43歳の葛藤。バレなかった不倫は「なかったこと」にできる…?【不倫の精算#43】前編

2022.03.23 LOVE

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後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

 

「夫の不倫が発覚」したとき、長く連れ添った妻はどうするのか

Zさん(43歳)から「引っ越したの」というメッセージをLINEでもらい、何と言葉を送るか迷った末に「お疲れさま」とまず返した。

 

彼女の夫は会社の後輩と不倫しており、夫のスマートフォンの通知でそれを知った彼女はこっそりと証拠を集めて離婚の準備を進め、ふたりの子どもを連れて別居する計画を立てているのは聞いていた。

 

配偶者の不貞行為を知ることは、この上もないショックだと想像する。

そんな人間とともに生活する不毛さを思うと、離婚したくなるのは当然だろう。

LINEのトーク画面を撮影したものを見せられたZさんの夫は、不倫は認めたそうだが離婚については抵抗したらしく、先に別居となった。

 

慰謝料を求めると「この人に迷惑をかけたくない」と不倫相手の女性をかばったことを、

 

「こんな男にいっさいの愛情はなくなったわ」

 

と怒りの交じる低い声で口にする彼女の行動は早かった。

 

お互いに正社員でしっかりした収入があり、Zさんの実家が同じ市内にあったのも、別居しやすい環境だったと思う。

 

まだ小学生の子どもたちは、父親と離れて暮らすことに最初は寂しさを訴えていたが、Zさんは「お父さんは悪いことをしたの」と話し、生まれたときから仲のいい実家の両親とこれからはもっと遊べると説得したそうだった。

 

ご両親は不倫の証拠を見て「パニックになっていた」そうだが、子どもたちを連れて別居したいという娘を受け入れてくれた。

 

そんな経緯をLINEや電話で聞いていたが、半年ほど前から連絡は途絶えており、どうなったのか気にはかけていた。

 

久しぶりの報告が別居の完了であることに、よかったと思うと同時にどんな修羅場があったのか、そこを伏せる彼女の気持ちを考えた。

 

「いま、電話しても大丈夫?」

 

そんな言葉がトーク画面に飛んできて、すぐにイヤホンのケースを手にした。

 

だが、彼女もまた「すねに傷持つ」立場だった

「急にごめんね、ありがとう」

 

OKの返信を送るとすぐにかかってきた電話で、Zさんは明るい声をあげた。

 

「無事に引っ越せたんだね、よかった」

 

そう言うと、

 

「大変だったのよ。

あの人がどこに引っ越すのか教えろとしつこくて、実家に住むってずっと嘘をついていたのだけどね、子どもたちがうっかり新居のことを話しちゃって。

でも、自分が悪いってわかっているのか引っ越す日を言っても文句は言わなかったわね。

もう契約した後だし、取り消せないでしょ」

 

落ち着いた口調からは夫との生活が完全に終わったことが伝わり、改めて彼女の決意の深さを感じた。

 

それからは引っ越しにかかった費用や今の生活のこと、子どもたちの状態の話になったが、おそらく歯切れの悪い返事になっていたのだろう、会話が途切れて落ちた中途半端な沈黙の後、Zさんが

 

「○○さんとなら、会ってないわよ」

 

と静かな声で言った。

 

「あのまま?」

 

そう尋ねると、

 

「うん、連絡もしていないの。

ちゃんと話していなかったね、気になるよね、ごめん」

 

と、Zさんが軽く息をつくのがわかった。

 

彼女は最後の最後まで、「過去」を隠し通して離婚した

Zさんは、夫の不倫がわかるまで自身が不倫を楽しんでいた。

 

相手は趣味のバトミントンのサークルで知り合った既婚男性で、写真を見せてもらったが年齢に似合わずがっしりした体格に柔和な感じの目元が印象的だったのを覚えている。

 

お互いに既婚であることが仲良くなれる安心感だったはずなのに、「気がつけば好きになっていたの」とZさんは彼に誘われたふたりきりの食事を断らず、サークルのメンバーにも自分の夫にも気取られないよう慎重に親密度を深めていった。

 

あの頃、既婚の彼のクルマで見た夜景の美しさなどをのろけるZさんに「ほどほどにしておきなよ」と言った記憶があるが、「そんなこと言わないでよ」とすぐに笑い飛ばした明るさは、今の彼女には見えない。

 

期間にしてどれくらいだったか、彼女の不倫は相手の配偶者に勘付かれたことであっけなく終わりを迎えていた。

 

そのときにはふたりは月に数回ホテルに行く関係になっており、別れたくないとZさんは言ったそうだが、既婚の彼は「離婚はできないから」と家庭に戻っていった。

 

それでもLINEや電話番号などはお互いにブロックせず残していると聞き、「また戻るかもな」と何となく思っていたが、そうはならなかったようだ。

 

「あれきりよ」

 

イヤホンから流れてくるZさんの声には、さっきまでの弾んだ調子とは反対の、苦い後悔を含むような暗い響きがあった。

 

「うん」

 

彼女の不倫は、夫に知られないまま別居に至っていた。

 

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