40代の美に欠かせない3大栄養素は「たんぱく質」と何と何?摂るだけではNGな理由とは
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美容、健康、筋肉のため、積極的にたんぱく質を摂る人が増えました。ところで皆さん、摂った栄養素はきちんと消化吸収できていますか? せっかく栄養たっぷりの食事をしても、それが消化吸収されていないと、ただ老廃物として出されるだけになってしまいます。では、自分は消化吸収できているのかどうかは、いったいどうすれば分かるのでしょうか。そこで、日本一診察時間が長いと言われる皮膚科医師であり、『きれいな肌をつくるなら赤いお肉を食べなさい』の著者でもある柴亜伊子先生に詳しくお話を伺いました。
美しくなりたいなら「たんぱく質」を摂る。その理由は?
編集長・井一(以下、井一):先生はよく「現代の日本人は総じて栄養不足」とおっしゃいます。日本の豊かな食環境を思うと、どちらかというと皆さんきちんと食べていらっしゃる印象があるのですが……。
柴亜伊子先生(以下、柴):栄養の質は、食べた食品の「量」ではなく「内容」で判断します。例えば、小食の人に食事の内容を聞くと、小さい菓子パンを1日に3個だったりします。これだと、食べている量は少なくても糖質はじゅうぶんすぎるくらい摂れていて、反対に健康的な体や美しい肌をつくるのに欠かせないたんぱく質や鉄分、亜鉛などは補えていません。
井一:ご飯とおかず数品を揃えるより、菓子パン単品のほうが手軽で、かつ安くすむので、パンのみですませてしまう気持ち、分かります。
柴:皆さん、ネイルやファッションなど、他にお金をかけたいものがたくさんありますしね。私の患者さんに「もっと食事を大切に、食品を選んで」と話しても、「それだとエンゲル係数が上がっちゃう」と言われることがあります。でも、それで栄養不足になって肌が荒れて、病院やクリニックに通ったら、結局はお金がかかってしまいます。どんなに着飾っても、肌が土気色でパサパサで艶がなかったら、意味がないと思いませんか。
井一:やはり、栄養と美は直結しているのですね。
柴:私たちの体は、たんぱく質でできています。たんぱく質はあらかじめ体に備わっているわけではないので、食べて消化吸収してつくりだします。動物性たんぱく質(肉・魚・卵)を食べて、それをしっかり消化吸収できないと、美容どころか健康のための体づくりもままならなくなります。たんぱく質は、体のあらゆる臓器、部位で必要。不足していると、肌に回している余裕がなくなり、結果として皮膚や髪、爪、などが放置されてボロボロになっていきます。だから、美しくなりたいならたんぱく質を摂る必要があるのです。
加えて、鉄分や亜鉛も、食事で補っていただきたいです。鉄分が不足すると、疲れやすさ、立ちくらみやめまい、肩こり、頭痛などにつながります。鉄分は、現代女性の多くが慢性的に不足しています。亜鉛は、細胞を増やすのに必要な栄養素ですが、需要が多すぎるのに供給が少なすぎる。動物性たんぱく質を食べて補うほかありません。糖質中心の食生活で亜鉛不足になる人もいるんですよ。
日本人女性のほとんどが「慢性的な貧血」だった!?
井一:たしかに、貧血気味で立ちくらみがする女性って多い印象があります。私も慢性的に貧血気味です。
柴:日本人女性は、ほとんどが慢性的な貧血と思って間違いないです。特に月経がある人は。閉経した私でも貧血症状のクマは出ることがあります。よく「ふらつきがあって内科で検査したけれど、貧血じゃないと言われた」とおっしゃる患者さんがいらっしゃいますが、内科や婦人科の一般的な血液検査は隠れ貧血を見つけるためのものではないので、貧血と診断してもらえません。女性は基本的に貧血がベースにあり、「多少は当たり前」という認識で診察されることが多いため、多少の数値では「みんなそうだから」と流されてしまいます。
井一:だとすると、多少の貧血は我慢して生活しても健康に問題はないのでしょうか。
柴:貧血は、赤血球が不足することで起きます。赤血球は酸素を運ぶので、赤血球が足りないということは、いわば「酸欠」状態ということです。酸欠で生活して、問題ないわけがないですよね。
井一:たしかに。体が酸欠で苦しんでいるということですもんね。体内に酸素を増やすためにも、鉄分はもちろん、亜鉛やたんぱく質も摂れる食事を意識したいと思います。
たんぱく質・鉄分・亜鉛のすべてが揃った食品、それが「赤身肉」
井一:たんぱく質、鉄分、亜鉛を効率よく摂るための秘訣はありますか?
