乳がんになる原因は? 症状は? 大人の女性が知っておきたい病気のこと

「私も乳がんのリスクがあるかもしれない……。」 歌舞伎俳優・市川海老蔵さんの妻で、フリーアナウンサー小林麻央さんが乳がんで闘病中という報道を受け、そう感じた女性は少なくないと思います。乳がん検診や人間ドッグを受けようと思ったかたも多いでしょう。乳がんになる原因は? 症状は? 意外とわかっていないものです。だからこそ、ちゃんと知っておいていただきたい「乳がん」のこと。聖路加国際病院ブレストセンター・山内英子先生の『よくわかる最新医学 乳がん』から、大人の女性として知っておいてほしい乳がんの知識をご紹介します。

乳がんの発症数は?

日本での乳がん罹患数は89,400例(国立がん研究センター2015年調べ)あり、女性がかかるがんの部位としては第1位です。50年ほど前は約50人に1人だったのに対し、現在は約12人に1人。30代後半から急激に増え始め、40代後半から50代前半にかけて罹患率が最も高くなっています。ちなみに第2位が大腸がん、第3位が肺がん、以降は胃がん、子宮がんと続きます。

 

罹患数が最も多い乳がんですが、死亡数としては第5位です。この数字から、乳がんはかかる人は多いけれど、命を落とす率は低いがんであることがわかります。乳がんは定期検診を受け、さらに日常的にじぶんで乳房をチェックしていれば早期に発見することができるがんでもあります。そして適切な治療を受ければ、命に影響を及ぼさずにすむケースが多いのです。ちなみに死亡数としては第1位が大腸がんです。

 

乳がん発症リスクが上がる4つのこと

なぜ現代女性の乳がんがこれほどまでに増えているのでしょうか。

乳がんを招く要因といわれているのが、女性ホルモンのひとつであるエストロゲン(卵胞ホルモン)です。このホルモンは乳管の発達や女性生殖器の発達を促すホルモンであり、月経リズムによって量が変化します。近年、エストロゲンが過剰に分泌されたり、長い間エストロゲンにさらされることで乳がんの発症リスクが上昇することがわかってきました。このエストロゲンが関与するものとして、下記の4つが挙げられます。

1 肥満

食生活の欧米化に伴う高脂肪・高タンパク質の食生活はホルモンバランスを崩す原因になります。実はエストロゲンは卵巣だけでなく、皮下脂肪でも作られています。肥満で皮下脂肪が多い人ほどエストロゲンが多く作られるため、肥満も乳がんリスクを上げる原因になります。

2 出産経験の有無、高齢での出産

出産経験がある女性とそうでない女性とでは、後者の方が乳がんを発症する確率が高くなります。妊娠中はエストロゲンの分泌が抑えられるため、出産回数が多いとそれだけエストロゲンの分泌は少なくなるためです。また、初産年齢が低いほど乳がんのリスクは低く、初産年齢が高い女性(30歳以上)では乳がんのリスクが高くなることもいわれています。

3 授乳経験の有無

授乳経験のない女性は授乳経験のある女性と比較して乳がんのリスクは増加します。これも、授乳中にエストロゲンの分泌が抑えられるためです。また、授乳期間が長くなるほど乳がんのリスクが低下します。

4 初潮年齢が早い

エストロゲンが多く分泌されるのは女性が初潮を迎えてからになります。そのため、初潮年齢が早いと生涯においてエストロゲンの影響をより受けると言われています。

そのほか、血縁者に乳がんや卵巣がんの患者が複数いる場合、乳がんになりやすい体質を受け継いでいることがあります。

 

乳がんのセルフチェックポイント

乳がんは比較的、身体の表面に近いところに発生するため、観察したり触れたりすることによって発見できる可能性が高いがんです。セルフチェック(自己検診)のポイントは以下の6つ。

  • 乳房の変形や左右差がないか
  • しこりがないか
  • ひきつれがないか
  • えくぼのようなへこみがないか
  • ただれがないか
  • 出血や異常な分泌物がないか

中でも、わかりそうでわかりにくいのが乳がんの代表的な症状である「しこり」。感触としては、こんにゃくの下に豆を置いて触ったときのような感じに似ていると言われています。お風呂で石けんをつけて片腕を軽くあげ、指で滑らせるように探すとわかりやすいとか。セルフチェックの日は、閉経前の方は乳房がやわらかくなる月経終了後1週間~10日の間に、閉経後の方は一定の日にちを決めて、毎月1回行いましょう。

 

しこりがあればすべて乳がんなの?

しこりがあるからといって、必ずしも乳がんとは限りません。良性の腫瘍の場合もあります。しこりの硬さが月経の周期によって変化がなかったり、乳房にえくぼ状のくぼみがあったりする場合は乳がんの可能性が高いといえます。良性の乳腺症との区別が難しく、発生部位や広がりの程度によって症状が異なり、発見が難しいものもあります。

乳腺に発生する腫瘍(しこり)にはいくつかのものがありますが、ここでは代表的な悪性と良性の腫瘍についてその症状の特徴をご説明します。

 

性質 症状
乳がん 悪性 ・40歳以上に発生しやすい
・月経周期によって変化しない
・しこりが硬く、周辺組織との境は「分かりやすい」と「分かりにくい」ものがある
・早期では痛みはないが、進行すると痛みを生じることがある
乳腺症 良性 ・35~45歳頃に発生しやすい
・月経前に腫れたり、痛むことがある
・シコリは柔らかく、周辺組織との境は「分かりにくい」
線維腺腫 良性 ・25~35歳と比較的若い女性に発生しやすい
・シコリに弾力性があり、よく動く
・痛むことはない

 

セルフチェックによって、少しでも変化や異変に気づいたら、すぐに専門の医療機関(乳腺外科、乳腺科、乳腺内分泌外科などの表示のある病院やクリニック)を受診しましょう。

乳がんは早期発見であれば命に影響を及ぼさずに治療できるものです。すべての大人の女性のかたに、まずは毎月のセルフチェックと年1回の検診をしていただきたい。こうした報道があった一時ではなく、大人の女性にとって当たり前の習慣になることを願っています。

 

乳がん書籍

『よくわかる最新医学シリーズ 乳がん』
著者: 山内英子 著
ISBN:9784072867983
出版年月日:2012/11/16
定価:本体1,300円+税
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