「性欲がわかない」とウイッグを大量に与えられて…。「お母さん、助けて」乳がんになった妻が、DV夫から逃げるまで
「性欲がわかない」とウイッグを与えられて
夫は治療のつらさには関心を示しませんでしたが、Rさんの髪が抜け始めると、ウィッグだけは何種類も買ってくれました。「髪がないと性欲がわかない」と言うのです。夫にとってウィッグは、Rさんのためのものではありませんでした。ただ自分の欲求を満たすために必要な道具だったのです。
Rさんはついに、高校を中退して以来、一切連絡を取っていなかった実家の母に、泣きながら電話をかけました。「お母さん、ごめんなさい。助けてください」Rさんは、乳がんになったこと、そして夫からモラハラを受けていることを話しました。
電話の向こうで、母は泣きながら言いました。
「どうして今まで一人で抱えていたの。お母さんと暮らそう」
その言葉を聞いた瞬間、Rさんも涙が止まらなくなりました。
自分がどれほど長い間、助けを求めることを諦めていたのか。母の声を聞いて、初めて気づいたのです。母はすぐに、弁護士にも相談してくれました。弁護士からは、夫の言動を日付とともに記録しておくように言われました。
・体調が悪くても、夫婦生活を拒めなかった日。
・夫から届いた威圧的なLINE。
・買い物の出発時刻や帰宅予定時刻を報告した画面。
・スマートフォンを見せるよう迫られたこと。
書きながら、Rさんは何度もフラッシュバックを起こし、倒れそうになりました。文字にすることで、自分が受けてきたことの異常さが、はっきりと見えてきたからです。
そののち、病院の転院手続きを終えて実家へ戻ったRさんは、弁護士を通して夫に離婚を申し出ました。
「お前の面倒を見てやったのに」
「病気のお前を、ここまで支えたのは誰だ」
「俺を見捨てるのか」
夫は、病気のRさんを支えるどころか搾取しつくしてきたことにも、Rさんを支配してきたことにも触れず、すべてをRさんのわがままだと言い続けました。
けれどRさんは、もう自分を責めませんでした。自分の心と体を守るためにも、夫と離婚することが最善だと、心の底から分かってしまっていたからです。
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