「更年期の薬が効かなくなったのに、処方を変えてもらえません」49歳の訴えに医師が教えた「意外な真実」は?

青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。

日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。

乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。

【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#17

Q だんだんと症状が変わり、これまでの薬が効かなくなりました。でも処方を変えてくれません

先生、こんにちは。毎月一度病院に通っている49歳です。まだ閉経はしていませんが、持病の糖尿病と高血圧のチェックで通っています。主治医である内科医に更年期?と思って気になる症状を話ししたら、ツムラの桂枝茯苓丸を処方してもらえました。昨年の9月から毎食前に服用しています。

でも、だんだんと症状が変わって薬が効かない状態にあります。何かいい方法はありませんか?

内科医の先生には「うちの病院からはこの薬しか出せないから、これでダメな時は婦人科に行ってみて」と言われました。どうすればいいでしょうか?

(おもちさん・49歳 更年期症状の度合い/不調が出ることもあるが、なんとか乗り切れそう)

 

A・「効かなくなった」のではなく、「最初にあった症状が治った」のでは?

おもちさん、こんにちは。持病があるとのこと、症状が少しでも軽減するといいですね。

 

さて、更年期症状は時間が過ぎると「女性ホルモンが減った状態に身体が徐々に慣れる」ため、症状は軽減していきます。

 

ですから、症状が変わるということは、「最初にあった症状が治っている」のだと思います。そう言われてみてどうお感じになりましたか? もしかして医師とは「効いているかどうか」の評価をコミュニケーションしてきていないかもしれませんね。

 

というのも、開業医が桂枝茯苓丸しか処方できないということは仕組み的にないため、おそらく医師は「主訴が変わっている=だんだんと症状が治って薬がいらなくなってる」と診断をつけたのでしょう。「それでも投薬を続けたいなら専門医である婦人科で相談して、背景に何か別の怖い病気が隠れていないかをルールアウトしてくれ」と言いたいのではないでしょうか。保険診療の時間内だとこうした意思疎通の時間を取りにくいため、「言葉足らず」はよく起きる話です。

 

なぜ「更年期症状に薬は効かない」と感じがちなのか。原因は「地層みたいな症状」にある

ぼくの経験での想像ですが、おもちさんのパターンですと「もともとあった症状」はすでに消失してるのだと思います。かといっておもちさんが大げさに言っているわけでもありません。辛さは変わっていないと思います。なぜなら、更年期は一つ不調が治まってもまたぽこぽこと違う不調が出てくるので、何をやってもラクにならない、効いていないと感じがちだからです。

 

更年期は治療しても全部の不調がピタリと止まることはなく、土を掘ったら次の症状が出土してくるみたいにどんどん出てきます。昼間が夕日になって日没というような全体的な変化ならば「夜がきてすっかり治った」というような時系列の変化がわかるのですが、更年期は地層の発掘みたいに下からどんどん症状が出土します。

 

その証拠に、患者さんの不調の訴えを聞きながら「前の症状はよくなっていますか?」と確認すると、ほとんどの場合で「それはよくなってるけど」って言われるんです。少なくとも1つ治っているのにそれを実感できない。これは、上の地層の症状に対処できるようになった結果、下のほうのもっと弱い問題を感じ取れるようになって起きることです。

 

どうでしょうか、ここまで聞いてきて「私もそうかも」と感じた方はいらっしゃいますか? そういう方々に必ずやってほしいことは、治療開始から一定期間たったら「最初の症状は治っているか」を判定し、治っているならば治っていると心から実感することです。たとえばホットフラッシュで更年期を意識した人が漢方を3か月飲んだ場合、「汗はどうなったか」という最初の症状をきちんと評価することが次のよい治療につながります。

 

効いていないかもと勝手に薬をやめると、症状が再び顕在化する可能性もあります

おもちさんの場合、薬は「効いていない」のではなく「効いて症状が治まっているから変える必要がない」のではないでしょうか。変えるとこれまで治まっていた症状が再び出てくる可能性もあります。敢えてそのまま続け、運動やリラクゼーションなど別のケアを「足す」ほうがいいかもしれません。更年期においては、薬は症状を完全に抑えるものではなく、身体が少しでもラクに動くように整えて「余裕」を生み出し、そのスキに運動や食事など他の改善策を行うために用います。時間稼ぎに使うんです。

 

なお、薬は基本は1種類です。2種類飲むとどちらが効いているかがわかりにくいからです。3か月ほど飲んでまったく手ごたえがない場合は変更しますが、何かしらよくなっていることが多いので、変えるとしても1回です。ロキソニンが効かないからボルタレンに変えるというような考えは西洋医学の考えで、トータルに身体を整える漢方ではそのようには考えません。

 

 

▶新見先生の「明るい相談」をイッキに読むならこちらから

▶新見先生に更年期相談をしたい方、こちらからお寄せください

■新見正則医院 院長 新見正則先生

1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。

https://niimimasanori.com/

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク