55歳女性が、クラファンで集めた170万円。物価高を乗り越えて「みんなの居場所」がやっと完成!

2026.03.17 LIFE

日々が飛ぶように過ぎていくなか、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのなかにいるような五里霧中ですが、この時期を人生折り返しの好機と捉え、動き出す人もいます。新シリーズ「50歳から考えるこれからの仕事と暮らし」ではそんなチャレンジャーたちの体験談をご紹介します。

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◾️松本亜樹さん
福岡県糸島市在住の55歳。一般社団法人「あさ・くる」代表理事。61歳の夫、23歳と18歳の娘の4人家族

 

【50歳から考える これからの仕事と暮らし #6 後編】

 

 

“体験”の機会・場を作るのが大人の仕事

「九州北部豪雨」で被災した故郷・福岡県朝倉市で、亜樹さんが力を注いでいるのは、次の3つの柱からなる活動です。

「こども自然スコーレ」

①子どもたちの主体性や好奇心を育む教育プログラム「こども自然スコーレ」

②体験型子ども食堂「こどもキッチン」

トマトを持って、はいチーズ!

③木にふれあう「木育」

火を起こし、キャンプ体験

今年で8年目を迎える「こども自然スコーレ」では、川遊びや生き物観察、里山でのキャンプ、農業体験など、自然の中で五感を使って学ぶ機会を提供します。「子どもキッチン」はただ「食べさせる」ことが目的ではなく、子どもたちが自ら料理をし、一緒に食卓を囲むことに重きを置いています。

スイカやぶどうなどのフルーツを使ってデザート作り

「私が火の起こし方やご飯の炊き方を知っているのは、とくに教えてもらったわけではないけれど、日常の中で大人がやっているのを見たり、一緒にやったりしたから。大人ができることは、『米があればご飯が炊ける』そんな体験が日常の中にある環境を作ること」と亜樹さんは語ります。いずれの活動も、募集を始めるとすぐに定員が埋まる人気ぶり。子どもたちの自立心を育む場として、共感と支持を集めています。

 

 

51歳のときに一般社団法人を立ち上げるも、事業はストップ!

活動開始から5年が経った2022年、亜樹さんの活動は一般社団法人「あさ・くる」として法人化を果たしました。現在は廃校のグランドを活用し、地域の拠点となる「みんなの居場所『までらぽけっと』」を建設中。完成は、2026年6月を予定しています。

「子どもたちが日常的に誰かに相談できたり、困ったときにふらっと立ち寄れるような場所を作りたいんです」と亜樹さん。放課後に子どもが立ち寄れる“サードプレイス”として、子育て中のママがランチを楽しめる場所として、さらには免許を返納した高齢者が手押し車で買い物に来られるような、地域に開かれた空間を目指しています。

 

 

 

「みんなの居場所『までらポケット』」完成イメージ

 

完成披露会

「木のたまごプール」で遊ぶ子どもたち

「建物はすべて木で建てました。中に入るだけで心が落ち着きますし、赤ちゃんの頃から本物の木に触れてほしくて、木のおもちゃや“木のたまごプール”も作ったんですよ」

空間のイメージは、映画『崖の上のポニョ』に登場する保育園。「保育園と高齢者の宅老所が一緒にあるような感じです」と亜樹さんは微笑みます。

「高齢者と子どもを無理に交流させる必要はないと思っていて、同じ空間のどこかで声が聞こえる、気配を感じる——それだけでも十分だと思うんです」

実はこの建設計画は6年前にカンパが集まり、すでに始動しているはずでした。しかし、さまざまな事情からなかなか前に進めず、ようやく今年、動き出したのです。
「ここ2〜3年で建築資材の価格が跳ね上がってしまって、同じ金額でもできることが半分くらいに減ってしまいました。建物は建てられても、外構や備品が揃えられない。そこで、初めてクラウドファンディングに挑戦したんです」

その挑戦は、建築費用の補填だけでなく、地域の人々に活動を知ってもらう大きなPRの機会にもなりました。目標金額120万円に対し、達成率は144%。最終的に170万円以上の支援が集まり、大きな一歩を踏み出すことができました。

 

 

青年海外協力隊での活動が原点に

亜樹さんの思想の原点には、青年海外協力隊での経験があります。
「日本で当たり前にある日常は、世界に出てみたら、当たり前ではなかった」

その実感が、今の活動の出発点となりました。とりわけ心に刻まれたのは、「自分ひとりで成り立つ世界なんてない」ということ。 「人間はみんな、関係性の中で生きている。誰かに育てられて、育っていくもの」と痛感したといいます。

「思ったら3秒後には動き出しているタイプ」と笑う亜樹さん。 「あさ・くる」の活動を軸にしながらも、彼女にはさまざまな別の顔もあります。週に1コマ、大学講師として学生とフィールドワークに出かけたり、小学校で読み聞かせをしたり。さらに、今年は下の娘さんが大学受験を迎え、受験生の母としての役割も果たしていました。

 

 

流れのままに淡々と。やったことが道になる

「地域では『何を言ったか』ではなく、『何をやったか』で判断されます。だから、ただ淡々と、やるべきことを重ねていくだけなんです」

そう語る亜樹さんは、「こうしたい」と道を切り拓こうとするよりも、「流れのままにやっていたら、自然とそうなっていた」ということのほうが多かったと振り返ります。

6年間、建設がストップしてしまうなど、思うように進まない時期もありましたが——

「うまくいかないときは、『今はやるな』というサインなんだと思うようになりました。『なんで?』と悩んだ時期もありましたが、今こうして動き出したことが、いちばんいいタイミングだったんです。自我で押し通そうとしているときは、やっぱりうまくいかないですね」

「何をやろうかと先に考えていたわけではなくて、やってきたことを振り返ってみたら、そこに道ができていた——そんな感覚です。今回のクラウドファンディングも本当に大変でしたが、どんなことでも一度経験すれば、次にやるときには確実にハードルが下がっている。そう思えば、次が楽しくなります」

そう語る亜樹さんの表情には、静かな確信と、安心に満ちた笑みが浮かんでいました。草の根運動的な、市民による地域の再生。小さな力が集まれば、やがて大きな力になることを教えてくれます。

朝倉の里山にて

※画像提供:松本亜樹さん。お子さんたちが映っている画像は、ご本人ならびに保護者の方々に許諾をいただいて掲載しています。 
までらポケット https://maderapocket.jp

 

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■編集部より■

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