性的テンションが違う不倫カップルを見舞う「予定調和の最後」【不倫の精算#35後】

2022.01.28 LOVE

このシリーズの一覧

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

 

その要求は、「彼女なら応えるべきこと」なのか

「それは……しんどいね」

 

Rさんが“そういうこと”にあまり積極的でない話を思い出し、気持ちを想像するとかなりイヤだろうなと感じた。

 

その通り、こちらの相づちを聞いたRさんは

 

「でしょ? 信じられない。

できないからって、そんなものを普通、彼女に求めるもの?

これ、断わってもいいよね?」

 

と、どんどん声を尖らせていった。

 

「もちろん嫌ならはっきり言うべきだと思うよ」

 

「だよね?

できないのは私のせいじゃないし、そんなの自分で何とかしなさいよって感じ。

AVでも何でも見ればいいじゃない」

 

そう続ける向こうで、ライターの着火音がした。

 

「異常でしょ」

 

ふう、と吐く息とともに、言葉にははっきりとした拒絶が感じられた。

 

不満を募らせる既婚男性に感じた“気持ち悪さ”

いわゆる“抜く”行動のためにセクシーな写真や動画を恋人へ要求する、その気持ちはわかる。

だが、欲が少なく行為そのものにも関心が低い恋人ならば。過去に誘いを断られることもあったのならば。そもそも「求めても叶わない可能性」のほうが高いと想像はついただろう。

 

Rさんは男性の欲そのものは否定しないが、解消のために“一方的に使われる“自分が耐えられないのだった。

 

「嫌だって言ったのよ、この間。

そっちのスマホに残るのが嫌だし、そんな気分にもなれないって。

そうしたらね、何て返ってきたと思う?

『俺の気持ちはどうでもいいのか』とか『彼女ならそれくらいしてもいいはず』とか、とにかくもう、気持ち悪くって」

 

Rさんは声を歪めて言った。

 

煙を吐く気配とともに、気持ち悪いのよ、と繰り返すのが聞こえた。

 

拒絶と嫌悪がセットになったとき、人の心はそれまでと正反対に大きく針を振るのだ。

 

「こんなだから嫌われたのよ」それは言ってはいけない言葉だった

「……」

 

どう返せばいいのか、彼女の気持ちはもっともだし、これで終わっても不思議はないなと思っていると、

 

「こんな男だから、奥さんともうまくいかないのよ」

 

小馬鹿にするような響きで出たRさんの言葉に、思わず目が開いた。

 

こちらの意見など待たないように、彼女の怒りは続く。

 

「だってそうでしょ、案外奥さんにも強制とかしていたかもよ?

別居はモラハラが原因って言っていたけど、こういう気持ち悪いところが嫌われる理由かもしれないじゃない」

 

彼女は気づいていない。

 

最初にこの男性との不倫を打ち明けたとき、彼が既婚者であることも、関係についても、彼女は罪悪感を持っていなかった。

離婚しないまま自分と肉体関係を持つ彼を、彼女は一度も否定したことはなかった。

それが、自分には受け入れがたい要求を突きつけられ断わったら不満をぶつけられたことで、「結婚生活をダメにする気持ち悪い男」にまで彼の価値を下げ、貶めているのだ。

 

それは、そんな男と付き合っている自分自身まで蔑むことになる。

 

その身勝手な嫌悪の正体をよく見つめてほしい

「……まあ、うん、別れるのがいいよね」

 

Rさんが口にする嫌悪感や男性への悪口には触れずそれだけ返すと、おそらく戸惑いを察したのであろう、

 

「あ、ごめんね、変なことを言って」

 

と慌てる気配がした。

 

「いや、気持ちはわかるし。

……何であれ、もう続けられないでしょ」

 

そう言うと、一瞬の沈黙の後で「うん、そうね」と低い声が返ってきた。続いて、ふたたびライターに火が灯る音がした。

 

「何か、私も勝手よね、考えてみれば不倫なのに」

 

こちらが“引いた”気配に怒りが萎えたのか、Rさんの声色は冷たさを帯びていた。

 

「……」

 

何も言えない。

 

「そうよね、こんなときだし、もう終わりにするのがマシよね」

 

言い訳のように続ける言葉には、「気持ち悪い」と口にしてしまった相手とこの先も続ける自分を見ればこちらがどう思うか、おそらく気づいた響きがあった。

 

つまり、「身勝手に嫌悪感を持つことは許されないであろう自分」を想像したのだ。

 

「その関係を選んだのは自分」という現実からは逃れられない

「不倫だからね、嫌になったらさっさと切るのがいいと思うよ」

 

彼女は、本当は自分が吐き出した嫌悪感にこそ、同調してほしかっただろう。

だが、彼を貶めることが同時にその関係を選んだ彼女の価値まで下げるのだと気がつけば、そんなことはできないのだ。

 

安易な同調は、慰めではなく後で惨めさを呼ぶこともある。

 

それを知った上でどうするか、その対応しか私はできない。

 

「……」

 

ふう、と大きく息を吐くRさんの沈黙を受けながら、中途半端にぶら下がった「解消されない嫌悪感」への気まずさを感じていた。

 

これが独身者同士の恋愛なら、求められた内容への文句なども言い合えるが、不倫にそんな気軽さはない。

相手を悪く思うとき、不用意に傷つけようとするとき、「その人を選んだ自分」に加えて「後ろめたい関係とわかっていて続ける自分」も顔を出す。

貶めるのであれば「共に自分も」が現実であり、最後は”選択”を迫られるのだ。

 

この話の前編>>>会えない男が送ってきたのは…まさかの「恥ずかしい」要求

 

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