酔って寝ていたら、上司が覆いかぶさってきて…。「信頼していた人に襲われた」事実が私に残した大きな傷は(後編)
心療内科に通いながら子育て中
部署内では、藤原さんと悦子さんが2人で帰ったこと、少し怪しい雰囲気だったことが密かに噂になっていたそうです。
「仲の良い同期女性は『送ってもらっただけかもしれないし、飲んでいるときから藤原さんが肩を触ったりセクハラっぽかった』と庇ってくれたんですが、『だとしても悦子さんも脇が甘い』と言われたそうです。彼女は親身になってくれていたので、後日つい泣きながら本当の気持ちを吐露してしまったのですが…。『コンプライアンス窓口に相談すれば何かしら対応はできるかもしれないけど…ただ、今までの言動やメール内容から、ただの不倫だって糾弾されるかも』と言われてしまいました。その通りだと思いました」
結局悦子さんは、藤原さんのハラスメントについては触れず、体調不良を理由に異動願いを提出して別の部署に移動したそうです。
「1年後に夫が海外赴任から帰ってきた頃には、私は心療内科に通いながら時短勤務をしていました。夫は、ワンオペ育児のせいだと思ったのか、積極的に子育てに関わってくれるようになりました。一人暮らしをしたこともあり、少し家事ができるようになっていて、数年後には第二子も生まれました。今は幸せなはずなんです…。時々夫への罪悪感やフラッシュバックがあり、向精神薬が手放せません」
悦子さんいわく、「力で押さえつけられて性被害を受けた女性」が、屈辱から「自分の意思で遊んだ」フリをすることは、自分以外のケースでもあるのではないかと考えているそうです。
「もちろん、ケースバイケースではありますが…。抵抗して、不可抗力で痛い経験をした私の頭は『怖い』という思いでいっぱいでした。でも、自分の無防備さにも嫌気が刺していたので、『ワンナイトなんてものともしないツワモノ』のフリをしたかったんだと思います」
勇さんに今回の件を話すことも、藤原さんを訴えることも考えたことはあるそうですが、「これ以上精神的に不安定にならないこと、子供に迷惑をかけないこと」を第一にすることにしたと話す悦子さん。
「今は、子供への性教育の大切さを痛感しています。娘と息子には
『男性は、やめてと言われたらすぐ引く。自分が訴えられないためにも』
『女性は気を許した相手にも警戒心を忘れず』
この2つを覚えておいてほしいなぁと。理想を言えば、性別に関係なく
『常に相手の気持ちを考えて思いやりを持って生きなさい』
という基本だけ伝えて、あとは本人たちに任せたいです。もし未来に、海外ドラマのように“手から電流が出る”とか、腕力差が意味をなさなくなる時代が来るなら話は別かもしれません。でも、現状では物理的な力の差がある以上、親として性別ごとにトラブルへの対処法を教える必要があると感じてしまいます」
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