父から学んだ「末期のがん患者にかけるべき言葉」とは?「大丈夫?」「痛くない?」「眠れてる?」「食欲は?」心配の声かけだけでは逆効果

「緩和ケア」で心の痛みが和らいだ父

実は訪問診療の病院については、介護申請を行う前からいくつか検討していました。その結果、自宅から車で5分ほどと近く、周囲の評判も良い「がん看護専門看護師」(※2)がいる第一希望の「緩和ケア内科」で診てもらうことになったのです。

(※2)看護系の大学院を修了し、専門看護師認定審査に合格することで取得できる日本看護協会の資格を持つ看護師。看護師として5年以上の実務研修(うち3年以上は専門看護分野の実務研修)が必要。

 

当日、父は少し緊張している様子でしたが、訪れた医師と看護師に会うとすぐ、落ち着いたように見えました。それは私と母も同様で、優しく柔らかい声や表情、動作などに、ほんの一瞬で安心感を得ることができたのです。

 

バイタルチェックなどを終えると、医師から部屋に飾ってある写真や賞状(父の趣味関連のもの)についての問いかけがありました。すると、父が本当に久々に笑顔を見せ、自分がこれまでやってきたスポーツやサークル活動などについて、楽しそうに話しはじめたのです。その姿を見て、私はあることに気付きます。この頃、私や母が父に投げかけた言葉といえば、「大丈夫?」「痛くない?」「眠れてる?」「食欲は?」など、すべて体調を案じる内容。家族としてはそれを知る必要があるので当然ですが、父としては、ちょっとウンザリしていたのかもしれません。

 

しかし、私や母が急に父に趣味の話をしても、「今さら何で」と思うハズ。だからこそ、こういった医師や看護師の存在と、緩和ケア(がんの症状のほか、身体的な痛みや精神的な苦痛を和らげるためのケア)が必要だったと感じています。

 

それから、「今、困っていることや不安なことはありますか?」と聞かれた父は「眠れない」「食べられない」「便が出ない」と悩みを伝えます。その後、これらの症状を改善するための薬(食事の代わりとなるドリンク)の処方とともに、「自分の好きなことをして過ごすススメ」についての話がありました。そのときの「眠れなかったら、無理をしなくていい。その代わり、昼寝をしたり、体をゆっくり休めたりしてほしい」という医師の言葉に、父は安堵の表情を浮かべ、その夜は久しぶりに熟睡したようです。

 

▶1分1秒でも、父との時間が惜しい。私がした決断は

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