娘は全部聞いていた…「父を責め続ける母」を見つめる子どもが教えてくれた真実【妻からのモラハラ】

2026.07.11 LIFE

今回は、謝っても責められ、黙っていても責められる「ダブルバインド」の中で長年苦しみ続けた40代会社員・Yさんのお話、前編 『「太陽のように明るい妻」は、家では夫を焼き尽くす「地獄のモラハラ妻」だった。娘の前でなじられて苦悩する夫がそれでも耐え続けた理由は』 に続く後編です。

 

別れられなかった「いちばんの理由」とは

「こんなに責められて、なぜ別れないのか」そう思う人もいるかもしれません。Yさんが動けなかった最大の理由は、娘の存在でした。離婚したら、娘と離れて暮らすことになるかもしれない。もし娘が妻と二人で暮らすことになり、自分が浴びてきた言葉を、今度は娘が受けるようになったら……。そう考えるたびに、Yさんは「自分が我慢するしかない」と思っていました。

 

自分が家にいれば、盾になれる。妻の機嫌が悪い日は、自分が矢面に立てば、娘には向かわない。「俺が我慢すれば、この子は守れる」そう思いながら、Yさんは今日も家へ帰っていたのです。

 

ある日、妻がいつものように理不尽なことでYさんを責め立てていたときのことです。リビングの隅で、娘がぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、テレビを見ているふりをしていました。

(この子は、聞いていないふりをしているだけなんだ……)娘を守っているつもりだったのに、もう娘は、母親の暴言と責められる父親の姿を、すべて理解していたのです。「娘のために」という言葉は、耐え続ける理由にも、逃げない理由にもなります。けれど同時に、Yさんをこの場所につなぎ止める鎖にもなっていました。

 

守る側の親が心を壊してしまえば、結局、子どもを守ることはできません。そして子どもは、責められる親の姿を、静かに見つめているのです。

 

ある日の「肉じゃが」で明らかになった真実

ある夜、妻は夕食の肉じゃがをひと口食べるなり、箸を置きました。「味が濃すぎる。こんなの食べられない」Yさんが謝っても、妻の言葉は止まりません。「本当に何をやらせてもダメだよね」「どうして普通のこともできないの?」リビングの隅では、娘がぬいぐるみを強く抱きしめ、テレビを見ているふりをしていました。

聞こえていないのではありません。聞こえているからこそ、聞こえないふりをしていたのです。

 

娘を寝かしつけたあと、Yさんはひとりで暗いリビングへ戻りました。テーブルには、妻が残した肉じゃががあります。冷めた肉じゃがをひと口食べてみると、いつもと変わらない味でした。娘も「おいしい」と言って、おかわりをしていました。娘にとっては「いつもの、お父さんの味」だったのです。

 

そのとき、Yさんはようやく気づきました。

妻が責めていたのは、肉じゃがの味ではなかった。何か理由をつけて、自分を否定したかっただけなのだ、と。

 

どれだけ考えても、妻を満足させる答えはありませんでした。最初から、正解など用意されていなかったのです。Yさんはその夜、スマートフォンを開き、妻から言われた言葉を書きとめ始めました。何月何日、夕食の味が濃いと言われた。娘の前で「何をやらせてもダメ」と言われた。謝っても責め続けられた。娘はぬいぐるみを抱きしめ、テレビを見ているふりをしていた。

 

これまでは、嫌なことがあっても翌朝には忘れるようにしていました。自分が我慢すれば家庭を守れると、信じていたからです。しかし、父親が責められ続ける姿を見せることは、娘を守ることにはならないと、気づいてしまったのです。

 

娘はすでに、母親の暴言と、黙って耐える父親の姿に傷ついていました。

妻が求めているのは、ただただYさんを責め、自分の思いどおりに動かすことです。だから、どれほど家事をしても、謝り方を変えても、妻の不満が終わることはありません。最初から正解が存在しないのです。

 

これが、ダブルバインドの怖さです。何を選んでも否定され続けるうちに、「自分のやり方が悪い」「もっと頑張らなければ」と思い込んでしまいます。しかし、足りなかったのはYさんの努力ではありません。相手が責めることをやめない限り、状況は変わらないのです。

 

もう、「見つからない正解」は探さない。

Yさんは今も、妻と同じ家で暮らしています。でも、以前のように「自分が我慢すればいい」とは考えていません。今すぐ離婚届を出すのではなく、親権や監護、住む場所、仕事を続けながら娘を育てる方法を調べ、離婚に向けて動く時期を見極めています。妻の暴言や、娘の前で責められた出来事を、日付や状況とともに記録する。信頼できる専門家へ相談する。住まいや生活費についても調べる。

 

スマートフォンに書き始めたメモは、気持ちを整理するためだけのものではありません。離婚を決断したとき、家庭で何が起きていたのかを示す、大切な記録にもなるのです。Yさんは、何もせず耐えているわけではありません。自分と娘が安心して暮らせる見通しが立ったときに動けるよう、少しずつ準備を進めています。

 

もう、妻を怒らせないための正解は探していません。

Yさんは今、離婚するかどうかで迷っているのではなく、自分と娘を守るため、「動くべきとき」をしずかに見定めているのです。

 

<<前編 『「太陽のように明るい妻」は、家では夫を焼き尽くす「地獄のモラハラ妻」だった。娘の前でなじられて苦悩する夫がそれでも耐え続けた理由は』 

 

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