実はおトクに買える?「デパートの外商」はどう付き合うのか、知られざるその裏側
デパートには、「外商(がいしょう)」という上顧客専門の担当者がいることをご存知でしょうか。
高額商品を次々と買うような富裕層に対して、至れり尽くせりのサービスをしているとの噂もあるようです。
今回は、知られざるデパートの「外商」についてのお作法をお伝えします。
デパートの外商とは、御用聞きのようなもの?
日本のデパートは、明治時代に呉服商が始めた陳列式の店舗が始まりと言われています。
その後、呉服商系のデパートのほか、鉄道会社が開業したデパートが誕生しました。
呉服商系のデパートは、伊勢丹、三越、松屋、松坂屋、高島屋など。
電鉄系は、西武、東武、東急、近鉄、阪急などです。
江戸時代の呉服商は、お店で販売するほかに、顧客のもとに出向く販売方法もとっていました。注文を受けた商品や、お勧めの商品を持参して販売する、御用聞きのような存在です。
季節に合わせた新作はもちろん、家族構成を把握して、七五三などのお祝いがあればふさわしい品物を提案してくれます。
そんな商法が、現在の外商に受け継がれ、富裕層向けのサービスとなっています。
呉服商と異なり、デパートでは多種多様な商品を扱っていますから、何か欲しいものがあれば自宅まで来てくれて相談しながらの買物が可能。商品知識は抜群な人ばかりなので、買物も楽しそうですね。
外商の担当者は、顧客の家族構成だけではなく、それぞれの好みや今まで買ったものまで把握しています。自宅でコミュニケーションをとりながらの販売なので、自分だけのためのお勧め商品を提案されます。
たとえば、
・前に買ったワンピースにお似合いのバッグ
・子供の卒業式に着るスーツ
・結婚記念日に贈る指輪
・リビングの壁にピッタリの絵画
などなど。
お勧め上手な外商さんに乗せられて、「お中元の品物選びだけのつもりが、いろいろ合わせて100万円も買っちゃったわ~」なんていう人もいるようです。
外商の担当者は個別に割引枠を持っていて、オトクに買物ができるのも、つい買ってしまうポイントなのかもしれません。
デパートでのマンツーマンでのショッピングもあり
外商が来てくれれば、わざわざデパートに行くこともなく買物ができるのですが、やはりデパートでのショッピングが好き、という顧客もいます。デパート独特の雰囲気は、なんとなく気持ちが上がるものですね。
そんな人のために、デパートでは専用のサロンを用意しているところもあります。
そこではコーヒーなどのドリンクを無料で楽しみながら、買物の相談ができるようになっています。
あるいは、家族がショッピングを楽しんでいる間、サロンでゆっくりくつろぐ、という利用方法も。
売り場をめぐる時には、担当者がマンツーマンでついてきます。ハイブランドのショップで洋服を試着し、「さっきの靴が合うかも…」と言えば別の売り場からササっと持ってきてくれることも。
ブランドをまたいでのショッピングがワンストップでできるのは、まさにデパートならではのサービスです。
外商からは、デパートにないものまで買える?!
さらに、外商の担当者に言えば、デパートで扱っていないものまで買えるということがあります。
家族構成や購入履歴、好みを把握していればこそ、「そろそろ車の買い替え時では?」、「独立するお子さまのために、ちょうどいいマンションは?」などということもあるでしょう。
デパートの系列で、自動車販売や不動産関連企業がなくても対応してくれるようです。
「こんどの車は○○の、△△モデルがいいなぁ」と言っておくと、次にくるときには自動車のディーラーと一緒で、「試乗車もすぐそこにご用意しております」などと言われるわけです。
それは買ってしまうよね、と思うのですが、いかがでしょうか。
他にも、入手困難な限定モデルのバッグや腕時計、店頭に並ばない希少な宝石など、外商の担当者に言っておくと、どうにか入手してくれることが少なくありません。
富裕層の目にしか触れない商品が、数々あるようですね。
外商担当者がつく上顧客になるには?
そんな頼もしい外商担当者、どうすれば付くようになるのでしょうか。
まずは、購入額が一定額以上はあることが条件です。1年に数百万円は買っていただける、という基準がどのデパートにもあるようです。
しかも、そのデパートが発行しているクレジットカードで買うことがポイントです。または、現金で支払う場合もデパートのポイントカード等に記録を残すこと。
ただ現金だけをレジで払っても、どこの誰が買ったか記録に残りません。デパートに行って各階で10万円ずつ買物をして、「今日だけで100万円も使っちゃった!」ということがあっても、それが記録に残らなければ、デパート側が上顧客候補にはしにくいでしょう。
デパートのクレジットカードやポイントカード利用なら、どのくらいの利用頻度、利用金額なのかがわかるため、デパート側からアプローチされることになってきます。
クレジットカードのゴールドカードのインビテーションのようですね。
そのほかには、すでに外商担当者がついている人からの紹介、という場合もあります。
「お友達の○○さんが、最近足を悪くして買物に行けなくて困っているのよ」などということも。実際、外商を利用するのは昔ながらの顧客でシニア世代が多くいます。家に来てくれることが、健康上の理由などから助かる、という人も増えてくるのではないでしょうか。
外商顧客専門の金融サービス
さて、富裕層の希望する商品は、ラグジュアリーな贅沢品ばかりではありません。
お金を持っているがゆえ、資産管理に関する金融サービスにも高い関心があります。
資産管理のセミナーを開催したり、投資信託や株、不動産での資産運用をお手伝いしたり、といった富裕層ビジネスを、外商顧客専門に行うことがあります。
資産をお持ちの方ばかりなので、相続対策にもニーズがあります。外商顧客のみに営業をする、保険の販売を手掛けているデパートも。
実は、百貨店業界は、従来からのビジネスモデルでは今後厳しいと言われています。
インターネット通販が普及し、若い世代ほど「デパートに行くよりAmazonや楽天」という人が増えているからです。
そのため、新しい分野を積極的に開拓するデパートが増えてきているのです。
外商にはトラブルもあり、老親がいる人は注意して
このような背景があるからか、外商関連でのトラブルが報じられることが増えているように感じます。
認知機能が衰えてきた高齢者の自宅にやってきて、高額商品を売り込み、その後息子や娘が気づくというパターン。
判断力が低下している人に対して高額の貴金属や腕時計、ハイブランドの服などを販売し、息子・娘側とデパート側が争うようなトラブルに発展するケースも少なくありません。
離れて暮らす老親がいる人は、時々は訪ねて行って、見慣れない物がないか、不審な領収証などがないかを見ておくといいでしょう。
念のため、クレジットカードや通帳などの管理をどうしているか、確認できるといいですね。
「自分でできる」と拒否されることもありますが、当面の管理はもちろんご自身でやっていただくのですが、「いざという時心配だから」というスタンスで少しずつガードを下げてもらえるようにしたいですね。
間違っても、「自分で管理なんか、もうできるわけないでしょ!」などと言わないようにしたいものです。親子の溝ができてしまい、かえって何も教えてくれなくなってしまいますが、お金持ちほど心配がつのり、やってしまいがちな失敗です。
富裕層には富裕層の悩み、心配があり、お金を使って楽しいことばかりではないようです。
タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FPパートナー
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