柴:「赤身の肉を食べること」、これに尽きます。赤身の肉には、たんぱく質、鉄分、亜鉛のすべてが含まれているので理想的な食べ物と言えます。
井一:目安としてどのくらいの量を食べればいいでしょうか。
柴:人によって不足している栄養素や必要な栄養素は異なるので、一概にはいえませんが、本当に必要な理想量は、1回の食事で手のひら量の肉を2枚、合計約200グラムです。
井一:ふだんあまりお肉を食べない私にとって、1回200グラムは多いと感じますが、レストランのステーキやハンバーグの量は200グラム前後が一般的ですよね。ふだんお肉を食べる人には無理な量ではなさそう。
柴:ステーキなら焼くだけだから調理も簡単で、塩こしょうだけの味付けだけでもおいしくいただけます。健康や美容を意識する人は真面目な方が多く、赤身の肉がいいと聞けばそれだけを毎日食べ続ける人も少なくありませんが、一種類だけを食べ続けると食品アレルギーの原因になりますし、栄養バランスが崩れてしまいます。魚や卵、豆腐などからもたんぱく質・ビタミン・ミネラルは摂れますので、バランスよく食べることを心がけてくださいね。
井一:魚や卵、豆腐を使うとなると、忙しい日や料理をしたくないときは面倒になって、結局パンだけとかになっちゃうんですよね……。
柴:手の込んだ料理にする必要はないですよ。例えば、毎朝具無しの味噌汁を飲むだけでも栄養は補えます。粉末だしと味噌をお湯に溶くだけでも立派な栄養食です。慣れたら、少しずつ具を増やしていけばいい。具だくさんのシチューやスープもいいですね。料理のソースも、凝ったものを作る必要はありません。塩やこしょう、レモンなどをかけるだけ、トマトソースや味噌などで煮込むだけでじゅうぶん。さらに洗った葉野菜を添えれば、もう立派な料理です。
井一:なるほど! 栄養素を摂ることが大事なので、焼いたり温めたりの簡単なものでいいんですね。ちなみに、お総菜や冷凍食品などですませるのはアリですか?
柴:パンやパスタなど単品のみで済ませるよりは、総菜や冷凍食品でも複数のおかずを食べたほうがいいです。最近は添加物が少ないレトルト食品が増えましたので、レトルト食品を活用するのも一手です。
井一:朝・昼・夜の中で、どの時間帯がいちばん栄養を吸収しやすいのでしょうか?
柴:自分がリラックスしている時間がいいと思います。副交感神経が優位になっていて、栄養を取り込みやすくなります。朝は食欲がないという人は、夜にしっかり食べてもいいんです。ただ、寝る直前にたくさんたんぱく質を食べたり、炭水化物をたっぷり食べたり、お菓子やジュースを飲んだりしたために睡眠の質が落ちたり、翌朝の食欲がなくなるのは本末転倒ですよ。
栄養を摂って終わりじゃない。消化吸収するまでがワンセット
柴:意外と認知されていないのが、栄養を摂っても消化して吸収しなければ体に取り込まれないという事実。せっかく肉を200グラム食べても、消化機能が弱くて栄養を吸収できず、うんこだけ作って終わっちゃう人、けっこういるんです。「私は快便だから大丈夫」という人がいますが、快便と消化吸収できているかは別物です。
井一:「快便だけど消化吸収できていない」を見抜く方法はありますか?
柴:お肉をしっかりと食べて快便なのに肌が荒れていたり、体調不良が続くときはうまく消化吸収できていない可能性があります。血液検査をすると、栄養欠損があったり、胃の中にヘリコバクター・ピロリ菌という消化を邪魔する細菌がいたりするんです。
井一:では、そもそも快便ではない人が消化吸収できているかを知る方法はありますか?
柴:快便ではない時点で何かしらの不具合があるのですが、消化吸収力の目安としては、空腹感はあるのに食べる気がしなかったり、いつもの食事の時間なのに食べたくないと思ったり、吐き気がしたりするときは、体がストップをかけています。また、ふだん野菜しか食べない人が突然肉ばかりを食べだすと、胃が肉を消化できる状態になっていないので、消化不良を起こすことがあります。他に、いつまでもお腹に食べ物が残った感じがしたり、次の食事までに消化できていない感じがしたりするときは、少量ずつを数回に分けて食べるなどの工夫をして、消化吸収できる胃に育てていきましょう。
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お話をうかがったのは
柴 亜伊子(しば・あいこ)先生
あいこ皮フ科クリニック院長 皮膚科医。奈良県立医科大学医学部卒業。同大学皮膚科助手を経て、2010年「あいこ皮フ科クリニック」開業。カラダの内側から健康を取り戻す栄養療法を皮膚科・美容皮膚科の治療に取り入れ、オーソモレキュラー実践医療機関で数少ないクリニックに認定されている。
ミッションは「日本の女性を美しく、元気にすること」。著書に『きれいな肌をつくるなら赤いお肉を食べなさい』(青春出版社)。
撮影/森﨑一寿美