「子どもが自主的に勉強しない」いっそ超忙しい習いごとに入れてみる手もある。ただし、集団性のあるもの
習いごとを「うちの子だけが(授業で)できなかったらどうしよう」という「恐怖感」で選びはしなかったか。中受しないにもかかわらず、子どもが小4から小5にかけて次々と習いごとをやめたのは、「師との相性」や「一生の手習い」という、本来あるべき視点で探さなかったからではないか。
そう反省する筆者ですが、いっぽうで周囲を見回してみると、同じ年でも習いごとがすでに一生の趣味になり、レッスンに打ち込んでいるお子さんも。このような「続く習いごと」を選んだご家庭は、どのような指針でその習いごとを見つけ出したのでしょう? 働くママたちを中心に、その背景を聞いていきます。
前編記事『子どもの習いごと、実は「恐怖感」で決めてない?「一生続けられる趣味」を見つけるためには』に続く後編です。【2020年代に考える『子どもの習いごと』】#1後編
「自分で決めて自分で頑張れる子」に、なったらなったで大変だった。育児はままならない!
ところで、アキコさんのお子さんは2人とも、小学校受験を経て一貫校に入学していますね。これも習いごとの継続を考えてのことでしょうか?
「それも理由のひとつですが、それだけでというわけでもありません。私は中学校、高校と両方の受験を経験したのですが、それがあまりにも大変で回避したかった。いっぽうで、私は2回の受験時はピアノを休み、受験終了後にまた始めました」
なるほど、みんな受験で習いごとを辞めてしまいますけれど、アキコさんだけは再開した。先ほどの『革命』の話がそうでしたよね。
「ピアノに限らず、習いごとって、途中で休んで再開するという道があることを身をもって知っていました。この経験は私の人生にもきっと生きています。たとえば私は専業主婦だった期間があるのですが、その後また仕事に戻っています。いちど休んでもまた始めればいい、人生は決して一本道じゃなくて、スイッチだってオンにもオフにもできる。この成功体験の源流は、間違いなくピアノでした」
とすると、逆にお子さんにも「中学受験をすればいい、その間習いごとは休めばいい」と言ってもよかったのかもしれませんが、敢えての小学校受験。どうしてですか?
「ところが息子たちは私と真逆で、小さいころから『休む』ということができませんでした。何かがうまくできなくてかんしゃくを起こしているときに『いちど休憩してまたやったらいいじゃん』と言っても『絶対いやだ』ともっと意地になる。きっと、この子たちは休むことなくずっと続けるのが正解だなと感じていたんです」
なるほど、自分との対比からよりベターな道を考えたということですね。
「はい。また、私の気持ちもちょっと複雑で、休むことに成功体験を持っていながら、なにごとも休まずずっと続けている人に憧れます。休んでもいいんだよと言いながらも、本心では続けてほしいんですね。自分の子どもに自分のマイナスの体験は継承させないようにと思っても、そんなにうまくいかないですね(笑)」
親の体験がそのまま子に通じるかは、やってみないとわからないですものね。ちなみに小学校受験では「どのような子に育ってほしいか」面接で聞かれると思います。「思いやりの深い子」「自律できる子」などが典型ですが、アキコさんはどう答えていましたか?
「自分で目標を持ち、自己鍛錬をする子に育ってほしいと思っていました。のびのびと子どもらしくというよりは、自分で考え、自分で決めて、自分で頑張る子どもにと。ですから、自分に対しても他人に対しても誠実であれ、努力を怠るなと口にしてきました」
男児を育てるママならではの骨太な目標ですね。
「でね、気づいていなかったのですが、こうして振り返ってみると、実は息子たちはこうあってほしいと夫婦で願った子に育っています。2人とも自分の決めた目標に対して頑張って努力します。でも反面、頑張るために頑固で、融通がきかなくて本当に大変なんです。もう、毎日取っ組み合いで」
なるほど、頑張ることそのものを頑張ってしまうというような?
「はい、その頑張りの方向は間違っているよと指摘しても聞き入れないんです。例えばお料理がうまくなりたいとき、頑張って動画をたくさん見てしまう。実際にお料理して失敗しながら上手になろうよ、一緒にやろうよと水を向けても、ぼくはいま頑張って動画を見ているんだ!と絶対譲らない。何なの、せっかく材料買ってきてあげたのに!そんな小競り合いの繰り返しです。この延長で宿題も、いまぼくはやらないんだ!となったら絶対やってくれません」
でも、やりたいことそのものは自分で見つけ出してくれているんですよね。
「確かに、自分で何をやりたいのかをゆっくりじっくり考えて、やりたいと思いを決めたものに踏み出していき、そのイメージ通りに歩んでくれているなと感じます。ですから口を出したくなっても親はぐっと我慢して、でもやっぱりそれは違う!ということが多すぎて、10我慢しても1は言ってしまう……」
細かい部分ではいろいろあるのでしょうが、どちらにせよあれこれやらせようと親ばかりが焦らなくても、待っていれば何かやりたいことが出てくるものだということは言えそうですね。
「はい、息子たちは2人とも非常に要領が悪く、融通がきかないタイプです。でも、要領が悪いからこそ考えて考えて、自分の決めたことならばまっとうできるんですね。もし、お子さんに自主性がないと悩んでるお母さまがいらしたら、きっとそれ以上悩まずに待っていていいのだと思います。いっそそのまま放っておくくらいでいい。いずれやりたいものが出てくるまでは、親にはできることがないんです」
忙しい習いごとだからこそ、子どもは先輩の姿を見ながら時間の使い方を学んでいく
さて、合唱が「人生の糧となる」さまざまな経験を積める習いごとであることがわかってきました。いっぽうで公演直前には連日レッスンがある習いごと、なかなか始めるにも勇気が必要です。
