老後資金は1000万?3000万?平均いくら必要なの?
「下流老人」、「老後破産」といった言葉をよく目にするようになった昨今。誰もが老後の行く末に、不安を感じていることでしょう。老後資金はいつまで生きるかによって大きく違ってきますが、自分の寿命が分かる人はいません。そのため、平均年齢を目安に大まかな老後資金を算出することになります。
加えて、配偶者の有無、子ども・孫の有無によっても、老後のライフスタイルが変わってくるので、その点を反映した方がより現実的な数字になっていきます。とはいえ、人生に変動はつきもの。結婚、離婚、死別など、予測不能の事態が勃発します。計算通りにいかない人生のなかで「子どもの有無」に関しては、ある年齢を過ぎた女性はほぼ確定します。
養子で子どもを育てることはできても、日本ではまだレアケース。生殖年齢を過ぎた多くの女性は、子どもと孫がいない生涯を歩むことになります。ある意味、確定事項があれば計画が立てやすくなるというもの。そこで、“おこなしさま人生”をハッピーに生き抜くための「老後資金の算出方法」について取り組みましょう。
平均は「月額15万円」or「22万円」
一般的に老後の生活費は、現役時代の70%といわれています。現在、月に20万円の生活費がかかっていれば、定年後はおよそ14万円ということになります。Vol.14「40代から考える年金不足の乗り切り術」のなかでも取り上げていますが、単身世帯で60歳以上の平均消費支出は月額約15万円、老後夫婦での最低日常生活費の平均額は月額22万円です。
これはあくまでも平均額なので、この金額があれば誰でも満足な暮らしができるという共通額ではありません。月に30万円以上の生活費を使っていた人が、半分以下の15万円の暮らしを送れば充実度はガクンと下がってしまうでしょう。現役時代の収入によって過ごしてきたライフスタイルが異なるため、老後にどんなレベルの生活を送りたいかによっても必要な老後資金は違ってきます。
現在から生活水準を下げても満足な暮らしができるか、それともある程度ゆとりのある暮らしを望むか、自分の老後生活をイメージしてみましょう。総務省「家計調査」(2017年度)による「高齢者の月額家計収支」を参照すると、想像しやすくなります。
【単身世帯】(60歳以上)
支出総額 148,890円
【高齢夫婦世帯】(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみ無職世帯】
支出総額 243,864円
詳細は各ページをご覧ください。現役時代の生活支出額に比べて、保険医療費は高め、食費や被服費は少なめといった高齢世帯ならではの支出傾向がみられます。
ちなみに、高齢夫婦世帯の消費支出総額 243,864円のうち、実収入は213,379円。その内訳は、社会保障給付 194,874円、その他18,505円。月々の不足金が 62,326円で、毎年 747,912円の資産が減っていく計算になります。
65歳女性に必要なのは1億?3000万?どっち?
現在の暮らしより生活費が抑えられそうなら、一般的な指標である現役時代の生活費レベル70%で設定します。平均値を使って、65歳女性が必要な老後資金を算出してみます。
<平均値参照データ>
大学卒45~49才女性の賃金 約387千円(厚生省・賃金構造基本統計調査 平成26年)、65歳女性の平均余命 約24年(厚生省・平成27年簡易生命表)、女性の老齢年金平均月額10万8千円(厚生省・厚生年金保険・国民年金事業の概況 平成26年)
1.現役時代の年収 387万円×生活費レベル 0.7×老後年数 24年=約6,502万円
2.月額年金受給額 10万8千円×年間 12ヶ月×受給年数 24年=約3,110万円
*老後費用として準備する自己資金額 1-2=約3,392万円
この数値は平均データから算出したもので、現役時代の年収、求める生活レベル、居住地域、年金受給額などで異なります。老後の月額支出が15万円で足りるなら、老後年数24年で合計4,320万円になり、年金受給額3,110万円を引くと準備する自己資金額は1,210万円になります。ぜひ、ご自身に照らし合わせて算出してみてください。
「いくらなのか」は自分で算出するしかない
