【Q&A】「知らなかった」熱中症にならないためには水分補給が大事だが、他に大切なことって?

気温がぐんと上がり、熱中症リスクが増加する季節に入りました。

「熱中症は深刻化しており、昨年度は9万人を超える搬送者が出ました。沸騰化している日本で熱中症をなくすのは難しいのですが、せめて重篤な副作用を起こさない状態で済ませるための啓もうをしていく必要があります」

そう語る早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室教授 医師・博士(医学)永島計先生に今年の傾向と対策を聞きました。

前編記事『熱中症「梅雨明け前のこの時期がいちばん危険です」死なないためにできることは【医師に聞く】』に続く後編です。

この夏、いちばん注意喚起したいことは「何がベストか自分でも考えること」

「水をやみくもに飲んでも意味がないと言われているが、その前に、なぜなのかを知ってほしいのです」と永島先生。

 

というのも、ではナトリウムと糖分を含むイオン飲料なら何でもいいかというと、いろいろな状況の中ではファーストチョイスがイオン飲料ではないことも、飲まないといけないことも、どちらもあるのだそう。

 

「言われるままに飲むのではなく、自分で考えて飲んでほしいのです。熱中症がここまで増えていて、いっこうに減らないのはまずい。原因には高齢者が増えてること、例年以上に暑いということもありますが、とにかく水分摂取は基本中の基本です。この場で何を飲むと熱中症を回避できるか考えて飲んでほしいのです」

 

Q・食事から吸収される水分はどのくらい重要?

女性、高齢者が相対的に熱中症比率が高いのは、もともと筋肉量が少なく体内の水が少ないから。

 

元気な人ならごはんを食べて水をこまめに飲んでいればそう熱中症にはなりませんが、たとえば部屋が暑いことに加え、降圧剤や睡眠薬の服薬はリスク要因です。今年は寝ている最中も気をつかわないとなりません。寝ている最中は水分補給ができませんから、寝ている前後で脱水しない工夫が必要です。

 

健康な人でも脱水からのリカバリに時間がかかります。犬は脱水になりかけたらすぐ水を飲みますが、人間は飲まないんです。ある程度の量を飲んでも回復はゆっくりなので、人間は脱水に脆弱。強制的に飲むようにしたほうがいいです。

 

Q・脱水はどのくらいの水分を失うと起きますか?

体重の2%の水分を失うと脱水になります。60㎏だと1.2リットル、ほんのわずかなのです。

 

体重が減るとダイエットに感じますが、人の場合はそれほど筋肉量は短期的に上下しないので、決まったタイミングで体重を計ることである程度脱水を知ることができます。

 

Q・減塩中や、糖尿病の人はどうすれば?

出る汗を基準に考えます。汗もなにもかかなかったら塩も不要。運動するとその分ナトリウムが汗と一緒に出るので入れましょうというのがイオン飲料やOS⁻1で、OS-1は汗もかかないのに飲んでしまうと塩がたまってしまいます。

 

なお、下痢の場合はナトリウムが失われるので、OS-1を使うことで点滴をしなくても脱水の改善が早くなります。

 

Q・水分を補給する際の量は?

ちょこちょこ飲みなさいというのはそれほど正しくありません。まずはコップ半分を、朝7時8時に。その後は1時間に100ml×10回を心がけて。

 

昨今は腎臓の負担が増し、慢性腎障害が増えているので、水は多めに飲んで尿を出しているほうがいいでしょう。ですから、100mlプラスアルファで飲んでください。健康であれば体内に水が満ち足りてるほうがいい。日中は汗をかきやすいので、お昼から3時まで活動の多い人はプラスアルファを飲んでください。指標は難しいですが、トイレにもう1回追加でいくかどうかという量を加えるのがベスト。

 

Q・こういう飲料はNGというのはありますか?

何もないときのOS-1はナトリウム負荷になるためあまりおすすめしません。水は健康なら多く飲んでも2~3時間で排出されますが、ナトリウムは1日以上かけないと出ません。

 

脱水になって水だけ足りなかったら必要な水だけ摂取して残りを吐き出します。心臓に負荷がかかったりすることもあるので。イオン飲料の一部はナトリウムが入っていません、たとえばポカリスウェットなどは入っていません。

 

Q・熱中症予防としてのOS-1は?

予防として飲むのはおすすめしていません。脱水時に適切に使ってください。OS-1は「飲む点滴」なので、一般的な飲み物とは考え方が違います。

 

Q・水分を2リットル飲むといいと言いますが、イオン飲料を2リットルですか?

お水でいいです。お茶もそのままでOK、カフェインは過剰になるかもしれませんが、2リットルはバランスのとれた食事でナトリウムと糖質をとってお水も飲んでの想定です。

 

緑茶だとカフェイン濃度が高い場合は利尿作用が気になります。イオン飲料は片手で持ってずっと飲むような使い方を想定していません。

 

Q・尿の回数、色でも熱中症が判断できますか?

尿は濃く、ニオイが強くなります。酸などを出しているのでアンモニア臭など。

 

水が足りない場合は尿を薄め足りないため、ニオイも蒸発したときに強いのですが、脱水だから特別なものが出ているのではなく、日常に出ている老廃物が希釈できなくなっているだけ。希釈できていないなら脱水が起きています。

 

Q・昔、水飲むとバテやすくなると言われていましたが、真実は?

