「漢方薬は本当にダイエットに向くのですか?」漢方薬剤師がそっと答える漢方薬5選
こんにちは、「+kampo(プラス漢方)」を運営する代表漢方薬剤師の笹森有起です。今回はお問合せの多い「漢方で本当に痩せるのか?」をテーマに、漢方薬の特徴からおすすめの漢方薬まで解説していきたいと思います。
さて、昨今は「漢方ダイエット」と SNS などでも話題になっていますので、漢方=ダイエットというイメージも結び付いている方も多いのではないでしょうか。事実、ドラックストアでもダイエットに訴求している漢方薬も多く売られています。
ですが、そもそも漢方薬とは?という部分は意外に知られていないのではないでしょうか。まずは漢方の特徴を理解していただき、本当に漢方薬がダイエットに効果的なのかということを客観的データも取り入れつつ解説しながら、おすすめの漢方薬のご紹介をしていきます。「漢方薬で痩せやすい体質を手に入れたい」という方は、ぜひご覧ください。
あなたは答えられますか? そもそも「漢方」とは何なのか
あなたは漢方薬にどんなイメージを持っていますか?
「中国の薬」「効き目はマイルド?」「葛根湯は知っている」など、漠然としたイメージの方も多いのではと思います。
実は漢方薬は中国のものではなく、飛鳥時代に中国から渡ってきた中国の伝統医学をもとに、日本の風土と日本人の体に合わせて発展し完成した医学、つまり日本の伝統医学なんです。
そんな漢方薬の特徴について解説しましょう。一般的に用いられる西洋薬の特徴と合わせながら理解するとわかりやすいです。
漢方薬:人それぞれの体質や心身の状態などに合わせ、自然治癒力も利用しての治療
西洋薬:病気の原因となっている器官などに合わせ、ピンポイントな治療
それぞれの効き方について、主語が「薬」になっているか「飲んだ人」になっているかという違いをイメージするとわかりやすいです。
漢方薬が症状を治すのではなく、漢方薬で治る
※生薬に含まれる多成分がバランスの乱れている身体と反応し、飲んだ人の自然治癒力を引き出す
西洋薬は薬が症状を抑えている
※例えば痛みの炎症物質を放出する機序に作用など
ですので、漢方薬の効果を最大限に発揮するには、ある程度ご本人の力も必要になってきます。一方、西洋薬はご本人の努力とは大きく関係なく作用するという特徴があります。
※もちろん全てではなく例外もあります。
漢方は「長期的なダイエットにおすすめ」は本当なのか?
前述した通り、漢方薬はその人の体質を改善することで、体の不調を総合的に解決していくという特徴があるため、目的の症状以外に他の不調も改善していくというメリットがあります。
例えば体内の水分循環を改善してむくみを改善するものや、高血圧や便秘解消や肌荒れに役立つもの、そしてストレスによる症状を軽減する効果のあるものなどがあります。
複数の症状が現れる更年期は漢方薬もおすすめ
まず、「適正に痩せると」いうことには基本的にメリットしかありません。糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを下げることはもちろんのこと、実はがんのリスクも肥満と痩せすぎによって上がることがわかっています。
BMI22くらいを目指すことであらゆるリスクをさげ、長期的に健康を維持することが可能であると言えるでしょう。身長160cmの場合、56kgくらいです。
※BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
更年期においては体重の増加以外にも体のさまざまな不調を感じることがあると思います。体のどこかが悪いわけではないが、イライラして家族に対してあたってしまったり、集中力が低下して仕事に影響がでてしまったり、そんなつらい症状が続く状態では心身ともに疲れてしまいますよね。
ホルモンバランスの乱れやすい更年期では、体全体のバランスを調整する漢方薬はおすすめです。代謝低下、太りやすいといった悩みだけでなく、更年期に起こりやすい他の不調の調整も楽になっていきます。
参考までに、更年期の症状として代表的なほてりやのぼせといったホットフラッシュは積極的な減量を6カ月間行うと軽減できるということが、無作為化研究によって示されています。
(参考文献:An Intensive Behavioral Weight Loss Intervention and Hot Flushes in Wome)
それでは次は具体的におすすめの漢方薬をご紹介していきます。
更年期世代のダイエットにおすすめの漢方薬5選
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
ダイエットに使用される漢方薬の中でも、最も有名で代表的なものが「防風通聖散」と呼ばれる漢方薬です。
