江戸時代「虫歯、歯周病ケア」って、どうしてたの?意外なほど最近まで、歯のケアは贅沢なことだった【NHK大河『べらぼう』】

2025.01.21 LIFE

*TOP画像/重三郎(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」3話(1月19日放送)より(C)NHK

 

「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は江戸時代における「歯磨き」について見ていきましょう。

 

江戸時代には「歯ブラシ」も「歯磨き粉」もあった

「べらぼう」の第2話には当時ヒットした歯磨き粉・嗽石香(そうせきこう)の紹介とともに、うつせみ(小野花梨)らが歯ブラシのような棒を使って歯磨きをしているシーンがありましたね。この時代、歯磨き関連の店が何軒もあり、歯ブラシ歯磨き粉の取り扱いもありました。

 

うつせみ(小野花梨)と松葉屋で働く女児 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」2話(1月12日放送)より(C)NHK

 

この画像では、うつせみらが木の棒のようなものを持っていますが、これは房楊枝(ふさようじ)といいます。房楊枝とは柳や竹、杉などの小枝を18cmほどに切り  、その先端を煮て柔らかくし、木の繊維をほぐしたものです。画像をよく見るとわかるのですが、木の先がつぶれており、房(ふさ)状になっています。なお、房楊枝を最初に使い始めたのは、遊女歌舞伎役者といわれています。

 

本作の第2話では、平賀源内の引き札(広告)で飛ぶように売れた嗽石香(そうせきこう:歯磨き粉)も登場しました。「金に困って出したから効くかどうか分かんない。でも どうか ひとつ助けると思って買ってちょうだい!」という宣伝文句を面白く感じた視聴者も多いはずです。

 

史実においても、源内は嗽石香の宣伝文句をえびすの依頼を受けて手掛け、その宣伝文のうまさが話題となりました。 “歯磨き粉なんてぶっちゃけどれも同じ” “お金が欲しいから売る” “効能のことは知らん”と語りつつも、この歯磨き粉を使うことで歯が白くなり、口の中がさわやかになること、20袋分を一箱に入れて安く売るといった商品の特長をきちんと押さえています。遊び心や面白いことが大好きな江戸っ子たちの心を射止めたのです。

 

江戸っ子たちも「虫歯」や「歯周病」は悩みの種

現代社会ではさまざまなタイプの歯ブラシや歯間ブラシ、歯磨き粉が流通しています。それでも、コンビニよりも多いといわれる歯科診療所はどこも予約がいっぱい…。それだけ、多くの人が歯に関する悩み・不安を抱えているのでしょう。

 

江戸時代には現代の歯ブラシに近いかたちの房楊枝、歯磨き粉がすでに存在しましたが、デンタルケアを十分にできるとはいいがたい状況でした。富裕層を含む多くの人たちが歯の大切さを理解しつつも、虫歯や歯周病に悩んでいました。

 

ちなみに、今の歯ブラシの原型が誕生したのは大正時代です。小林商店(現:ライオン株式会社)が萬歳歯刷子(ばんざいはぶらし)を手掛けました。萬歳歯刷子はブラシの部分は豚の毛、持ち手部分は牛の骨。材料を聞いただけでも“うわあ、高そう”と思いますが、実際のところかなりの高級品でした。

 

江戸時代、虫歯になった際は飲み薬塗り薬が処方されましたが、それでもどうしようもない場合は“抜く”以外に方法はありませんでした。当時、麻酔はありませんから一大事です。

 

現代では、虫歯になったらその部分を削り、詰めものをするのが一般的な治療法であり、飲み薬や塗り薬が処方される話はあまり聞きません。飲み薬や塗り薬にどの程度効果があったのか気になるところですね。

 

本記事では、江戸時代の歯磨き事情をお伝えしました。関連記事では、第三話のストーリーを深堀りします。

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参考資料

安藤優一郎(監修)『春画でわかる江戸の性活』宝島社 2021年

こどもラーニング編集室『みんなが知りたい! 進化する「道具とくらし」図解でわかるモノと生活のうつりかわり』メイツ出版 2024年

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