耳鳴り、体重増加、頭痛……この症状、本当に更年期なんでしょうか?【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#1
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「質問以前の質問」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室#1】
Q・自分の症状が更年期なのか、それ以外なのか。線引きが知りたいです
いま、少しの体調不良も更年期、と処理されてしまいますが、明確ではなくとも、これは違うとか更年期症状の線引きが知りたいです。
私は44歳の時に、子宮全摘手術を受けました。そこから義母の介護も重なり、精神的な浮き沈み、耳鳴り、不眠症、片頭痛、体重増加、ホットフラッシュなどが始まりました。
現在は手術に携わった諸先生に半年に一回の診察を受け、プレマリン(女性ホルモンの一つ、エストロゲン)を毎朝一錠服用。眠れない時の為の導眠剤を処方して頂いております。食べるのが好きなので、食べ過ぎないよう心がけ、なるべく動くようにしてます。無理をしないことも心がけています。
こうした悩みの相談相手は、担当の婦人科の先生……と言いたいところなのですが、いくら私の辛さ、困難を訴えてもなかなか響かず、適当にあしらわれている感がぬぐえません。
同じ医院に皮膚科があり、そこの先生は長らく携わってくださっており、担当外ですが、聞いてくださっております。書籍はストレス解消で読みますが、それ以外は無いです。
(しおこさん・52歳 更年期症状の度合い/とてもつらく、耐え難いと感じることがある)
A・婦人科と精神科は「運」が左右する部分があります
しおこさん、こんにちは。44歳での大きな手術、お辛かったですね。現在出ている症状のケアもさることながら、「ちょうどよく相談に乗ってくれる医療機関がない」点が大きいお悩みなんだと思います。なので、そこについてお答えしますね。
正直に言ってね、とりわけ婦人科と精神科は「出会いの運」があります。
なぜかというと、精神科領域が苦手な婦人科の先生ならば、どうしてもメンタルの悩みを訴える患者さんに丁寧には対応しないからです。逆に婦人科なのに精神疾患の治療がすごく得意という先生だっています。
ぼくはもともと、時間経過が命取りになる乳がんの治療を手掛けてきました。その立場からすると、更年期障害は手遅れということがないので、どの診療科に行ってもいいよって言ってます。要するに、あんまり難しく考えずに行きたい科に行けばいいです。
皮膚科の先生はしおこさんのお話をよく聞いてくれるんですよね、その先生でもいいです。どうも病院にはかかりにくいよねという場合、調剤薬局やドラッグストアに行くという手もあります。
女性たちが「更年期のカウンセリングを保険適用に」と声をあげるときがきている
どいうのはね、ぶっちゃけ、更年期障害って保険点数が安いから、医師は診察したくないんです。
最近になってこの話はやっとテレビでも大っぴらに語られるようになってきましたが、更年期で受診してちょっとずさんな対応を受けた経験のある人は、極論を言うとすべて保険制度の犠牲者と言えます。
メンタル系の症状は本来、話を聞いてもらうことがいちばん大事なはずなんですが、現在の保険点数設定である限りは医師の側も時間をかけて聞いていられず、結果的に患者も医師もみんながずっといやな思いをします。
だからみんなで声を上げて、たとえば更年期にも保険でカウンセリングを認めてくれ!と言うほうがいいと思う。不妊治療が保険内になったように、みんなの声が大事です。ツイッターやSNSなんかでいっぱい言って、えらい人たちの目につくようにしてくださいね。
いっぽうで、「更年期障害を扱うのが好き」という先生もいろいろな診療科にいらっしゃいます。その先生であるならば、掲げている科は内科でも皮膚科でもどこでもいい。そういう先生をがんばって探し出してください。
手術をするわけではないので、いっそ小児科でもいいんです。実際、ぼくの友達で小児科が長い大阪の医師は、おばあちゃんもお母さんも家族まとめて診察してると言います。診てくれる医師ならだれでもいい、科を選ばなくていい。医療機関の必要すらないんです。薬局だっていいし、最終的には隣のおばさんでもいい。
昔はだいたい近所におせっかいなおばさんがいて、そういう人が自分の更年期の体験談を教えてくれてたんです。だいじょうぶよぉ、時間がたつと自然に身体が慣れていくわよぉ。悩んでないで体動かすほうがいいわよ、走ってきなさいよ、温泉もいいわよなんて言われて、そっか、私大丈夫なのかって思えれば、8割くらいの人はそれだけでかなりラクになってたんです。
でも、現在はそういう「身近にいて話を聞いてくれる経験者」がいないもんだから、みんな内側に抱えてもんもんとしちゃうんです。加えて病院で塩対応されて、みんなしおしおってなっちゃうのね。
電話して「即答したところ」へ行ってください!
さて、しおこさん。近所で「得意な医師」を探す一番の方法は、シンプルですが「電話をかけて聞く」ことです。
近所の通える範囲にある病院にどんどん「更年期障害ぽいんですが、診てくれますか?」と電話してください。5件か10件電話して、いちばん対応がいいところに行けばいいです。受付の対応が横柄でも問題ありません。「うちの先生は更年期をたくさん診てます」って言うところならOKですが、そこで受付が「えっ」って詰まったら診てない病院なのでNG。「先生に聞いてみます」とか言われたらその段階で論外です。
更年期障害ってね、明らかに正解である治療なんてものはないんです。まず、話さえ聞いてくれればいいんだから、どこにいってもいいんです。
病院だって最初から1つに絞らず、半年~1年通って治らなければ変えればいいです。病院なんて変えればいいだけだし、みんな気楽に電話してどんどん聞けばいいんですよ。迷惑かななんて遠慮しなくていい。向こうは慣れてます。
みなさん、がんばって、図太さ、スルーする力をもうちょっとだけ鍛えてくださいね
ぼくのオススメは薬剤師の先生。結構話聞いてくれるんだよ。ドラッグストアでも調剤薬局でも話し上手の人がいるもんだし、薬剤師は国家資格の免許を持ってる薬の専門家なんだから。とりあえず「私更年期障害なんだけど相談のってもらえます?」って聞いてみて、イヤな顔されないところを見つけてそこに通ってください。
イヤな顔されるといちいち傷ついてしまうと思うけれど、聞くだけならタダなんだから、「聞けた分だけトクしたな」って割り切ってください。そのくらい図太くなったほうが、更年期を乗り切りやすくなります。
更年期にメンタルをやられる人はおしなべて繊細なので、みなさんはちょっとだけ頑張って、もっと図太さを鍛えてくださいね。
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お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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