マネーに関する書籍や雑誌をみると、「老後の生活費は3000万円あればいい」、「老後費用は1億円を超える」など数字にバラつきがあり、どれを参考にしたらよいか迷ってしまうことがあります。それは個々に求める生活水準や年収・年金額が異なるため、自分にとっての老後資金は、自分自身でシュミレーションして算出するほかないのです。
生活費の他に、住宅のメンテナンス費、車の買い替え費用、各種税金、冠婚葬祭費などの臨時費用が発生するため、別枠で予備費として計上しておきます。さらに加味しておきたいのが、「物価上昇」。自分の老後資金を計算したところで、毎年1%ずつ物価が上昇すれば、老後に必要な額もおのずと上がってしまいます。
20年以上も物価が変わらないとは考えにくいのですが、それに合わせて給与が順調に上がっていくとは限りません。公的年金は2015年4月から、年金支給額の伸びを物価や賃金などの上昇より低く抑える「マクロ経済スライド」が適用され、将来の公的年金は実質目減り時代に突入したといわれています。
「おこなしさま」ならではの消費スタイルも考慮して
もうひとつ、気をつけたいのが“おこなしさま”の老後生活費は、現役時代に比べて劇的に減らないこと。子どもがいる世帯に比べて、“おこなしさま”は消費スタイルが高めの傾向にあります。長年、そのライフスタイルで過ごしてきたため、生活レベルを一気に落とすのは難しいこと。それから子どもがいない分、病気、介護、認知症、死後の後始末などの不安要素に対処するための準備と費用がいるため、予備費を多めに設定しておいた方がよいでしょう。
自宅で介護してくれる身内がいなければ、介護施設に入る可能性がでてきます。費用が安い公的介護施設に入れればいいのですが、待機期間が長いため「介護付き有料老人ホーム」も選択肢に入ります。その際、毎月支払う費用とは別に、入居金として数百万~数千万円はかかります。
Vol.24・入院時の乗り切り術<身元保証人編>でも触れていますが、病院や施設の保証人問題、死後の葬儀や片付け問題など、頼れる人がいない場合は外部へ依頼する方法があります。こうした老後の困り事をサポート・解決してくれる「生前契約」は、会社によって異なりますが、初期費用や申込金が100万円以上かかるところも少なくありません。ほかに月会費や依頼するたびに利用料や交通費が発生するなど、死後の後始末まで含めると、300~400万円程度は必要になってきます。
子どもや孫のいない“おこなしさま”は「老後生活の不備」を補うためにも、多少の経済的な余裕は確保しておきたいところ。そのため、老後に必要な生活費にプラスアルファーで1,000万円くらい、余裕があれば2,000万円くらい用意しておくと安心です。
「上乗せ額」も考えておいたほうがいい
“おこなしさま”ならではの不安材料は多々ありますが、子どもや孫がいない老後だからこそ、日常生活を充実させたい。できれば、旅行やレジャー、趣味や教養など、シニアになっても自分を高めて充実した時間を過ごしたいですよね。
経済的にゆとりのある老後生活を送るためには、毎月いくらプラスすればよいのでしょうか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(平成25年度)によると、「老後のゆとりのための上乗せ額」は、月額で平均13.4万円。全体では10~15万円が35.2%と最も多く、30万円以上と回答する割合がなんと10.8%もいます。そのなかで「ゆとりのある老後生活を送るつもりはない」を選んだのは、たった1.8%。多くの方が、老後にゆとりのある暮らしを望んでいることがわかります。
毎月の上乗せ額が13.4万円×老後24年だとすると総額3,859万円。ゆとりのある老後生活を目指すことは、かなりハードな道。そこを目指すには、「貯める力」、「増やす力」、「稼ぐ力」、「削減する力」「情報収集力」の5つの力を高まることが大切です。とくに「貯蓄が少ない」、「収入が少ない」、「頼れる人がいない」の3つの『ない』がそろってしまうようなら、なおさらです。
まずは、自分サイズの老後生活費用を算出して、不足分を把握。そこに予備費と希望する上乗せ額を足し、最終目標額を定めることが重要です。老後資金は、シニアライフをハッピーに生き抜くための手段。面倒くさがらず一度計算してみましょう!
老後資金は3千万円か1億円か!?答えは算出方法にポイントがあった!【おこなしさまという生き方 Vol.26】
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