防風通聖散は、特に「お腹周りに溜め込んでしまった脂肪」に効果があると言われています。代謝をあげて脂肪燃焼を促したり、体の水分循環を改善しむくみや便通を改善します。
消費カロリーより摂取カロリーが上回っている方や、便秘がちの方におすすめの漢方薬です。
お腹周りに脂肪が溜まっている方というイメージが防風通聖散の使用イメージです。
ですのでどちらかというと平均よりも肥満傾向で、すでに細い方に対してはあまり適した漢方薬ではありません。
参考までに防風通聖散の服用で2.2kgの体重減少、内臓脂肪面積の減少が見られたという研究データがあります。
対象者はBMI 25以上もしくは腹囲が85cm以上の男性、90cm以上の女性に対して、防風通聖散エキスを12週間服用
参考:一般用漢方製剤「防風通聖散エキス錠」の内臓脂肪低減効果,新薬と臨牀, 68(6):766-779, 2019
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
防已黄耆湯もダイエットに使用される有名な漢方薬です。
体の水分循環を改善します。筋肉量の少ない方、水太り体型の方、多汗症、下痢傾向で疲れやすくむくみが気になる方におすすめの漢方薬です。
「肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症」などにも効果が期待できます。
体の水分バランスを整える効果が期待できるため、特に多汗症のような汗をかきやすいタイプの人に向いていると言えます。
大柴胡湯(だいさいことう)
大柴胡湯はストレスが多い方のダイエットに向いている漢方薬のひとつです。
大柴胡湯は筋肉質で便秘傾向の方や、わき腹からみぞおちあたりが張って苦しい方、肩こり等を伴う方におすすめの漢方薬です。「肥満や高血圧、肥満に伴う肩こり、頭痛、便秘、神経症」などにも効果が期待できます。特にストレスを感じる方に向いています。
大柴胡湯は肝臓での脂質代謝を改善していくような効果が期待できるとも言われており、更年期太り、ストレスによる肥満などでお悩みの方におすすめです。
参考までに、防已黄耆湯と大柴胡湯には女性ホルモンのバランスの乱れた体を調節することなどにより、更年期女性の肥満症の改善や健康管理に役立つことが期待されています。
実際に、小林製薬と近畿大学の共同研究では防已黄耆湯と大柴胡湯には女性ホルモン調節作用(未承認)があるという結果を発表しています。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桃核承気湯は、血液循環を改善し便通を良くします。イライラをしずめ、気分を落ち着けます。ホルモンのバランスを整える効果も期待でき、血の巡りを良くするため月経時の不調にもおすすめの漢方薬です。
頭痛や腰痛、めまい、のぼせ、など、生理に伴う症状を緩和するのはもちろんのこと、生理周期に合わせて食欲が亢進してしまうという方にもおすすめできます。
桃核承気湯のような漢方薬を使用することで、生理中の食欲が湧いてしまって食べるのを止められないといった、西洋薬ではアプローチが難しい症状に対してもおすすめできます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散は、血の巡りを良くし、ホルモンバランスを整えます。
疲れやすい方、冷えが気になる方、イライラや不安感のある方、肩こりやめまいを感じる方、不眠傾向やのぼせの症状のある方などにおすすめの漢方薬です。
イライラしたり、ストレスが溜まって自律神経が乱れ、食欲が過剰に湧いてしまうという方におすすめです。
「ストレス太り」などに悩んでいるという方は、加味逍遙散のような巡りを整える漢方薬を使用して、自律神経を整えていくことをおすすめいたします。
結論!
ダイエットの基本は摂取量と消費量のバランスです。
漢方薬は自律神経の乱れやホルモンバランスの乱れによって起こる食欲の増加や代謝の低下などをサポートするイメージです。
冒頭でもお話しした漢方薬の特徴の通り、漢方薬は飲んだ人のバランスの乱れを整えるよう作用します。つまり基本的な対策の効果やご自身の努力を効率的に後押ししてくれる道具だと捉えてください。
私が運営する「+kampo」では、一人ひとりに合わせた肥満対策の「原末錠剤」漢方薬と、ゆらぎと美容をサポートする漢方配合エクオール、2つのアイテムを組み合わせた3か月集中ダイエットシステムのご用意があります。薬剤師のカウンセリングサポートも付帯。挫折しがちな更年期世代のダイエットのお手伝いをします。詳しい内容はこちらからご確認ください。
適正体重を維持することは生活習慣病のリスク低下、がんのリスク低下、ホルモンバランスが乱れやすい更年期の症状の改善など様々なメリットがあります。
ぜひみなさん自分の体を大切に、体に負担をかけない長期的な視点を持って取り組んでいきましょう。
続きを読む
スポンサーリンク