「もう私は何の仕事もできないかもしれない」自己肯定感ダダ下がりの私たちはどうすれば?【更年期のホンネ#3】

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更年期症状の1つである「物忘れ・能力低下」。これは単なる老化なのか? それとも減りゆく女性ホルモンのせいなのか? どちらにしても、当事者である更年期世代にはツライことには変わりありません。

そこで、自身もこの問題で悩んだ(現在も進行中⁉)更年期コンビ、オトナサローネ編集長・井一美穂と、美容ライターの藤井優美が、読者からのアンケートとともに、更年期世代の物忘れ・能力低下について語り尽くします。

前編記事『「絶望の忘れっぷり」更年期世代の「物忘れ」「能力低下」乗り切る方法は見つかるのか?』に続く後編です。

【更年期のホンネ】#3後編

記憶力の低下が招く「自己肯定感のものすごい低下」で更年期症状が悪化⁉

井一 私はマルチタスクタイプではなく、どちらかと言えば1点集中型。8時間でもガーッと集中し、原稿何本でもOKという過集中タイプだったんです。しかも、ムダなく効率的に物事を進めるのが得意でした。

 

そんな私が42歳で高齢出産をした直後、物忘れがすごくて。これは生物上、子供を育てていくため、他のことへ集中させないようになっている、というのを聞いたことがあるのでいいのですが、問題はこのときに習い始めた茶道。より自己肯定感を下げるきっかけに。

 

藤井 出産後の物忘れはよく言われていますよね。それと茶道とどう関係が?

 

井一 茶道って立ち振る舞いや作法をカラダに覚えさせていかなければいけないのに、産後の物忘れ脳の状態だから全然覚えられないんです。それでも2年くらい続けたのですが、何回繰り返しても覚えられない。あまりに進歩しないから、自己肯定感がダダ下がりで。そうこうしているうちに、娘が小学校受験を迎え、その準備で通った塾の先生からはダメ出しの連続…。もう何ひとつ自分はできない、と思ったまま更年期に突入しちゃった感じなんです

 

藤井 なんてハードな40代を…。ただでさえ家族問題や仕事の大変さが降りかかってくるうえに、自身の機能低下もヒシヒシと感じ出すときに、さらに追い打ちをかけるようなことをして…。「体調が悪く仕事を休むことから人間関係に不具合が生じた」なんてアンケート回答も見受けられるくらいなんですから。

 

井一 そうなんですよ! もともと産後の物忘れがあまりにも激しかったから、私は更年期による物忘れというより、集中力の低下のほうが顕著で。8時間くらいガーッと集中できていたのが、更年期は3時間集中すると疲れ果てちゃうんです。脳がショートしちゃう。これは更年期のせいではなく、単なる老化なのかしら?

 

藤井 いやいや。アンケートでも「集中力がなくなった。考えがまとまらない。いつも霧がかかったような現実感が希薄な印象」「仕事中の集中力が落ちて、新しいことを覚えられない。脳が全然動いていない感じがした」といった意見がありますから、集中力低下も更年期症状の1つだと思いますよ。

 

 

「そつなくできていた自分」はもはや幻想。じゃあ、どうしたらいい?

藤井 現に私も、集中力が低下して、以前は3時間で仕上げていたものが、1日経っても終わらない、なんてこともザラ。

 

井一 あれ、なんだろうね。ずっとできていたのに。

 

藤井 もう過去の自分は幻想なんです。その幻想にとらわれていると、いつまで経っても「ダメな自分」から抜け出せないから、そろそろ現実を受け入れないと。

 

井一 本当につらい。今の仕事ができないってことは、「ワタシ他に何の取り柄があったっけ?」ってなっちゃいますよね。この機能の低下って、更年期を抜けたら落ち着くのかしら?

 

藤井 老化だから機能が上がることはないのでは? もう私は開き直って、「できたらハッピー。知らないので教えてください」と、いまや新人気分で仕事に臨んでます(笑)。

 

井一 えーっ、何度新人をやればいいんだー。もうイヤだよー。世代的にもう黙る世代なんですかね…。

 

藤井 最近は、年下編集者と一緒になることが多いから、先輩風吹かせないよう下手な口出しも控えるようにしています。

 

井一 そもそも私、うっかりミスをするタイプじゃなかったのに、なんでこんなにうっかりしちゃうんだろう。更年期だからって、脳の働きを落とす必要がないと思うんです。本当に納得いかない!

 

藤井 まあポジティブに考えれば、「これまでがんばってきたのだから、もうそこまでやらなくていいんじゃないの?」と、脳がセーブしているとは考えられませんか? 何のエビデンスもないけれど。

 

井一 体の機能が低下するのだから、脳の出力も落としていこう的な働きはあるかもしれませんね。そう思えば、更年期の物忘れや機能低下も少しだけ明るい気持ちで受け止められそう。

 

 

自身の機能低下を認めたら、その先にあるものは「自愛」

藤井 老化=できていたことができなくなるのを認めるって、これまでの経験もあるし、プライドもあるから、口で言うほど簡単ではありませんよね。でも、それを認めないうちは、「やれる、できる」と自分を鞭打ち、それでもできない自分に傷ついてしまう。

 

だけど、「もうスローダウンしましょう」と認めると、自分に優しくなれると思うんです。このせめぎあいが難しいんですけどね。

 

井一 アンケートの意見を見て思ったのですが、社会問題でもある更年期離職って、もちろん勤め先から「辞めて」と言われたり、契約更新されず泣く泣くという人もいらっしゃいますが、それよりも、できない自分が許せなくて、自ら退職された人のほうが数の上では多そう。基本的にみんな本当に真面目なんですよね。

 

理想を言えば、仕事先にも更年期のツラさが伝えられたり、育休のように「私更年期で体が動かないので少しお休みさせてください」と言えればいいんですけどね。オトナサローネはアフタヌーンエイジプロジェクトというのをやってるんですが、なので、狙いは「具合が悪いと言えて、休める社会に変える」ことです。

 

藤井 もう更年期世代の女性が人口のボリュームゾーンなわけだから、社会もそちらのほうに舵を切ってくれたらいいんだけど。

 

井一 私、自己肯定感が低いので他人にお願いするのが申し訳なくて苦手で、自分で作業を膨大に抱え込みがちだったのですが、今年になり「これはできない、これは無理だ」と、ようやくあきらめることができるようになりました。

 

藤井 ずいぶん時間がかかりましたねー。

 

 

更年期は第2の人生を幸せに過ごすための期間と捉えればポジティブになれる!

藤井 多くの生物は、生殖機能がなくなった時点が人生の終わりとなりますよね。でも、人生100年時代と言われる人間は、閉経を迎えたあとの人生が長い。といっても、そうなったのはたかだかここ60年ほど。と考えると、今更年期を迎えている私たちが、まさに更年期について声を挙げていける最初の世代かもしれません。

 

井一 そう。更年期、そしてアフター更年期を見続けてきた医師の先生方が、この先の豊かな人生のために、更年期の過ごし方を提案してくれるようになってきました。

 

更年期は、何かと心身のツライ状態ばかりをクローズアップしがちですが、この先の人生を決めるスタートラインに立ったと思えば、もう少しポジティブに過ごせるかもしれませんね。

 

次回は、「家族や職場へ更年期症状の伝え方」について対談します。

 

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