「相手を批判するときの日本語」どうすれば正解?
「君、ちょっと言葉が過ぎはしないか」
もし、目上の人にそう言われたらどう感じますか? そうですね。たしなめている感じから察して、口の利き方がよくないと言われたのが分かりますよね。では「言葉が過ぎる」とはどういう意味でしょう。
「言葉が過ぎる」のOK・NG
度をこして言う。言ってはいけないことを言う。
(広辞苑第六版)
この「言葉が過ぎる」は、この例にもあるように、上の者が下の者に向かって「君は言葉が過ぎる」と諭す時に使う場合と、自分で自分を省みて「申し訳ございません。言葉が過ぎました」と述べる時に使う場合とがあります。
丁寧な言葉のように見えますが、例えば身内全般に使う言葉「申す」のように使えません。「言葉が過ぎる」は、身内であっても上の人には使えないのです。
身内という認識でも、上から下にしか使えない「言葉が過ぎる」
こんな場面を考えてみましょう。
あなたの同じ部署の先輩が、1つのプロジェクトチームを組んでいて、そこにあなたも入っているとします。そして、部署の上司にプロジェクトの進捗状況を説明するミーティングがあり、先輩はそこにあなたを同席させました。
上司の前では先輩もあなたも同じチームですよね。なので、もし、先輩が伝えていることがうまく上司に伝わらない場合、あなたが「○○(先輩の名字)が申し上げているのはこういうことなのです」のように話し、先輩に自分と対等の謙譲語である「申す」を使っても良いのです。
むしろここで尊敬語の「おっしゃる」はNGですよね。あなたが「○○(先輩の名字)がおっしゃっているのはこういうことなのです」のように使ってはいけません。
しかし「言葉が過ぎる」などのように、相手を否定する言葉は、身内でも使いません。
例えば同じ例で、先輩が上司に失礼な物の言い方をした時も「申し訳ございません。○○(先輩の名字)の言葉が過ぎまして」とは言えないのです。
逆に、あなたが出しゃばりすぎて、上司に謝罪する場合、先輩が部下のあなたのことをさして「申し訳ございません。○○(あなたの名字)の言葉が過ぎたようです」とは言えるのです。
素敵な日本語は使い方に注意
他にも同じような言葉があります。
例えば、「見当違い」のことを表現するのに、「心得違い」と言いますし、「考えが浅い」ことを「了見が狭い」とも言います。
子どもっぽい言い方とは違い、実に大人の、使い慣れた雰囲気を醸し出せますが、このような言葉は使う時に気をつけなければいけません。
心得違い
先ほどの例と同じように、身内でも目上の人には使わないのです。先輩が上司に対し、「部下が心得違いなことを申してすみません」と言えますが、自分は先輩のことを上司に話す時に「先輩の申していることは心得違いでして……」とは言えません。
了見が狭い
了見が狭いも同じです。考えが浅いという意味ですから、「私の了見が狭かったようです」と自分を落とす時には使えますし、上司が、自分の部下の「考えの浅さ」について「部下の了見が狭くて」とも言えます。ただ、同じ身内の中でも、先輩に関して「先輩の了見が狭くて」とは使わないのです。
このように、明らかに上の者から下の者へ何かを諭す時に使う言葉は、丁寧であるかどうかに関わらず、よほど偉くなってからでないと使えないとみておいた方がよさそうです。たとえ素敵な大人の言い回しだと感じても、身分をわきまえないと、それこそ、「心得違いだ」と言われかねませんね。
ただし、このような言い回しは、部下の為にビシっと注意をする時にはかなり効果的です。
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