1日270kcalが「自然に減る」⁉ 運動なしで「ジョギング30分」相当を消費する方法【明治大学教授×専門医が解説】
「睡眠延長」だけで1日270kcalが自然に減る
睡眠により、ホルモン分泌と脳の食欲抑制の両方に影響が出ることが背景にあります。ならば睡眠を味方につけない手はありません。
食事、運動については指示を出さず睡眠を延長しただけでカロリー減少
食事制限も運動も、一切しない。ただ「いつもより長く眠る」だけで、1日の摂取カロリーが自然に減っていく。にわかには信じがたいこの事実が、厳密な科学的手法によって確かめられています。
シカゴ大学のタサリらは、習慣的な睡眠が1日6.5時間未満で、BMIが25から30の21歳から40歳の成人80名を対象に、4週間のランダム化比較試験を行いました。
参加者はまず2週間、普段通りの睡眠を続けて基準となるデータを取ります。
その後、睡眠を延ばすグループと、これまで通りの睡眠を続けるグループにランダムに振り分けられ、さらに2週間を過ごしました。
睡眠延長グループが受けたのは、一人ひとりの生活習慣に合わせた睡眠衛生カウンセリングです。
就床時間を8時間半に延ばすことを目標に一度じっくり面談し、1週間後に経過を確認する短い面談を挟んだだけでした。食事や運動については、何ひとつ指示していません。
この研究が優れているのは、摂取カロリーを本人の申告ではなく、二重標識水法という客観的な手法で測定した点です。
食事記録は実際より少なく申告されやすいことが知られていますが、この方法ならその心配がありません。
2週間後、睡眠延長グループは毎晩の睡眠が平均1.2時間延び、摂取カロリーは睡眠を延長しなかったグループより平均270kcal少なくなっていました。
体重70kg前後の人がジョギングを30分ほど続けて消費する量に近い差です。エネルギー消費量そのものには両群で差がなかったので、この差は純粋に食べる量が減ったことによるものです。
体重も2週間で有意に減りました。実際に測定できた対照群との差は0.87kgです。
研究チームは、この1日270kcalという差がもし長期にわたって維持されるなら、計算上は3年で約12kgの体重減少に相当すると述べています。
ただしこれは2週間の結果を引き伸ばした試算であり、実際に3年間追跡して確かめられたわけではありません。
睡眠不足がホルモンと前頭前野を鈍らせて食欲を抑えにくくする
なぜ睡眠が食欲を左右するのでしょうか。ひとつはホルモンです。
別の研究になりますが、健康な男性を対象に就床時間を4時間に制限した実験では、10時間の場合と比べて、食欲を高めるホルモンであるグレリンが28%増え、満腹感を伝えるレプチンが18%減りました。
空腹感は24%、食欲は23%増えています。体が「もっと食べろ」というサインを送り続ける状態になるのです。
もうひとつは脳です。これも別の研究ですが、一晩眠らずに過ごしたあとの脳を調べた実験では、前頭部の評価をつかさどる領域の働きが低下する一方、欲求にかかわる扁桃体の活動が高まっていました。
そしてこのとき、参加者が食べたいと選ぶ食品は高カロリーのものへ偏っていました。ブレーキが緩み、アクセルが踏まれる。そういう状態です。
また、ウォーリック大学医学部のカプッチョらが、小児と成人あわせて63万人以上を対象に30件の研究をまとめたメタ分析があります。
このうち成人のデータでは、睡眠時間が短い人は肥満に該当する割合が高く、オッズ比にしておよそ1.55倍だと報告されました。
短い睡眠と肥満のあいだに一貫した関連があることは、世界各地のデータで確認されています。
ただし研究チーム自身が述べている通り、これらは主に横断研究であり、睡眠不足が肥満の原因だと断定できるところまでは至っていません。
食事管理や運動は、ダイエットの柱として欠かせません。ただ、そこに「睡眠」を加えることで、食欲のコントロールが自然にしやすくなり、努力の効果が増幅されていきます。
頑張りすぎて疲弊する前に、まず「よく眠る」という基盤を整えることが、長く続くダイエットの土台になるはずです。
【今日の1アクション】
今夜の就寝時刻を「15分だけ」早める。スマートフォンに「就寝準備スタート」のリマインダーを今すぐ設定しましょう。
ここまでの記事では、週末に乱れてもやせる人に共通する2つのポイントと、睡眠を延ばすだけで1日270kcalが自然に減るという研究についてご紹介しました。とはいえ、年齢を重ねると「同じことをしているのに結果が出ない」と感じる場面も増えてきます。つづく関連記事では、更年期に体が変わる仕組みと、減らした体重を長く維持できた人たちに共通する習慣についてお伝えします。
つづき>>食べる量は変わっていないのに増える…「更年期太り」に有効なダイエット方法は?リバウンドしない人が続けている「4つのこと」を科学的に解説
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■著者:堀田秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学教授。言語学者(法言語学、心理言語学)。1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了、2008年、同博士課程単位取得退学。2010年、明治大学法学部教授。司法分野におけるコミュニケーションについて、社会言語学、心理言語学、脳科学など多岐にわたる学術分野を駆使した研究を行う。研究以外の活動にも領域を広げており、企業の顧問や芸能事務所の監修、テレビやラジオでワイドショーのレギュラー・コメンテーターなども務める。著書に『科学的に証明された すごい習慣大百科』(SBクリエイティブ)、『考えてはいけないことリスト』(フォレスト出版)、『疲れ切った人のための勉強法』(東洋経済新報社)などがあり、著書累計発行部数は177万部を突破している(2026年8月時点)。
■著者:木島豪(きじま・ごう)
1975年2月21日生まれ。医師(循環器内科専門)。東京都出身。東京医科大学病院での臨床研修を経て、高知・近森会近森病院、東京都健康長寿医療センター、東京医科大学病院八王子医療センターなどで研鑚を積む。東京都練馬区に「東京メディカルクリニック 平和台駅前院」を開設し、内科・循環器内科・皮膚科・小児科・美容医療を提供。「口から入るものが人を健康にする」という信念のもと、食・栄養・予防医療の力で医者いらずの世界を作ることを目指す医師兼ヘルスクリエイター。堀田秀吾氏との共著に『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。フジテレビ『ホンマでっか!?TV』をはじめ情報番組への出演、健康・美容・栄養分野における記事監修など、メディアでの発信活動も本格化。Instagram『ドクターGOの診療所』(@go7237)では、エビデンスに基づいた健康情報や予防医療を発信。無添加大豆プロテインやサプリメントの開発・販売も行う。公式LINE『ドクターGOラボ』では、美容・健康に関する有益情報を定期発信するほか、ドクターGO自身が開発・厳選した「本当に体にいいもの」を紹介。
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