
どうなる!? 「子なしハラスメント」と「マタハラ」の根深い問題 【おこなしさまという生き方 Vol.7】
「子なしハラスメント」
2015年から徐々に広まった言葉で、子どものいない人を不快な思いにさせる言動のこと。
それ以前に、妊娠・出産をきっかけに受ける「マタニティ・ハラスメント」が深刻な社会問題としてクローズアップ。政府は「女性が輝く社会づくり」に向けてマタハラ防止の法整備を進め、企業側も措置を講ずる動きが広がりました。
「子どもがいない人にはわからない」!?
このようにマタハラ対策は進展していますが、女性全員が妊娠・出産するわけではない。子育て至上主義に傾きすぎると、全体のバランスが崩れてしまう。その反動ともいうべきか、最近では「子なしハラスメント」の問題にも関心が集まっています。
「子どもはいいよ、絶対に産むべき」
「子どもがいない人は気楽でいいよね」
「子どもがいないから時間に余裕があるでしょ」
「子どもを産まないなんて親がかわいそう」
「子どもが欲しくないのに何で結婚するの?」……など。
言っている方は、自分の価値観や感情を口にしただけで、さほど悪気はなかったりします。それでも「子どもがいない人には分からないよ」の一言がきっかけで、長年の友人と距離をおくようにしたと嘆く女性がいました。また、自身は“おこなしさま”でも子どもが大好きで、幼稚園や学校の先生をやっているのに、ママ達から同じような事を言われ悲しい思いをすることもあるそう。偏見でものを言う人達ばかりではないが、自分の立場や経験で物事を判断してしまうことはあるんです。
同じおこなしさまでも、経緯はさまざま
私自身、「産まなかったことを悔やむより、“おこなしさま人生”を楽しもう!」と、子どもがいないことをプラスに変換しようとするタイプ。ですが、今まで50人以上の「子どもを持たない女性の本音」を聞いてみると、その思いや葛藤、傷の深さの違いに、同じ立場の“おこなしさま”でありながらショックを受けたほどでした。
一口に「子どもがいない女性」といっても、初めから子どもは持たないと決めた「選択型」、気がついたらタイミングを逃していた「見逃し型」、不妊治療などの努力をしたけど授からなかった「断念型」、身体の問題などで産むことができない「覚悟型」、経済的な事情で子どもが持てない「経済不安型」など様々。さらに、独身か既婚かでまた立場は違ってくるし、働いているか専業主婦か、仕事をしていてもパート程度なのか、仕事に生きがいをもっているかで、それぞれの気持ちに段差があります。
子どもがいない人の本音は出しにくい
まだ心に深い傷をもっている女性は「日中外に出たくない」と言う。なぜだか分かりますか? 昼間に外に出ると、子連れのママ達がいるからです。幸せそうにしている親子連れを見るのがすごく辛いと、涙を流しながら語ってくれました。そんな女性に向かって、「子どもはどうするの?早く産まなきゃ」などと言えば、見た目は平静を装っていても心はズタズタ。
難しいのは、子どもがいない人の気持ちが表面化しづらい点。センシティブな問題ゆえ、誰にでも話せることではないし、辛い気持ちを吐き出せる場所もない。子なしハラスメントを受けても本音を隠して、その場を取り繕うように言葉を濁すしかないんです。
言ってくる人たちは自分基準の物差しで見ているので、子どものいない人の気持ちや事情まで配慮できずに発言しがち。さらに国全体で出産賛美されると、大げさにいえば国からも「子なしハラスメント」を受けているような気分になることも。
どうしても生まれてしまう不公平感
さらにもう1つ、育休や子育て支援制度を利用する社員に対して、残る社員にしわ寄せがくる「逆マタハラ」も。代表的例を挙げると、2015年11月に資生堂が実施した、育児中の女性にも平等なシフトやノルマを与える勤務制度改革。「資生堂ショック」とも呼ばれました。子育て支援を優遇したため、抜けたシフトを独身者などの一部社員が穴埋め。勤務の負担が増加したことで不満の声が上がり、制度が変更されることになったのです。
「産まない女」と「産んだ女」
女がゆえに二者に分かれてしまいますが、何も両者で対立しようと思っているわけではありません。産まない側からしても、子育て中に働きやすい環境を整えることは良いことだと思っています。ただ、フォローする側の負担ばかりが増え、配慮がないと不公平さを感じてしまいます。産んだ側も、優遇されていることに負い目を感じ、多少の皮肉を言われても辛抱しているもの。どちらの立場でも意見や主張はあるでしょう。
国としてワーキングマザーの支援ばかりを推し進め、ただ制度を整えただけでは、どこかに歪みが出てしまう。色んな立場の人がいる社会だからこそ、きめ細やかな配慮や「お互いさま」と思える制度が重要になってくるのだと思います。
マタハラ対策の義務化が始まる
そんな中、さらに政府が職場でのマタハラを防ぐための具体策を示した指針案を提示。これは企業にマタハラ対策を義務付ける改正男女雇用機会均等法に基づくもので、2017年1月の法施行に合わせて運用が始まります。この中には、マタハラの加害者に対する懲戒処分を就業規則などに明記することを促す方針で、企業側はさらなる防止策を求められるようになります。
加えて、妊娠や出産した女性の周りで働く人の業務負担が大きくなることもマタハラが起きる要因だとして、周囲の人たちの負担にも配慮するべきだとしています。今のところサポートする側の方は「配慮」の言葉だけで具体的な指針はなく、その対応は各々に委ねられることになります。
お互いが相手の立場で考えること
ドイツの詩人・ゲーテの言葉をご紹介しましょう。『自分を他の人の立場に置けば、我々がしばしば他の人に対して感ずる嫉妬や憎悪はなくなるだろう。また他の人を自分の立場に置いたら、高慢や独りよがりは大いに減ずるだろう』。まさに「子なしハラスメント」と「マタハラ」は、立場の違いから起こり得ることなのです。
以前、ママ達だけの集まりのなかで、世の中には「妊婦さんや子どもを見るだけで涙が出てくる」くらい苦しんでいる女性達がいることを伝えたところ、「子どもがいない友人がいるけど、そこまで深くは考えていなかったかも」、「すでに子どもは1人いるけど、2人目が出来ず悩んでいるので気持ちは分かる」と言ってくれました。
私たち“おこなしさま”も子育てをしながら働く大変さや現状を知った上で、お互いに理解を深め合うことがまずは大事。そして一方に隔たることなく、「さまざまな立場の人々が生きやすく、風通しのいい社会」になるよう、一人一人が働きかけることも大切なことではないでしょうか。
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