日本女性にかけられた「前髪」の呪縛|女のギアチェンジVol.12

日本人が大好きな言葉「カワイイ」

10年くらい前だったと思うが、パティシエの巨匠、ピエールエルメさんとお菓子の発表会で少し話をしたことがあった。

その時の新作のコンセプトは日本語の「カワイイ」。なぜかと聞くと、日本のファンがエルメさんのお菓子を見ては、やたらと「カワイイ~」ばかりを連発するものだから、いったいどんな意味があるんだろうと不思議に思い、調べてみると彼女たちの使う「カワイイ」には、小さく愛らしいものを愛でる、という意味だけでなく、熱望や賞賛の意味も込められているらしいとわかったそうだ。

 

ならば、日本の女子たちが大好きなワード、「カワイイ」をコンセプトにしようということになったという。

 

エルメさんはすごい発見をしたという顔で喜んでいたが、私はそれを聞いて、なんだか恥ずかしくなった。だってなんでもかんでも「カワイイ~」って、はっきりいえば幼稚じゃない。

 

ただ、この日本特有ともいえる独自の幼稚性には、なかなか根深いものがあって、自分はむやみやたらとカワイイ~なんて言わないわよ、という人でも、実は本人が気づかないうちにカワイイ状態に陥ってしまっていることがままあるのだ。

 

その最たる例が「前髪」である。日本の女子の前髪率の高さは、先進国ではおそらく世界一なのではないか。

 

周りをあらためて見てみると、アイドルはもとより政治家まで「前髪女子」のなんと多いことか。ちなみに前髪女子の第一定義は「カワイイ~」ことなのでモードファッション系のハードな前髪は含まれない。

 

前髪女子に思うこと

ではなぜ、何十年ものあいだ女子の前髪は踏襲し続けられるのか。私の担当の美容師さんいわく「男の美容師のせい」だそうだ。

 

男性の美容師は女性客に「男性が好む(自分が好む)髪型(前髪)」を提案するという。そして「今日はちょっとカワイくしましょう」「あっ、こっちのほうがカワイイ」「カワイくなりましたね」と魔法の言葉をかけ、「もっと小顔に見えちゃいます」とトドメをさす。素敵な美容師さんでなくとも、女子は完落ちである。

 

要は多くの日本の男性は幼く可愛らしい女性が好きで、多くの日本の女性はそんなニーズに応えよう、応えたいと思っているというのだ。私はそれが良くないことだと言っているわけではない。

 

ただ女子はそこんところをちゃんと理解した上で「戦略的前髪女子」になったほうがいいと思うのだ。美容師さんに言われるのではなく自分から「狙った相手がいるんで、ガチで前髪キメちゃってもらえますか」と言ってほしいのだ。

 

ちなみに私の担当の美容師さんに「私が前髪作りたいって言ったらどうします?」と聞いたら「作りたいんですか?!幼稚ですよ。絶対とめます!」と拒絶。まあ、白髪の前髪は別の意味でなんか不気味かも、と思ったが私自身は、もともと前髪は好きではない。なんか鬱陶しいのだ。はっきりいって邪魔。前へ進もうとしている私にとって障害物のスダレみたいなもんである。

 

前髪女子よ。風を受けて進め。激しいときも穏やかなときも、風を受けて進め。動かぬ人形のようにたれ下がったままの前髪よりも風になびく髪のほうが何十倍も美しいから。

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