「男性更年期」始まりのサインは意外にも「ベルトの穴」?夫の危険信号の見抜き方とは

タレントのヒロミさんの体験談を機に急速に知られ始めた「男性更年期障害」。男性ホルモンであるテストステロンの低下によって起きる不調で、加齢性腺機能低下症、LOH症候群とも呼ばれます。

 

40代に差し掛かった男性が、病気ではないのに「なんとなく不調」を感じる場合、もしかして男性更年期のトラブルかもしれません。

 

では、具体的にどのような症状がみられるのでしょうか。また、診断と治療はどう進み、私たち女性はどのように関わり支えるべきなのでしょう。男性更年期治療の第一人者である、順天堂大学大学院の堀江重郎教授に伺いました。

 

男性更年期障害はいつ起きるのでしょう? 女性の更年期との違いは?

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――泌尿器科医である堀江先生。順天堂医院泌尿器科に「メンズヘルス外来」を開設、男性専門外来の草分けとなり、現在は日本メンズヘルス医学会理事長にも就かれています。急に知られるようになった「男性更年期」ですが、男性の人生のどの時期に起きるのでしょうか?

女性の更年期障害は閉経前後のおよそ10年間に起きます。卵巣の機能低下に伴って急激に女性ホルモンが減少するのが原因ですが、閉経後は徐々に慣れ、症状も治まっていきます。

 

男性の場合、このような急激な減少は起きません。男性ホルモンのテストステロンは20代が分泌のピークで、中年期以降に穏やかに減少していきます。この減少幅や減少時期の個人差がとても大きいため、男性の場合は早ければ30代から、80代、90代までどの年代でも障害が起きる可能性があります。加齢のほか、肥満、ストレスなどでも加速されると考えられています。

 

このように男性であればいつでも誰でも男性更年期を発症する可能性があるという点が女性の更年期との最大の違いでしょう。また、症状も長く続くことが多く、女性の更年期のように時間がたてば治るというものでもありません。

 

――女性のように、50歳前後だけ気を付けていればいいわけではないのですね。パートナーの様子がおかしいなと感じても、受診につなげるのが大変難しいという声を聞きますが、どういう方が来院しているのでしょうか?

私が担当するメンズヘルス外来を受診する男性には3つのパターンがあります。

 

1つめが、パートナーと一緒に来院するパターン。やる気がでない、睡眠障害、肩や腰が痛い、不安な症状があるなどパートナーが異変に気付き、受診を促したケースです。意外に多いのが会社を休職した男性で、「どうもおかしい」と感じた奥さんと一緒に来院します。休職を契機に医療機関への受診ハードルが下がるのかもしれません。

 

2つめは、うつ病の有病者。心療内科で治療を受けたけれど、あまりよくならなかったパターンです。実際、抑うつだと診断されて投薬治療を受けても、1/3の人はよくなりません。元気になって戻ってくる人は案外いないんです。このように、すでにかかっている医療機関から紹介されて来院する患者さんたちがいます。

 

最後に、メディアを読まれて「もしや」と来院する人が最近増えました。いきいきとものごとに取り組めない、ファッションへの興味も減ってきた、性機能の衰えも感じるなど、自分で気づいて来院するパターンです。自己管理意識が高く、ジム通いなどの運動に積極的に取り組む人も目立ちます。

 

「おかしいな」と感じたとき、どう受診までたどり着けばいいのでしょうか?

――男性は専門外来の敷居を高く感じるのでしょうか?女性もまだまだ、婦人科受診のハードルは高いと感じています。

男性にとっても特有のハードルはあるようです。男性更年期は泌尿器科が診療しますが、泌尿器科では下半身を見せないとならないと誤解している人が多いんです。診察時に下半身を露出するようなことはありません。

 

それ以前に、男性はよほど痛いくて辛い状態でないと病院に行きません。そもそも自分の健康状態を誰かにシェアしません。相当具合が悪くても放っておく人がほとんどですし、かなり辛いと感じていてもせいぜい1割くらいの人しか受診しません。

 

女性の場合、お子さんやご家族をケアする機会が日常にあり、医療機関と心理的な距離が近いのですが、それでも厚労省の最近の調査を見ても更年期症状を持つ女性が全員診察を受けているわけではありません。いわんや男性をやなのです。

 

――では、どうもパートナーの様子がおかしいなと気づいた場合、受診まではどのように導けばよいのでしょう。

大切なポイントが二つあります。まず一つは、褒めること。実際どう思うかは別として、とにかく男性を褒めてください。そして、日ごろから感謝しているからこそ不調があった場合に困るのだ、家族は心配しているのだと伝えることから始めてください。

 

続いて、そういうトラブルは早期に解決したほうがいろんな面でいいと最近はわかっているんだよ、そのまま時間がたつのを待っても解決しないから積極的に治療を進めたほうがいいんだよと伝えてください。基本的に男性はどんな不調も一時的なものだと思っています。

 

要するに「しょうがないな、家族がこれだけ心配するから行ってやるか」という状態を作り出すのです。病院の予約もとってあげて、私が行くから一緒に付いてきて、くらいの感覚でいいと思います。

 

――受診がスムーズになるクリニックの選び方もあるのでしょうか。やはり、名医のいるクリニックですか?

ここからもう一つの大切なポイントですが、男性はひとりひとりが一国一城の主であるため、医者や教師というのは煙たい存在なんです。車で走っているときにパトカーを見かけると無条件でイヤだなと感じるのと同じで、自分にとってマイナスになるかもしれない相手を避けるんです。

 

また、男性は自分より上位の権威者が好きではありませんから、「このお医者さんは名医だから安心よ」という誘導はむしろ逆効果です。そもそも男性は仕事を休むことに拒否反応を示すことが多いため、病院なんてハードルだらけなんです。前々から予定を組んで受診を促してください。

 

医師というのは審判を下して痛めつける人ではなく、男性の口の堅い友人として同行する人なのだという意識をもってもらえるとスムーズです。仮に婦人科医が女性にとっての先輩であるなら、泌尿器科医は男性の友人として寄り添います。では、そもそもどうして男性も更年期になるのか、その仕組みをお話しましょう。

 

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