53歳の更年期「信じられないくらい疲れやすく不安ですが、病院でたらいまわしに」【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#8

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青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。

日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。

乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。

【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#8

Q・あまりに疲れやすく不調連発。でも、婦人科からは精神科を勧められてしまい

ここ数年、あまりに体力、集中力がありません。狭い家なのに、一気に掃除をしたり、買ってきた物をただ片付けたりという、ササッと済ませばすぐに終わることができません。途中で違うことを始めたり、休憩をしたり、ぼーっとしてしまったり、いちいちとても時間がかかります。

 

また、不眠傾向にもあります。なかなか寝付けず、すぐに目が覚め、あまり寝た気がしません。寝ても起きてもダラダラしていて、常にぼーっとしています。ただ、今は専業主婦なので、どうにかこうにか毎日過ごせています。

 

40代半ば頃が今思えば更年期症状のピークだったと思うのですが、不正出血が長期間続いていました。2~3ヶ月の間に出血しないのは3日だけで、その間に「これはきっと本当の生理だな」と言う日が3日くらいあり、5年以上常にナプキンをしていました。当時は耳鳴りやめまいも出て、酷い時は起き上がれませんでしたし、横になっていても、目を閉じていても目が回っている様な日もありました。

 

婦人科を転々としましたが、なぜか更年期だと言われた事はなく、子宮頸がん、体がんの検査等をするのだけど異常は出ません。抑うつ傾向にあるから身体ではなく心の治療を受けなさいと、精神科か心療内科を受診するように勧められたこともありました。

 

私は本当に無知で、更年期障害というのは閉経後に現れる症状だと思い込んでいました。肉体的にも精神的にもつらい毎日で、結局仕事も辞めてしまいました。この先どれくらい更年期と付き合うのか、どういうことが起こりうるのか、その時どういう対処をすれば良いのか、知りたい事はたくさんあります。

 

(ヤスヨさん・53歳 更年期症状の度合い/不調が出ることもあるが、なんとか乗り切れそう)

 

A・40代はホルモン分泌が大混乱しています。その結果不調が出やすい時期

ヤスヨさん、お辛かったですね。そんなに辛いのに、お名前の横に書いてある症状の度合いは「なんとか乗り切れそう」をお選びになっています。がんばりやさんであるお姿がうかがえます。

 

さて、40代半ばの不正出血は、閉経に向けての月経不順だったのだと思います。どなたも閉経の8年くらい前から無排卵の月経の頻度が増えていきます。すると脳の視床下部という部分からは「卵巣は卵をちゃんと出しなさい!」と命令するホルモンがたくさん出ます。卵胞刺激ホルモン(FSH)ですが、でも卵巣はもう卵がないから反応しません。そのため自律神経系が混乱をきたして、おっしゃるようなトラブルが多発していきます。しかし、いずれ閉経ごろに身体が慣れるとこれらの症状は治まっていきます。

 

更年期障害は女性ホルモンの分泌減少を引き金として起こりますが、エストロゲンを補充してもすべてが治るわけではありません。なぜかというと、更年期障害には複数の要因が関連するからです。ホルモンが減少する内分泌的要因のほか、加齢の要因、家族や仕事などの社会環境的要因、そして本人が生真面目などの心理的要因が挙げられます。

 

ちなみにまで、国内で2000人の更年期不定愁訴症候群の治療結果から再診断を行った研究では、5割弱がうつ病やパニック障害など精神系の疾患で、エストロゲン失調性急性障害は3割だったという報告があります(後山尚久・2006)。更年期障害の症状が出ていても、エストロゲン低下が原因ではないことは多々あるのです。

 

そのため、更年期世代の女性が「調子が悪い」といって来院した場合、各科の先生が最初に行うのは「器質的、機能的な他疾患の除外」です。疲れやすいと言っているけれど、実は甲状腺機能低下症ではないか? めまいが出ているけれどメニエル病ではないか? いろいろなお医者さんでその都度検査になったのは、各科がこうした「ホルモンと関係のない疾患ではないか」をまじめに検討した経緯なのですが、問題は「保険診療では納得のいくようなじゅうぶんな説明がされない」ところです。

 

「治療にたどりつけない」ことに対して、女性のみなさんは本当は怒っていいんです

これはね、ずばり、現在の医療費制度の問題点のしわ寄せを、更年期女性がおもむろにくらっているせい。

 

保険点数のつく検査はどの科もいろいろしますし、定期通院で血液検査があればその都度点数が発生するため相談にも乗るのですが、「話を聞く」ことには保険点数がつかないのです。たまたま話をじっくり聞いてくださる先生がいらしたら貴重です、その先生は事実上あなたのためにボランティアで話を聞いてくれているのです。

 

そもそも、ぼくの考えでは、更年期障害を自覚している女性にいちばん必要な治療は、じっくり話を聞くことですが、にもかかわらずこういう制度になっている。これはつまり、国が「更年期女性の愚痴なんかわざわざ医者が聞くほどでもない」って思っているということです。だから、みなさんもっと怒って声をあげて、こんな制度にした政治家は選挙で落とすぞ!と言ってください。

 

でも、わかります。更年期障害の当事者の女性たちには、とてもじゃないがそんな声をあげる元気がないんですよね。ぼくがこうして替わって声をあげますので、みなさん賛同してください。

 

検査をして異常ないと確認できたら、積極的に「他の科を当たる」のもおすすめです

なお、例外が精神科・心療内科です。何分以上話を聞いたら何点と点数がつくため、更年期障害の不定愁訴で精神科や心療内科を選ぶのはあながち間違いではありません。ですが、精神科の先生は婦人がんやら甲状腺やらの診断はしないので、最初からかかると「婦人科の検査はしましたか」と逆のたらいまわしになる可能性も否めません。

 

ヤスヨさんは婦人科を転々となさったそうですが、これは実は患者さんのストレスばかりが高い方法。なぜかというと、婦人科の役割は検査で「婦人系のがんではない」ことをルールアウトすることで、がんではないことが確定したらあとは基本診てくれないからです。かといって婦人科の医師がすべての方のお話を丁寧に聞いていると、こんどは収益面で病院の存続にかかわってしまいます。

 

ですから、うつうつとした気分を抱えている場合、他の疾患がないことを確認したら、次に心療内科に行くことをぼくはおすすめしています。でもやっぱり心療内科は敷居が高いなという場合は、薬局の先生に相談したり、病院ではなく心理相談の窓口を探してカウンセラーにかかってみてはどうでしょう。内科でもいいでしょう。次にどの科に行けばいいか、この地域ならどこがいいか、ご紹介をいただけないかと相談してみてください。特に女性医師の場合、ご自身の経験からHRTに知見をお持ちの場合があります。

 

40代に入ったら「検査結果はなるべく1つの医院に集める」ように意識を

ちなみにまで、婦人科がみてくれるのは子宮体がんと子宮頸がん、卵巣がん。乳がんは乳腺外科に行かないとなりません。特にHRTを考えている人は、乳がんもしっかりと検査をして、画像の記録を残していってください。医療は点ではなく線で診断するため、しこりがあるかないかよりも、そのしこりが過去に比べて大きくなっているかどうかが重要です。40歳になったらやみくもにドクターショッピングを繰り返すのではなく、「どの病院に自分の検査記録を集めていけばいいか」という意識を持って病院にかかるようにしてください。

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お話/新見正則医院 院長 新見正則先生

1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。

https://niimimasanori.com/

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この記事を書いたのは
新見正則医院 院長 新見正則

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