【医師が解説】できてしまったシミ・シワ。美容皮膚科でどこまで「なかったこと」にできる⁉
紫外線対策は年中必要!
紫外線対策は真夏だけすればいいと思われるかもしれませんが、実は1年中必要です。秋冬や曇りの日はもちろん、雨の日でも晴天の日の20%くらいは紫外線が出ています。季節や天候に係りなく紫外線対策はしっかりしておいた方がいいでしょう。UVカット機能付きの長袖の洋服や長ズボン、帽子、日傘などで肌が紫外線にさらされるのを物理的に防御し、さらにどうしても紫外線にさらされやすい顔や手の甲、首などは日焼け止めでガードするのが望ましいでしょう。
陽に当たるメリットを上回るデメリット
日光に当たるとビタミンDが生合成されますが、だからといって陽に当たりましょうというのは時代遅れな考え方です。わざわざそのために日光を浴びなくても、私たちは日常生活で十分な紫外線を浴びますし、食品からも摂取することができます。
逆に、日光を浴びるデメリットの方が多く、一時に大量の紫外線を浴びると日焼けして火傷になる人もたくさんいます。また、少量の紫外線でも長年浴び続ければ光老化が起こります。日焼け予防はしっかりして下さい。
皮膚がんになりやすい人とは
実は、紫外線を浴びると肌が赤くなりやすい人は、赤くならず黒くなる人に比べて皮膚がんになりやすい傾向にあります。紫外線に対する皮膚の反応はメラニンの量で変わるのですが、皮膚のタイプは6つに分かれています。
- タイプ1 常に赤くなり、決して濃くならない
- タイプ2 常に赤くなり、その後少し色が濃くなる
- タイプ3 時々赤くなり、必ず色が濃くなる
- タイプ4 決して赤くならず、必ず濃くなる
- タイプ5 皮膚の色がとても濃い
- タイプ6 黒人など
日本人はタイプ2〜4の人が多く、タイプ2の人はシミやシワ、皮膚がんに注意が必要です。
できてしまったシミやシワ、美容皮膚科でどこまで治せる?
日焼け止めを塗ることは紫外線対策の基本ですが、それでも全ての紫外線を防ぐことはできません。できてしまったシミは、光治療やレーザー治療で治すことができます。ただ、シミにもいろんな種類があり、日焼けによる炎症の色素沈着なら、特に何もしなくても時間が経てば治ります。単に炎症が起きた後に色素沈着することもありますが、これも数ヶ月もすると良くなります。それでも消えないシミの場合、光治療やレーザー治療で消すといいでしょう。
光治療(IPL)、いわゆるフォトフェイシャルは、近畿大学病院皮膚科の美容外来でもっとも人気のある光治療の一つです。
顔全体に何色もの色が集まった特定の波長の光を当てて、シミや赤みを抑えます。ダウンタイムはほとんど必要ありません。黒いものに反応するので若干痛みが出ることがありますが、それほど痛くないので安心して下さい。1回照射しただけではきれいになりませんが、何回か繰り返してやるとシミなどが取れてきれいになります。通常、月に1回のペースでしてもらい、それを4、5回繰り返すのですが、だいぶきれいになります。
フォトフェイシャルは肌の表面にダメージを与えることなく、肌の奥深くにあるコラーゲンやエラスチンの生成を促すため、肌を引き締め、たるみやシワを目立たなくするアンチエイジングにも有効です。ダウンタイムの間は日光に当たらないようにします。施術の翌日から化粧できますが、赤みが出たらやめて下さい。
テープなどで麻酔をしてシミの部分にレーザーを照射して消すレーザー治療もあります。一度で取れることもありますが、数回かかることもあります。一度照射したらしばらくダウンタイムが必要です。レーザーの種類にもよりますが、2、3日、長ければ1週間ほど顔に赤みが出ます。テープを貼って、その部分に化粧するのを避けてもらいます。
レーザー治療にはトーニングという方法もあって、まだらではなく、安全に全体にシミを薄くすることができます。ご自身の肌の状態に合った方法を選んで下さい。
どのレーザー治療も治療を受けるタイミングは秋〜冬にかけてがベストです。施術後に紫外線を浴びると良くないので、可能であれば秋以降にして下さい。紫外線のダメージを受けると悪化してしまう可能性もあります。
シワにはボトックスや注射やヒアルロン酸注射
シワを和らげるレーザー治療もあります。浅いシワには効きますが、深いシワにはあまり効果が期待できません。ボトックスやヒアルロン酸を入れると、気にならない程度には改善できます。ただ、ヒアルロン酸を入れすぎると歳の割にテカテカの人工的な顔になるので、やり過ぎないようにして下さい。
シミシワ対策にはイオントフォレーシスでビタミンCを肌の中に入れてもいいでしょう。これは夏に施術しても大丈夫です。
美白成分入り化粧品もありますが、皮膚科では勧めづらいのが現状です。全体が白くなるのではなく、まだらに抜けてしまって白斑になった過去の事件があるからです。化粧品の成分が肌の奥深くに届くことはないので、できてしまったシミは美容皮膚科で取るのがおすすめです。
肌の自然な老化は誰しも避けることはできませんが、紫外線から肌を守り、バランスの取れた食事や運動を生活習慣に取り入れ、バリア機能を維持するためのスキンケアをすることでみずみずしい肌を保つことは可能です。皮膚病予防の観点からも、紫外線予防をしっかりして下さい。
【お話】
大塚篤司先生
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授
信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て、2021年4月、近畿大学医学部皮膚科学主任教授。診療・研究・教育に取り組んでいる。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー皮膚疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとしてネットニュースやSNSでの医療情報発信につとめている。X(旧Twitter)アカウントは、@otsukaman 著書に『 世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)など。
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