「これも子どもの適応力を信じていいなと思います。先輩たちを見ていると、受験のときにお休みする子も、そのまま続ける子もいます。今年は休みを取らずに大学受験に成功した子もいました」
自分で時間を計画的に使って成功した、ということですね。
「忙しいからこそ時間の使い方がうまくなり、先輩たちの姿を見て隙間時間に勉強するワザをだんだんと身に着けるようです。中学になったら宿題はこのタイミングでこのくらい集中してこう片づけるんだな、というようなお手本がたくさんいるわけなので、真似してみようと思ってくれて」
なるほど。同じことをフィギュアスケートを習っているご家庭からも聞いたことがあります。みんなでレッスンの合間に一斉に宿題をこなしている、その姿を見て小さなうちから「宿題が出るようになったらこうするのだ」と自然に学んでいると。
「フィギュアも集団でレッスンを受けますよね、これは集団的な習いごとが持っているメリットでしょうね。個人レッスン中心の習いごとだったら、息子はそのような影響を受けてはくれなかったと思います」
もうひとつ気になる話を伺いますが、さきほど家庭の会話にオペラのストーリーの話が出てくるようになったとおっしゃっていました。
「はい、これも我が家にとっては大きな収穫です。音楽を通じて、家族全員がごく自然に西洋文化を学んでいて。バッハの時代にはみんな何を聴いていたのだろう? なんて話から、言語もラテン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語、多言語に歌として触れます」
歌のほうがすっと頭に入ってきますよね。覚えますし、忘れない。
「そうそう。息子が鼻歌でいつも歌っていますから、親もいつの間にかラテン語の歌が歌えてしまう。また、レッスンでは、何を歌っている曲なのかがわからないと気持ちが乗らないので、単語の意味や時代背景、歴史、作曲家のことまでさまざまなことを習います。それも私たちに教えてくれます」
生きた教養が向こうの側から家庭にやってくる。合唱と出会って本当によかった
子どもを習いごとに通わせているだけで、こうした生きた教養が向こうから家庭内に入ってきてくれるというわけですね。
「その通りです。家族でオーケストラやオペラに出かける機会も増えました。私、ピアノは習っていましたが、こんな歳になってはじめてオペラに触れました。どんなお話なのかがついつい気になって子どもと一緒に本を読んだりしています。娯楽でありながら勉強という新しい感覚です」
先日、アキコさんが驚くできごとがあったそうです。お友達の弾くピアノを聴いたタカシくんが、「この曲はモーツアルトっぽいけれど、モーツアルトじゃないんだよね」と言ったそう。曲そのものを知っていたわけではなく、曲想からそう考えたそうですが、調べたところ本当に同時代の別の作曲家だと判明しました。
「私はそこまでわからず、ただかわいらしい曲だなとしか思わなかったので、息子の発言に驚きましたし、正解だとわかってからは音楽的な感受性が育っていることを嬉しく思いました。時代背景を教わりながら感情を移入して音楽に触れると、こういうことまで文化としてわかるようになるのだな、私もこんなふうに習いたかったなって」
いよいよコロナも明けましたから、これからはしばらくストップしていた海外公演も再開されるかもしれませんね。過去にはローマ法王への献歌もあったそうですから、まさに伝統と歴史に触れるこの上ない機会です。
「楽しみですよね。その前に、7月9日(日)19時より、70周年記念公演がサントリーホールで開催予定です。みんなわくわくしながらレッスンをしていますので、よろしければぜひご来場ください」
▶この記事の前編『子どもの習いごと、実は「恐怖感」で決めてない?「一生続けられる趣味」を見つけるためには』
【この習いごとの連絡先は】
東京少年少女合唱隊
■現在募集されているのは
少年72期生 小学1~4年生 男子
少女69期生 小学1~4年生 女子
■面接・レッスン場所
東京少年少女合唱隊スタジオ
東京都新宿区百人町1-15-28
(JR新大久保・大久保駅より徒歩2~3分)
■費用 オーディション料として3000円
■申込受付 東京少年少女合唱隊事務局 TEL 03-3361-0381
【70周年記念コンサート プラチナ・ジュビリー】
2023 年 7 月 9 日 (日 ) 19:00開演 (18:20開場 )
サントリーホール 大ホール
S 席 6,000 円 A 席 5,000 円 B 席 4,000 円 学生席 3,000 円
演目
モーツァルト ミサ・ブレヴィス ニ長調
細川俊夫 歌う木 – 武満 徹へのレクイエム – (1997 年委嘱 )
バルトーク <5 つの合唱曲 > より
リゲティ < 異国にて >
シェーンベルク <3 つのドイツ民謡 > 作品 49 より
マーラー < 若き日の歌 > より ( 女声三声版 )
春の朝 / 夏の交代劇 / 引き裂かれて見捨てられ
< 想いのよすが > / < 私はこの世に捨てられて > ( 混声版 )
細川俊夫 <2 つの日本民謡 > (70 周年記念委嘱作品、 世界初演 )
I. さくら Sakura / II. 五木の子守唄
指揮 常任指揮者 / 芸術監督 長谷川 久恵
桂冠指揮者 長谷川 冴子
合唱 東京少年少女合唱隊 / コンサートコア・ジュニア・カンマーコア・コールス
ピアノ 住江 一郎
オルガン 浅井 美紀
サントリーチケットセンター Tel: 0570-55-0017
チケットぴあ P コード [241089] https://t.pia.jp/
東京少年少女合唱隊 Email: lsot.ticket@gmail.com
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