『豊臣兄弟!』視聴率を2桁台キープの一方で、“作品ファン”は少ないのか?史実との明らかな違いに視聴者から戸惑いの声

2026.05.13 LIFE

*TOP画像/小一郎(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』18話(5月10日放送)より(C)NHK

 

『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品を深掘り解説していきます。今回は先週放送された第17話を観た視聴者の戸惑いの声を踏まえつつ、大河ドラマにおいてオリジナリティ(史実との乖離)はどこまで許されるのか著者が考察します。

 

視聴率とSNSから見る、大河ドラマの人気・話題性

024年の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合ほか)以降、NHKは女性や若年層の大河ドラマにおける視聴者獲得を目指しているといわれています。まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の魂の絆を描いた『光る君へ』は、視聴率こそ過去作品に比べて突出した数字ではないものの、配信サービス・NHKプラスでは歴代最高の視聴者数を記録しました。

 

また、昨年の大河ドラマ『べらぼう』(NHK総合ほか)は、江戸のメディア王・蔦屋重三郎(横浜流星)を主人公に、吉原を舞台とした物語が展開されました。蔦重と瀬川(小芝風花)の切ない愛の物語に多くの人が涙し、江戸を明るくしようと奮闘する蔦重の姿は、閉塞感の漂う現代社会で生きる私たちに元気を与えてくれました。ただし、視聴率は8~9%台の放送回も多く、歴代ワースト2位ともいわれています。

 

どちらの作品も視聴率だけを見れば、他の大河ドラマと比べると大成功とは断定できないものの、SNSやネットニュースで大きな盛り上がりを見せました。例えば、『光る君へ』では、まひろと道長の“恋のキューピット”となった直秀(毎熊克哉)が退場してしばらくは「直秀ロス」の空気がSNSで漂い、倫子(黒木華)の屋敷で開かれるサロンの場面は現代の女子会と重ねて語られました。また、『べらぼう』では瀬川の最後の花魁道中や喜多川歌麿(染谷将太)の悲しい境遇に多くの人が涙を流し、SNSでは放送後に慰め合う雰囲気がありました。

 

さらに、両作品では、ファンアートも盛り上がり、Xのタイムラインに「#光る君絵」「#べらぼう絵」がよく流れてきました。ちなみに、筆者の友人は大河ドラマには興味がないものの、『べらぼう』は初回から最終回まで楽しく観たと話していました。SNSで『べらぼう』関連の投稿をリツイートしたり、『べらぼう』展にも足を運んでいました。

 

現在放送中の『豊臣兄弟!』は3年ぶりの戦国時代作品ということもあり、放送前から期待の声が上がっていました。初回視聴率は13%台と前2作を上まわる好スタートを切り、その後も10%超えをキープしています(5月10日時点)。それにもかかわらず、SNSユーザーと本作の視聴者層が異なるとしても、盛り上がりは今ひとつに感じます。特に、直(白石聖)退場以降は、話題性がさらに低下した印象です。“戦国時代が舞台だから観る” “大河ドラマは、いつも観ているから今回も観る”という視聴者層は厚くても、“この作品だから観る!”という視聴者層は前2作よりもひょっとすると薄いのかもしれません。

 

史実では“明らかに”ありえない場面は好まれない傾向に……。歴史ファンが大河ドラマに期待することは?

時代劇において史実をどう描き、オリジナル要素をどう加えるかは、大きな課題の1つです。先週放送の第17回「小谷落城」では、賛否両論を呼ぶ場面が3つありました。

 

1つ目は、武田信玄(髙嶋政伸)の死の描写です。餅をのどに詰まらせて死ぬ場面は完全オリジナルのため、賛否がありました。ちなみに、筆者は山梨県の銘菓「信玄餅」との掛け合わせかと解釈しました。

 

2つ目は、小一郎が長政を説得する場面です。「何で わざわざ 自ら死なねばならんのじゃ!侍の誇りが何じゃ!そんなものは捨てて 生きたくても生きられなかった者のために 生きてくだされ!」という台詞が、当時の武士像からかけ離れているとの指摘がありました。一方、筆者は作品として観ているため、違和感はなかったです。小一郎のこの台詞には命の尊さを問い直す深いメッセージを感じました。

 

3つ目は、浅井長政(中島歩)が自ら死を選び、市(宮崎あおい)が最後に一撃を加える場面です。市が長政を刀で斬る描写も本作オリジナルで、“女性の力では男性の首を斬り落とせない”といった疑問の声が上がりました。筆者は(事実をともあれ)戦の世では、愛する人にしてあげられることがこんなにも悲しいことだけなのかと思い知りました。近現代でも“敵に殺されるくらいなら自死すべき”という考えは残っていますが、日本が再び戦争になれば、市のような選択をせざるを得ない人が出てくるかもしれません。

 

とはいえ、これらの場面を否定的にとらえる視聴者の気持ちも理解できます。“歴史そのものが好きだから” “モデルとなっている人物に強く惹かれているから”といった動機で観ている視聴者にとって、史実や人物の本質が大きく無視されたり、史実と作品がまったくの別物だと残念に思うこともあります。また、歴史ファンにとっての大河ドラマの醍醐味は、好きな史実や有名な逸話が画面に登場したときの喜びにあると思います。

 

ふと思い出しましたが、『光る君へ』におけるまひろは、実在した紫式部とは別人といえるほど異なるキャラクターとして描かれていました。まひろが恋文の代筆バイトをする場面や、まひろが周明(松下洸平)に抱く恋心のような想いは完全オリジナルです。それでも、視聴者から史実との明らかな違いについて指摘はほとんどありませんでした。

 

『源氏物語』をよく読んだ人だけが分かる描写が所々にあって楽しめたほか、『源氏物語』の世界観や思想が一貫して流れていたことにもあると思います。紫式部や『源氏物語』に対するリスペクトも感じられました。

 

一方、『豊臣兄弟!』では、軽快な雰囲気や笑いを優先しているからなのか、何でもアリ状態で、武士とその家族の流儀や価値観が少々軽視されているようにも感じます。また、筆者の知人にも同様の声がありますが、長年の大河ドラマファンの中には、他のドラマにはない重厚感を強く期待する人が少なくありません。たとえば、本作が映画であれば、『超高速!参勤交代』(松竹)や『殿、利息でござる!』(松竹)のような作品として、もっと受け入れられやすかったのかもしれません。

 

次週の放送回では、慶(吉岡里帆)に隠し子がいたことが明らかになるようですが、こちらも史実では確認されていません。視聴者はどうとらえるのだろうか……。

 

筆者は本作ならではのわちゃわちゃ感も気に入っており、楽しめています。”大河ドラマを観てみたいが、どの作品がよいか分からない”という人にも、本作をおすすめするかもしれません。

 

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では、第18話の見どころを振り返りながら、城主となった藤吉郎と小一郎の目指したであろう未来についてお届けします。

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