パリの「進んでいる女性」は「キッチンのない部屋」を選ぶ?「しなければいけない」から解放されたい、自由を愛するフランス人の生き方

2026.05.29 LIFE

結婚、家事、仕事──私たちは日常の中で、いつの間にか多くの「しなければいけない」に囲まれて暮らしています。でもそれらは、本当に避けられない義務なのでしょうか。

20年以上パリで暮らし、ジェーン・バーキンやシャルロット・ゲンズブールなど、多くのパリファッション界の伝説たちと親交を重ねてきた翻訳家・エッセイストの村上香住子氏は、フランスでは「義務」という言葉そのものが嫌われ、自由を優先する価値観が根づいていると語ります。

本記事では村上氏のエッセイから、結婚しない選択やキッチンを持たない住まいなど――日本とはひと味違うパリ流の生き方と、義務に縛られないための考え方をご紹介します。

※本記事は書籍『おしゃれなマナー AtoZ パリで暮らして知ったミューズたちの素顔』(村上香住子:著/ CEメディアハウス)から一部抜粋・編集したものです

 

obligation【義務】――「しなければいけない」ことなんて本当はひとつもない

パリの出版社に勤める編集者の知人は、自分は国民保険にも国民年金にも入っていないということを、みんなに自慢していました。

国民全員が入る義務はない、と言うのです。実家が裕福なので、経済的な心配はないのでしょうけれど、とにかく「義務」という言葉がフランス人は何よりも嫌いなのです。

シャルロット・ゲンズブールのパートナーは、今では映画監督としても活躍している男優のイヴァン・アタルです。シャルロットは1989年、18歳の夏に映画『愛さずにはいられない』で共演した彼と出会い、恋に落ちて、そのときから彼と暮らしていますが、三人の子供がいる現在も結婚はしていません。

「だってね、結婚しなければいけない、と考えると、義務になるから嫌なのよ。自由にしている方が、新鮮でしょう?」そんなことを言っていました。たしかに一理あります。

実はパリでは、同棲をしていても結婚しないカップルはそれほど珍しくはないのです。子供がいなければ結婚する必要はないと考えている人も多く、少子化対策のために政府から家族手当などが支給されるので、子供が多くなったら籍を入れるようです。シャルロットやイヴァンのように余裕のある家庭では、政府の支援金も必要ないのでしょう。

女性の務めについても、少し変わってきているようです。以前はどんなに仕事をしている女性でも、大抵は家に帰れば子育てや料理に忙しかったのですが、最近パリの「進んでいる女性」の間では、新たな傾向が生まれているそうです。

最近私は鎌倉から都内へ引っ越しをしたのですが、その翌日に、パリのフィガロ社で「マダム・フィガロ」の副編集長をしていた女友達のダニエルが来日し、まだ段ボールだらけの新居に遊びにきました。

新しいマンションのキッチンが狭い、と私がこぼしていると、ダニエルが思いがけないことを教えてくれたのです。

「今はね、進歩的なフェミニストたちは、キッチンのないアパルトマンに引っ越すらしいわよ」

「どうしてなの?」と聞くと、「女性をキッチンから解放するためよ。もう私たちはキッチンに閉じこもる必要がなくなったから」とのこと。女性解放は、いつの間にかそこまで進んでいたのです。

そういえば今はテイクアウトもできるし、日本ならお弁当はどこでも売られています。それにその値段は、自分で材料を買ってきて料理するよりずっと安上がりで時短にもなります。「キッチンのない部屋がいい」なんていう風潮が、日本にもやってくるのでしょうか。

 

ここまでの記事では、「自由を愛するフランス人の生き方」を紹介しました。つづく関連記事では、パリの紳士たちの「女性へのマナー」をお届けします。
つづき>>「男性の育ちが分かる」行動って?日本人はテーブルマナーばかり気にするけど、フランス人が重要視する「日常生活のマナー」とは

 

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著者:村上香住子(ムラカミ・カスミコ)
翻訳家、エッセイスト。 1985年にマガジンハウス社からの依頼を受けパリ支局長として赴任し、1992年、フランス最大の新聞社フィガロの中にあるパリ支局に移る。20年間のパリでのジャーナリストとしての活動後、2005年夏に帰国。ジェーン・バーキンやその家族とは40年にわたる親交をかさねている。




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村上香住子×岡本仁「パリところどころ」
日時:2026年5月30日(土)11:00~13:00
会場:本屋B&B(東京・下北沢)
イベント申し込み:https://bookandbeer.com/event/20260530_pew/



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