった。
「お前が忙しいからつい出来心で」という彼の言い訳を受け入れられるはずもなく、D子は別れることを選択した。だが、友人に戻った後もなんだかんだと理由を作っては彼のほうから誘われることが多く、本当は別れたくなかったD子も彼を突き放せないまま、気がつけば体の関係になっていた。
「でも、そのときの浮気相手と結婚するなんて、馬鹿にしてるよね」
以前、D子は顔を真っ赤にして怒りを露わにしながら、同じ店でジョッキをテーブルに叩きつけていた。
だが、
「そんな男、さっさと捨てちゃいなよ」
と言われると、今度はしゅんとなって肩を落とす。
「わかってるんだけど……。結構、今の関係も楽でいいんだよね。彼の家がほら、おカタいからさ、どうせ結婚なんて期待できないし」
D子はもぞもぞと歯切れの悪い言葉を返しながら下を向く。
彼の家は、両親からその祖父母にいたるまで公務員が揃う一家だった。彼の兄は省庁に勤めていて、彼自身もいわゆるキャリア組。そんな彼が小さな企業でコールセンターの主任を肩書に持つD子と付き合ったのは、「もともと将来を考えていたわけじゃない」と彼女は思っていた。
「付き合っていたって、どうせいつか終わった関係だっただろうし」
とD子は繰り返す。
彼の浮気相手は、同じ部署で働く女性だった。自分とは違う、「彼に釣り合う女性」。それがD子に追い打ちをかけた。
「私とは結婚の話なんかしなかったけど、今の彼女さんとはできるわけでしょ? そういうことよ」
もちろん、そんな彼女がいながら自分とも関係を続けようとする彼に、憎しみを抱いたこともある。「馬鹿にされている」はずっとD子が抱えている黒い感情だが、それでも彼からの誘いを断れないのは、いつしかこんなつながりでも「求められるだけマシかも」と思い始めたからだった。
「それでもさ、彼のことが好きなんだもんね」
そう言うと、D子は言葉を返さずに笑う。今は、その表情に以前のような苦しみは見えない。
「彼との結婚は諦めたけど、まぁ今の関係でもね、ひとりぼっちよりいいんじゃない?」
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