子どもを置いて逃げた母は、間違っていなかった。あの「雪の日」から動き始めた人生は
シェルターで過ごした14日と、その後の子どもたち
子どもを置いてきてしまったことへの後悔は、時間が経つにつれて、さらにあふれてきました。けれど同時に、自分が無事でいなければ、子どもたちの生活も守れないという現実も、はっきりと胸にありました。そのふたつの思いが、Yさんの胸の中で揺れ続けていたのです。
その日のうちに、支援センターと警察が連携し、子どもたちの安全確認が行われました。学校や児童相談所とも連絡を取り合いながら、父親の暴力が子どもに及ばないよう、保護の体制が整えられていったそうです。
Yさん自身は、その日のうちにシェルターへ移動しました。タクシーで逃げてから、半日も経たないうちに、安全な場所に身を置くことができたのです。
シェルターで過ごした14日間、Yさんは、はじめて「夜に怯えずに眠れる」という経験をしました。外の物音に過敏にならなくていい。誰かの足音に身を固くしなくていい。それだけで、どれほど体が休まるのか……。Yさんは、そこで初めて気づいたといいます。
子どもを置いてきてしまったことは、その後もずっと、Yさんの胸に後悔として残っていました。逃げた判断は正しかったと、頭ではわかっている。けれど、母親としての気持ちは、簡単には整理できませんでした。
「あの子は、今どうしているだろう」
「怖い思いをしていないだろうか」
そんな思いが、何度も胸をよぎったそうです。
支援員を通じて、子どもたちの状況は日々共有されました。安全が確保されていることを確認しながら、今後の生活の整え方を、一緒に考えていく時間が続きました。その中で、支援員からかけられた言葉があります。
「あなたが無事だったから、子どもも守れたんですよ」
その一言で、張りつめていたものが、ふっとほどけた瞬間があったと、Yさんは話してくれました。シェルター滞在中、支援センターの紹介で法テラスに相談し、弁護士とつながりました。暴力、脅し、経済的DV……。これまでの状況を整理しながら、保護命令の申し立てが進められました。
その後、夫は 次ページ
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