更年期世代はどうして「エクオール」を摂っておくべきなの?薬剤師が説明する納得の理由とは

こんにちは、「+kampo(プラス漢方)」を運営する代表漢方薬剤師の笹森有起です。

私たち日本人が普段からよく口にする大豆が、実は更年期によいという話をよく聞きます。

大豆に含まれる大豆イソフラボンが女性ホルモンに似た働きをすると昔から言われていますが、中でも女性ホルモン様にふるまう特定の成分が「エクオール」であることはご存じでしょうか。

とはいえ、ただ大豆製品をとれば誰でもOKというわけではないことも近年の研究でわかってきています。

今日はエクオールについて詳しく説明します。

 

エクオールが私たちにもたらしてくれる「作用」とは?

エクオールは大豆イソフラボンを摂取することで作られます。エクオールは大豆イソフラボンの一種の化合物(ダイゼイン)から腸内細菌によって生成されることがわかっています。

 

つまりエクオールを体の中に増やすには、大豆を多く摂ることではなく、いかに腸内細菌によって大豆イソフラボンをじょうずに生成させるかがポイントになります。

 

この「エクオール」は女性ホルモンの受容体に結合し、女性ホルモンであるエストロゲンのような作用を示します。現在エクオールで効果が期待できる作用として研究データとしてわかっているものは以下の通りです。

 

・女性ホルモンに似た働きをする「エストロゲン様作用」

・エストロゲンが過剰な時にその作用を抑える「抗エストロゲン作用」

・男性ホルモン アンドロゲンの働きを抑える「抗アンドロゲン作用」

・体をさびさせない「抗酸化作用」

参考:更年期と加齢のヘルスケア12(1),128-132,2013

 

作用のポイントとしては、エストロゲンが過剰な時はその作用を抑制し、不足しているときはその作用を補う。ちょうど良いところにバランスをとるという点です。この作用の仕方は漢方の考え方にも似ています。

 

エクオールは腸内で細菌による代謝を受けて作られる

エクオールは、食事により摂取された大豆イソフラボンの1つ「ダイゼイン」が腸内細菌によって代謝されて生成されます。この代謝には「エクオール産生菌」と呼ばれる腸内細菌群が大きく関与しています。

 

このエクオール産生菌が食事から摂った大豆をエクオールに変換してくれることが分かっています。ただし、このエクオール産生菌を腸内に持っていても、エクオール産生菌がしっかり働いてくれないと大豆を食べても大豆イソフラボン(ダイゼイン)のまま吸収され、 エクオールに変換されずに体内に溜まることなく排出されます。

 

つまり大事なポイントはエクオール産生菌の有無ではなく、エクオール産生菌がしっかりと働いているかどうかという点です。

 

どのくらいの人が作れる? エクオールが作れる人の年齢別割合は

日本など大豆をよく食べる国では約2人に1人と言われています。大豆摂取の習慣があまりない欧米では、約3人に1人しかつくれないと言われています。ただ、約2人に1人がエクオールをつくれる日本人ですが、 中高年女性は約5割をキープしていますが、若年女性は約2割程度という研究報告が出てきています。

 

なぜ、世代によって比率が変わるのか詳しいことはまだわかっていませんが、食生活の欧米化による腸内環境の変化が一因として考えられます。

 

「大豆を食べても体調が変わらない」人がいる理由、「作れる人と作れない人の差」

エクオール産生菌が腸内で働いているかどうかがエクオールの産生に明確な違いを生み出すことが知られています。例えば更年期世代の女性で、大豆や豆乳を意識してとったけど、「効果を感じなかった」「いまいちよくわからなかった」という人はもしかしたらエクオールを作れる腸内細菌群がしっかりと働いていなかった可能性があります。ネットで「エクオール チェック」で検索すると4,000円前後でチェックキットが販売されていますから、気になる方は使ってみてください。

 

ただし腸内細菌のバランスはストレスや食生活、健康状態によって変化しやすいため、以前はエクオールが作れたけど、作れない時期があるということもあり得ます。

 