胃の中の貯留水分は影響があります。でも、急に飲まなければ大丈夫。胃に入ったからといってすぐに小腸に吐き出されるわけではないため、がぶ飲みすると胃にたまりやすく横隔膜が圧迫されやすいので腹痛の元になり得ました。

 

腸管の中でも真水は吸収が悪く、飲むなというよりは「急に飲むな」とという言葉をつけたほうが正確です。口渇にまかせてがぶのみするとばてるかもしれませんが、飲まないほうが間違いなくずっとばてます。

 

Q・脱水にはどういうところで気づけますか?のどが渇く前に水を飲めばいい?

難しい。口渇が出るのはある程度時間がたってからなので、先読みして見ずを飲むのが対策のひとつ。

 

尿の出方も参考になります。朝起きてトイレ行き、それから昼過ぎまで1回も行かないということが仕事をしてるとありますが、そういう現場は脱水します。午前中にトイレに行ったらもう1回くらい行っているのが普通。

 

高齢者ならば皮膚の緊張を見ます。脱水になると皮膚が伸びてハリがなくなります。介護の現場ならば観察するとよいでしょう。健康なら尿量が指標になります。

Q・必要に応じて選択する飲料、どういうときに?

イオン飲料は運動の時間が長かったり、汗をものすごく場合は使ったほうがいいでしょう。10分20分なら不要ですが、継続するようなもの、食事の時間がない場合は使ったほうが。

 

Q・暑さに慣れるためにどういう活動をすればいいか?

暑熱順化には実感がないと思います。暑いところで運動してたらほぼしますが、高齢者はやりすぎると熱中症になります。散歩する人は少し暑くなるところで散歩してください。

 

若い子で部活などスポーツを頑張っている子は、暑熱順化のプログラムがあります。夏になる前に暑い場所で思い切って強めの負かをかけると、目に見えて暑さに強くなります。

 

Q・汗腺が発達しきっていない幼児の熱中症は何に気を付ければ?

体温調節は自律神経機能のひとつで、自律神経の発達は時間がかかり、成長の早い子でも高校生まで続きます。皮膚の血管の発達も含めて案外と時間がかかるのです。

 

運動するのはとてもいいのですが、大人のようにはいきません。環境アセスメントや運動強度はきっちり守るべきです。

 

子どもは見せかけ上汗をたくさんかきますが、汗腺の数は生まれたときに決まっています。うまく働いているのは3分の2くらいで、子どものころの環境によると言われます。あまり過保護に育ててクーラーのところにいると汗腺が働かなくなるので、ほどほどの厚さにさらす必要があります。

 

発達には中学生くらいまでかかり、部位ごとに発達がまばらになります。子どもは頭にすごく汗をかくけれど、頭にかいても他のところにかいていないことがあります。見かけにまどわされないでください。顔が赤くなるのも皮膚血管のコントロールが悪くて顔に血流がいくせいです。若いうちは暑さにさらすほうがいいです。

 

Q・OS⁻1は嘔吐時、イオン飲料は発汗時に使うという認識でいい?

出る水とナトリウムの損失がどれだけあるかで使うものを決めます。嘔吐や下痢のときは何か症状があったうえで腸管吸収が悪い等が発生しますが、そういう症状がなくても脱水が最初からあることも。

 

これらを改善するには今までなら点滴でしたが、時間もかかるし家ではできません。ひどい脱水ならありだけど飲水はそこまでひどくならないために行います。第一選択は一般的なスポーツドリンクでOKです。

 

Q・寝たまま熱中症の防止はどうすればいいか?

寝ている最中にエアコンが切れてしまって親子ともに熱中症というケースの予防は、とっても難しいです。

 

寝てる間に熱中症にならないために水を備蓄することが難しい。まず、暑ければ汗をかくのが人間ですから、お風呂上りにお水を補給してから寝ましょう。高齢者は膀胱容量が小さいから寝ている間にトイレにいくのがイヤだと飲まない傾向がありますが、夜は体温調節が昼に比べて悪いので、同じだけ熱の負かがかかったらリスクが高いのです。

 

動いてない分だけ安心ではありますが、睡眠薬やお酒を飲んでいる場合は特に、クーラーでコントロールできなくなってしまい、夜中に体温があがって熱中症というのはよくあることです。

 

飲酒して寝るのは最悪。アルコールが入たらチェイサーのお水をたっぷり飲んでから寝るようにしてください。高血圧もリスク、血管の調節もしてください。

 

つづき>>>熱中症「梅雨明け前のこの時期がいちばん危険です」死なないためにできることは【医師に聞く】

 

■アイススラリー専用のポカリスエットが登場■

 

ポカリスエット アイススラリー 100g×6袋 1,164円 ~(税込・送料別)/大塚製薬

 

お話/早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室教授 医師・博士(医学)永島計先生

ながしま・けい 1960年生まれ。85年京都府立医科大学医学部医学科卒業、95年同大学大学院医学研究科(生理系)修了。同大学附属病院研修医、米イェール大学医学部ピアス研究所ポスドク研究員などを経て現職。専門は生理学、とくに体温・体液の調節機構の解明。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク