梅宮アンナ「育児放棄バッシング」の背景で起きていた「誰も知らない」これだけのこと#2
突然降って湧いた「育児放棄バッシング」。仕事が引き潮のように一気に消えていった
――いいですね。祖父母にたっぷり愛情を注いでもらうと子どもの精神はとっても安定するとも聞きますし。
この頃、私の仕事は絶好調でした。シングルマザーとして娘を育てると決めてから、いただいた仕事はなんでも引き受けるぞ! と覚悟を決めて突っ走ってきましたが、おかげさまで世間の方々や業界の方々に応援していただき、テレビのバラエティ番組やイベントを中心に大変忙しくさせてもらっていたんです。
あるとき、テレビ番組の企画で私の家を公開することになりました。実家ではなく私の部屋の方に来てもらうことにしたのですが、後々これが大変なことになるとは、当時は思いもよりませんでした。
テレビカメラの前で、私はなんの気もなく「娘は実家の方で暮らしているんですよ」と言いました。それが、なぜか「梅宮アンナは育児放棄をしている」「親に子どもを預けて自分は遊び暮らしている」となり、大炎上。
父も父で、プライベートを見せずに神秘的な大スターを演じる、かっこをつけるタイプではなく、なんでもあっけらかんと話してしまうタイプです。マイクを向けられると渋い顔をして「この間もアンナと孫が大げんかをした」なんて言ってしまう始末。内心、離婚したことを苦々しく思っているので「アンナは母親に向いていない」とかも言っちゃうんですよ。もうメディアは大喜びでそこを切り取って報道するんです。
私も私で、なんで育児放棄と言われているかをいまひとつ理解できていなかったので「思春期という難しい時期の子どもと離れて暮らすのも悪くないですよ。けんかして煮詰まってもお互い冷静になれるし。子育てしてるとストレスたまるでしょ」なんて言ってしまう。
「百々果にとってもじいじが父親みたいなものだし、大丈夫」なんて発言するものだから、火に油を注ぐ結果に。私としてはスープの冷めない距離の実家を頼って子育てしているという感覚だったんですけどね。
——2016年のことですよね。私の周囲にも、仕事が不規則なので普段は思い切って子どもを実家に預けて、週末に新幹線に乗って子どもに会いに行くシングル父母たちがいます。遅くなる日のごはんやお風呂は近所の実家にお願いしている人、子どもが祖父母の家で寝てしまったら、自分だけ家に帰るなんて人もいますし。
そうなんですよ。仕事柄、帰る時間も不規則ですし、泊まりがけの仕事もありますから、娘の安全のためにも必然的なスタイルだったと思います。実家を頼って子育てできることは、本当に助かりましたし、恵まれた環境でした。
今だったら、もっと、慎重に、上手に説明できたなとも思いますけれども、当時は、なぜ炎上するのかさっぱりわからなかったんです。
——梅宮家では、百々果さんを含め、誰もこのスタイルに不満を持っていなかったわけですよね?
はい。だって家族で話し合って決めたことですから。
——お父さまのおっしゃる大げんかの内容が気になるのですが。当時は、アンナさんの洋服があふれてしまい、百々果さんのクローゼットにまで服を入れたら百々果さんが怒って取っ組み合いのけんかになった。それが理由でアンナさんは家を出ることになったなんて言われていましたね。
実際そんなこともありましたけれど、それは、ささいなことというか、けんかのきっかけに過ぎないんですよ。
まさか、「携帯依存が過ぎる娘から携帯を取り上げたら、娘が大暴れした」「親に絶対言うべきでない汚い言葉を使って悪態をついてきたから厳しく叱った」「約束を守らず、その場をごまかすために小さなうそをついた。ここは絶対に親として引いちゃいけないと注意したら取っ組み合いのけんかにまで発展した」なんて、思春期真っ盛りの娘に恥をかかせるようなことをメディアに向かってベラベラ話せるわけないじゃないですか。
娘もバレーボールで毎日鍛えていますから、体も気も強いんです。お互い服が破れるほどの取っ組み合いを何度もしましたよ。父が、「やめろー!!!」って叫びながら間に入って止めたりと、大騒ぎです。
私と娘は、実際友人のような親子でしたけれど、でも友人ではない。親に生意気な口をきくとか、約束を守らなかったなどとあれば、厳しく注意してきました。結局、社会に出て恥をかいたり、不利益をこうむるのは彼女ですから。
——二世帯住宅で暮らしている友人が、やはり親子でぶつかった後、子どもに、おじいちゃんやおばあちゃんの家という逃げ場があるというのは、親子ともどもありがたいと言っていました。
本当にそう。私だって両親とは煮詰まりっぱなしでしたからね。でも家族って煮詰まるものですから、緩衝材になってくれる存在があると救われますよね。私と百々果の間の緩衝材には両親がなり、私と両親の間の緩衝材には百々果がなってくれる。もちろん百々香と両親の間に私が入ることも。
あ! あと、私が料理をほとんどしないことも育児放棄と言われたり、大バッシングされる理由でしたね。百々果が「お母さんは料理を作りません」と言ったら、百々果がかわいそうだって言われて。
実家の台所は父の聖域ですし。私も母も、料理はずっと父にお任せ。とはいえ、わが家は私が子どもの頃から週に3回は外食です。私が作るものといえば焼きうどんか、父が絶対作ってくれないハンバーグかカレーライスくらい。
私が料理に向き合い始めたのは、父が亡くなった後のこと。何十冊も残してくれたレシピノートとむきあって、父の夢だった料理本を作る作業を始めてからです。五十の声を聞く手前で、お鍋でごはんを炊いたり、卵焼きを作ったりするようになりました。
そういえば、料理本を作っていたときに、百々果が編集スタッフさんに「お母さんの料理で好きなものは何ですか?」と聞かれて、「焼きうどんとハンバーグ」と答えたんですって。思わず「私がそれしか作れないからじゃないですか?」なんて言ってしまったけど、すごくうれしかった。
『梅宮家の秘伝レシピ』梅宮アンナ・著 1,650円(10%税込)/主婦の友社
梅宮辰夫さんは遺言書を残さず、直筆のレシピ帖を家族に託しました。亡くなる直前まで、黒い分厚いノートにレシピをびっしりと書き込んでいたといいます。レシピ帖の数は20冊以上、およそ2000レシピ。その膨大なレシピ帖の中から、娘の梅宮アンナさんと妻のクラウディアさんが特に思い出深く、特においしかったレシピをセレクト。簡単なのに絶品な「レタス丼」や「マグロの漬け丼」、見た目も美しい「きゅうりだけの冷やし中華」など、梅宮家の秘伝レシピをどうぞ。
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