「もう無理かもしれない」髪が抜け始めた私…モラハラ夫から逃げる決意をした日
私の髪が抜けはじめ…。そしてついにシェルターへ
やがて、Nさんの体にも異変が現れ始めました。髪が抜け始めたのです。
最初は気のせいだと思っていました。けれど排水口にたまる髪の量が明らかに増えていく。ブラシにも、床にも、目につくようになっていったのです。慢性的なストレス状態が続くと、免疫機能や自律神経のバランスが乱れ、脱毛や倦怠感、消化器症状などとして現れることがあります。Nさんの体は、心が声を出せない代わりに、“体でSOS”を出していたのです。それほど長い間、限界を超えた状態に置かれていたということでした。
ある日、いつものように夫から暴言を浴びせられている最中、Nさんの中でふと、「もう無理かもしれない」という声が聞こえたといいます。「このままここにいたら、自分が壊れてしまう」そんな感覚があったそうです。
実は以前から、Nさんの異変に気づいていた保育園の園長先生が、個人シェルターを紹介してくれていました。そしてついにNさんは、子どもを連れて家を出たのです。シェルター側が弁護士を手配し、夫とのやり取りはすべて代理人を通して行われました。すると夫は、
「離婚は絶対にしない」
「妻を愛してる」
「もう二度と怒らない」
「帰ってきてほしい」
と言い始めたのです。
夫にとって、妻が本当に出ていくことは想定外でした。家のことは妻がやって当然。自分の言うことを聞いていればいい。そう思っていたからこそ、“逃げられる”とは考えていなかったのです。そしてモラハラ夫は、世間体を非常に気にします。「妻に逃げられた夫」になることは、夫のプライドが許さなかったのです。だからこそ、突然態度が変わる。怒鳴っていた人間が、急に、
「愛してる」
「帰ってきてほしい」
と言い始める。
それは反省や後悔ではなく、“自分の立場を守るため”の言葉であることも少なくありません。Nさんは、もうその言葉に揺らぐことはありませんでした。二度と、あの家へ戻ることはなかったのです。その後、Nさんはこう話してくれました。
「少し、体が楽になりました」
「髪も、抜けなくなってきたんです」
そう言って、穏やかに笑うNさん。安心できる環境に身を置いたことで、Nさんの心と体は、少しずつ回復していきました。そして最後に、静かにこう語ってくれました。
「子どものために我慢しなきゃって思っていました。でも、あのままだったら、私は本当に壊れていたと思います」
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