第33回日本女性医学学術集会発表での吉形玲美医師の研究発表によると、エクオール産生菌は97%もの人が保有しているものの、エクオール産生菌がしっかりと働いている=エクオールが作られていた人は22%だったという結果も出ています。

 

この研究発表によると、エクオール産生者では腸内フローラが多様であることが深く関係しています。人間の社会と同じように、腸内細菌も多様性が重要です。以下にエクオールと作れる人と作れない人の特徴をご紹介します。腸内環境に良い生活習慣を送っているかがポイントになります。

 

■エクオールを作れる人の特徴

・大豆、納豆、野菜、きのこ、海藻、穀物、魚、緑茶、多種類の食品を多く摂っている

・運動習慣がある

・十分な睡眠をとっている

 

■エクオールを作れない人の特徴

・喫煙習慣あり

・飲酒習慣あり

・外食の機会が多い

・便秘または排便回数が多い

出典:第33回 日本女性医学学会における研究発表「エクオール産生能と腸内細菌叢および食習慣ならびに生活習慣関連因子についての検討」

 

日本人には昔から味噌、醤油、納豆など大豆を食す習慣がありました

ここ数十年で肉類、チーズなどの乳製品などがメインのいわゆる欧米食を食べる機会が昔と比べて増えるようになりました。この食事の変化が腸内環境を変化させ、エクオールを作れない人の割合を増やしている可能性は否定できません。シワやたるみが気になってきた、更年期の症状が気になる、更年期の症状が出ないように予防していきたいといった方は、ライフスタイルを見直し、昔ながらの食事を意識して腸内環境を整えてみるのもよいでしょう。

 

ただ、前述したように健康状態やストレス、食習慣によって腸内細菌は毎日変化するため、エクオールを作れるという結果が出た人でもエクオールの産生量は日々変化しますし、急に作れなくなることもあります。また、大豆製品を食べ続けなければエクオールは継続的に作れません。さらにエクオールは体内に留まらず、毎日排出されてしまいます。

 

実は日本人のエクオール産生者の約半数は、エクオール3mg摂取相当以下しか産生されていないという研究データもあります。

参考:Ueno,T.et al.:J Functional Foods,2014 in press

 

エクオールの健康効果が示されている研究は基本的に10mg摂取相当のデータですので、先ほどご紹介した検査キットでレベル5以外の人が安定的にエクオールの健康効果を継続的に期待するのであれば、食品から摂取するよりサプリメントで10mg相当を補うことをおすすめいたします。

 

エクオールはどんな人におすすめか

エクオールは食品ですから、基本的に成人であれば性別関係なく摂取していただいて問題ありません。ただし、妊娠中や授乳中の方は摂取を控えるようにしてください。これは安全性を確認したデータがないためです。

 

中でも特におすすめなのはエストロゲンの減少による不調に悩む方です。

 

40代以降のお肌のたるみやシワは、女性ホルモンであるエストロゲンが減少し、肌にしなやかさや弾力を与えるコラーゲンを作る働きが弱まることも原因で起きてきます。他にも、ほてりや発汗、動悸、肥満や骨密度の低下、肩・指・膝などの関節痛、気持ちが落ち込むなどエストロゲンが減少することが要因となる不調はさまざまです。

 

子宮や乳腺、血管、脳、肝臓など多くの器官に関わり健康を支えているのがエストロゲンなのです。

 

ただし、エストロゲンの作用も過剰になるとリスクになります。エクオールの作用が持つ大事なポイントは、エストロゲンの作用が過剰な時にはその作用を抑える「抗エストロゲン作用」も持っているということです。

 

お肌の悩みやホルモンバランスの変動にお悩みの方は、副作用のリスクが少ないので一度試してみることをおすすめします。リスクの低いものは試してみてよかったら続ける。ハードルが低く簡単にできることから色々試していくことが更年期の不調を乗り切る上では大切な考え方です。

 

 

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