「旬の野菜を食べて健康」99%正しい事実にほんの少しだけ潜むワナとは

オトナサローネの読者のみなさん、こんにちは。「予防医療」のスペシャリストで、医師の桐村里紗です。

この連載では、人生100年時代の折り返し地点、50歳になる前にやめたい悪習慣についてお伝えしていきます。

立春を超えて、暦上は春。

春の苦みを食べるとデトックスを促すと言われるものの、しっかり処理しないと気づかずに植物由来の天然毒を食べているかも?

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」#15

「アクは体にいい」というのは本当か?

先日田舎から、フキノトウが届きました。

フキノトウって、なかなか自分で採ることはありませんが、もらうと春を感じて嬉しいものです。

 

ですが、慣れないから持て余してしまいがちで、下処理の仕方がわかりません。

 

「アクも体にいいからそのまま食べちゃえ」という人もいるようですし、実際にインターネットでは、アク抜きをしないで使うレシピなども紹介されています。

 

でも、フキノトウの場合は、しっかりアクを抜かないと植物由来の強い天然毒を食べることになり、結構危険!とヒヤヒヤします。

 

アクの代表的成分は麻薬や抗がん剤にもなるほど強いもの

アクにも種類がありますが、フキノトウに含まれるアクは「植物性アルカロイド」

 

実はこれ、植物が、虫や動物などの外敵から身を守るために身につけた天然毒の一種なのです。

 

様々な植物が様々な種類の植物性アルカロイドを持っています。

 

最も有名な植物性アルカロイドは、コーヒーのカフェイン。それに、ケシの実から採れるモルヒネ、コカの葉から取れるコカインなど。これらは、いずれも中枢神経への作用がありますね。

 

総じて、薬理作用が強く、抗がん剤に応用される種類もあるほどです。

 

子供の好き嫌いはワガママではない?

草食動物は、植物性アルカロイドを含む野生の植物を好んで食べません。

 

そうした野生の植物を人間が食べるようになったのは、長年の知恵によって、品種を改良したり、アク抜きしたりして工夫してきた結果です。

 

子供も、総じてアクの強い食べ物が苦手です。

 

実は、これ、単なるわがままとも言えません。

 

なぜなら、子供はまだ肝臓などの内臓機能が十分ではない為に、植物のアクや色素成分を十分に代謝できない為に、本能的に嫌っている可能性があります。

 

大人になるにつれて、肝機能が完成すると自然にこれらの野菜も食べられるようになるものですが、フキノトウのようにアクの強い食べ物は、大人にとってもそのまま食べると毒になります。

 

妊婦や子供は注意、フキノトウの毒

フキノトウに含まれる植物性アルカロイド(ピロリジジンアルカロイド)は、肝毒性があり、食べ過ぎることで肝機能を障害するものです。

 

キク科やムラサキ科に多く、日本で口にするものとしては、その他に、ツワブキ。また、少量ですが、キク科のアザミなどから採れた蜂蜜にもこの成分が含まれていることがわかっています。

 

海外では、サプリメントやクッキング用のハーブミックスやハーブティなどにも使用されるコンフリーやフキタンポポなどのハーブの一種に含まれており、妊婦が摂取することで催奇形性や中絶作用などがあることが報告されているほどです。

 

あまり知られていませんが、農林水産省も、植物性アルカロイドが多いフキノトウは、妊婦や子供は無理に食べないようにと注意喚起しています。

 

アク抜きは必須の知恵

では、フキノトウを食べるなという訳ではありません。

 

旬が短いために通年で食べる訳ではないですし、伝統の知恵「アク抜き」によって安全に食べることができます。

 

まず、フキノトウの植物性アルカロイドは特に根に多いので、根っこはバッサリと切り落としてしまうこと。

 

植物性アルカロイドは、水に溶ける作用があるので、数分間茹で、茹でた水をしっかりとこぼした上で、半日ほど水にさらします。
こうする事で食べられるようになります。

 

なんだか面倒な気がしますが、茹でて水に晒して放置しておくだけですから、実は大した手間ではありません。

 

決して安全ではない野生の植物を食べられるようにした先人の知恵。

 

現代人の浅知恵で、これをすっ飛ばすとひどい目にあうかも知れません。

 

伝統の食べ方を守り、バランス感覚を持って食べることが大切ですね。

 

【ネオヘルスケアドクターLISAの「50歳になる前にやめる100のこと」、週1回、土曜の夕方に配信!】

文/内科医・認定産業医 桐村里紗

tenrai代表取締役医師。1980年岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。治療よりも予防を重視し、最新の分子整合栄養医学や生命科学、常在細菌学、意識科学、物理学などをもとに、執筆、webメディア、講演活動などで、新しい時代のライフスタイルとヘルスケア情報を発信。著書『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)ほか。

 

 

 

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